お昼休み
「午前の部お疲れさまです、奏良先輩。それでは、かんぱーい」
「はい、お疲れさまです白河さん。……かっ、かんぱーい」
「ふふっ、そんなに恥ずかしがらずとも」
それから、数時間後。
コツンと水筒のコップを合わせつつ、お互いに労いの言葉を交わす僕ら。……あっ、中身はもちろんお酒ではなく。まだ競技は終わってないし……そもそも、未成年だし。
さて、今いるのは中庭の隅。つい先ほど午前の部を終え、こうしてベンチにて共に昼食をという流れで。
「それにしても、あれは流石に驚きましたよ。先輩ったら、よもやあのような大胆な……」
「……その、改めて申し訳ありません」
「おや、先ほども言いましたがどうして謝罪などなさるのでしょう? 私としては、何ともドキドキするシチュエーションだったというのに。あの後、どれほど皆さんから羨ましがられたことか」
「……いや、最後のは嘘ですよね?」
「……嘘? いや、流石に気付いていたでしょう? 他ならぬ貴方に向けられていた、数多の生徒からの熱視線を。まあ、それも尤も――卒然、息を呑むような美少年が駆け寄ってきたのですから」
「……まあ、敵意のような視線もありましたけど」
すると、ややあってそう口にする白河さん。どうやら怒っているわけではなさそうなので、そこは安堵なのだけれど……うん、どうかもういじらないでいただけたらと。
ともあれ、何のお話かと言うと――僕のもう一つの出場種目である借り物競走にて、なんとA組のコーナーへ白河さんを借りにいったというお話で。……まあ、敵意のような視線もあったけども。とりわけ、マッシュヘアの美少年から……うん、なんだか申し訳ない。
「……ただ、それにしても未だにあるのですね。あのようなお題が」
「……ええ、僕も驚きました。正直、誰でも困りますよね……」
その後、少し呆れたように微笑み話す白河さん。……うん、それは僕も思った。未だにあるんだね、ああいうお題。
「……まあ、妥当なご判断だったと思いますよ。いくら本当のこととはいえ、あのお題で同じクラスの生徒を連れていくのは抵抗があるでしょうし。貴方のことだからきっと桜野先輩、そして笹宮先輩のご心中を考慮なさったのでしょう?」
「……その、申し訳ありません、白河さん」
「ふふっ、答えになっていませんよ?」
すると、ややあってそう口にする白河さん。彼女の言うように、同じクラスの人を連れていきづらかったのはある。ある、けれど……それでも、白河さんを巻き込んでしまったのはやっぱり申し訳なくて……いや、これは違うか。他ならぬ白河さん本人が謝罪を求めていないわけだし、それよりも――
「……その、ありがとうございます。本当に助かりました」
「いえ、お気になさらず。……ですが、そうですね……どうしてもと言うなら、二人三脚にて練習の成果を示すことで借りを返していただけたらと」
「……白河さん……はい、もちろんです」
そう、感謝を告げる。すると、クスッと微笑み答えてくれる白河さん。そんな彼女を見つめながら、いっそう決意を強く胸にする。




