いよいよ当日です。
「…………ふぅ」
「ふふっ、随分と緊張なさっているようですね、奏良先輩」
「……まあ、ほんの、ほんの少しだけですけどね。白河さんは?」
「いや何ですかその無駄な強がり。ガチガチになっているからといって、別に揶揄ったりなど………………そうですね、私も少しは緊張しています」
「なんか変な間がありましたけど!?」
それから、二週間ほど経て。
校庭の隅の方にて、和やかにそんかやり取りを交わす僕ら。……いや、別に緊張なんてしていませんよ? ただ、平時よりちょっと……いや、だいぶ鼓動が速くなっているだけで。
ともあれ、さっと見渡すと視界には枚挙に暇がないほどの人。校庭にてこれだけの人が集まる日は、きっと一年を通して数えるほどしかない。そして、本日はその一日――そう、いよいよ体育祭の当日で。
「……それにしても、本当に多いですよね。大人の方だけでなく、恐らくは学生の方もちらほら見受けられますし」
「まあ、斎叡は地域のご住民であれば誰でも観覧できるようなので。加えて今日は日曜日、斎叡にご友人にいる方なら応援に来られても不思議ではないかなと」
「……なるほど、それは確かに」
すると、さっと見渡しそう口にする白河さん。僕は去年もいるから分かってるけど、彼女からすれば中々に新鮮なのかも。
さて、今言ったように斎叡の体育祭は地域のご住民であれば誰でも観覧可能とのこと。なので、それほど多くはないものの、去年も一定数の学生らしき方々がいらしていて。ちなみに、ここだけ聞くと僕には全く無縁と思えそうだけれど……なんと、終盤の辺りで僕の知り合いの方々も来てくださって。……ひょっとして、今年も来てくれるかな?
……ところで、それはそれとして――
「……それにしても、今から楽しみです。白河さんがアンカーを務めるお姿、しかと拝見させていただきます」
「まあ、アンカーと言っても女子側の、ですけどね。はい、是非とも私の勇姿をその目に焼き付けていただけたらと」
そう伝えると、クスッと微笑み答える白河さん。彼女は一年生男女混合リレーの最後から二番目――女子側のアンカーを務めていることになっているそうで。……うん、すごいなぁ白河さん。
「ですが、私としては先輩方の二人三脚の方が気になりますけど。折角の私との特訓、無駄にしないでくださいね?」
「……白河さん……はい、もちろんです」
すると、悪戯っぽく微笑み告げる白河さん。そう、あの日以降も彼女は度々僕の練習に付き合ってくれて……うん、本当にありがとう、白河さん。




