疑問
……ただ、それはそれとして。
「……あの、白河さんの仰ることはご尤もです。……ですが、その……どうして僕に?」
そう、逡巡しつつも尋ねる。繰り返しになるけど、どんな価値観も等しく尊重すべきもの――当然のこと、彼女に対し何ら負の感情なんて抱いていない。
……ただ、疑問なのは――その相手が、どうして僕なのかということで。彼女の望むご友人の候補となる素敵な人は、きっと他にいくらでもいる。なのに、どうして僕なんかに――
「……ふむ、そうですね。貴方が美少年だから、というだけでは駄目でしょうか?」
「…………僕が?」
「……まあ、大方察してはいましたが……やはり、ご自覚がないようですね。貴方は、容姿に関しては類稀なる美形なのですよ? 尤も、その陰鬱な雰囲気ゆえ、周囲からはあまり良いイメージを持たれていないと推測しますが」
「…………」
すると、どこか呆れたようにそんな回答をする白河さん。そして、そんな彼女に僕はただ呆気に取られるのみで。陰鬱な雰囲気、との部分は全く否定しないけど……いや、美形はないよね? だって僕だよ? こう言っては大変申し訳ないけど、是非とも眼下に行くことをお勧め……まあ、それはともあれ――
「……ですが、白河さん。申し訳ありませんが、その申し出は受けかねます」
「……それは、私が好みでないからですか? ですが、自分で言うのもなんですが容姿には自信があるのですけどね。それに、ほら」
そう伝えるも、ニコッと微笑みそう告げる白河さん。制服越しにも大方分かる、形の良い二つの膨らみをぐっと持ち上げながら。……僕だって男、意識しないはずもないのだけど……だけど――
「……いえ、容姿が理由ではなく……ただ、やはりそんな気にはなれないと言いますか……僕は、まだ桜野さんのことが……」
そう、たどたどしく告げる。……もちろん、分かってる。僕に、チャンスなんてないことくらい。もう、諦めなきゃならないことくらい。……それでも、僕はまだ彼女のことが――
「――ええ、そうでしょうね。ですが、だからこそこの申し出に応じるべきではないですか? だって、作る必要があるのでしょう? お友達を」