変化
「――ところで、奏良先輩。ここ最近、何かしらの変化を感じませんか? 尤も、以前からそうではありましたが、あの日以降はよりいっそう」
時は戻り、中庭のベンチにて。
笹宮くんについてのお話の後、ややあって何処か楽しそうにそう問い掛ける白河さん。何とも漠然とした問いではあるけど、その意図を察するのは難しくなく。と言うのも……僕自身、あの日以降ある変化を感じていたから。
「……まあ、何というか……いっそう、視線を強く感じるようになったかなと。……それも、そういう類の視線を」
そう、躊躇いつつ答える。……うん、自分で言ってて恥ずかしい。だけど、恐らくは思い上がりというわけでもなく――
「――ふふっ、ご明察です。既にモテモテではありましたが、あの一幕を経ていっそう大変なことになっています。あの体育祭での一幕を経て。ふふっ、今や時の人ですね、先輩」
「……いや、流石にそれは言い過ぎかと」
すると、引き続き何とも楽しそうに微笑み告げる白河さん。……いや、流石にそれは言い過ぎかと。時の人は流石に……まあ、少なくとも思い上がりではなかったみたいだけども。
……ただ、それはともあれ――
「……ですが、どうしてそのようなことに? 体育祭の一幕と仰いましたが、評価が上がるようなことなど僕は何もしていないのに」
「……うん、普通なら嫌味っぽく聞こえてしまいそうですが、困ったことに本気で言ってるんですよねこの人」
そう尋ねると、言葉の通り少し困ったように話す白河さん。……あれ、何か変なこと言ったかな?
ともあれ、ややあってニコッと微笑む白河さん。そして、可憐な笑顔のままゆっくりと言葉を紡ぐ。
「……ほら、あの時、怪我をした私の下にすぐさま来て寄り添ってくれたでしょう? 実は、その先輩のお姿にぐっと心を惹かれた生徒が数多いまして。どうせお気付きでなかったでしょうけれど、校庭にて二人三脚の練習に懸命に取り組む先輩の姿を見ていた生徒も少なからずいたようですよ? なので、競技を辞退してまで私のために、という理由も相俟って、ここ最近はとりわけ先輩の人気が鰻登りというわけでして」
「……そう、なのですか……?」
そんな彼女のお話に、今度はこちらが困惑を。……いや、さっきまでも困惑だったけど、それはともあれ……いや、流石にそこまでは言い過――
「……ふふっ、もしかすると近い内に体育館の裏などに呼び出されてしまうかもしれませんね。是非とも、セフレになってほしいと」
「身体がお目当て!?」
すると、何とも悪戯っぽい表情でそんなことを言う白河さん。……うん、付き合ってほしい、とかではないんだ。……いや、まあ言われたいわけでもないけども。




