体育祭
「――それじゃ、これで説明は終わるけど……何か、質問のあるヤツはいるか?」
「せんせ〜い、パン食い競争のパンはなに〜?」
「いや流石に知らねえけど……まあ、無難にあんパンとか食パンだろうな」
「え〜あたしタマゴサンドが良い!」
「腐るだろ」
それから、数週間経た九月の中頃。
二年B組の教室にて、そんなやり取りを交わす男性教師と女子生徒。そして、それを皮切りに次々と質問が飛びいっそう盛り上がり……うん、なんだか良いなぁ、こういうの。
さて、言わずもがなかもしれないけど――今お話ししていたのは、およそ一ヶ月後に開催される学校における一大イベントたる体育祭に関してで。
「――そう言えば、先輩はどれに出場するおつもりなのですか?」
「……そうですね、可能であればサバゲーに出場しようかなと」
「いやないですよ。見たことあります? サバゲーのある体育祭」
それから、数十分経て。
サンダンカの咲く帰り道を、友人たる黒髪の美少女と和やかに会話を交わし歩いていく。さて、何のお話かと言うと……まあ、言うまでもないよね。そもそも、体育祭って言ってるし。
さて、冗談はさて措き質問にお答えせねば。まだ全てではないものの、先ほどのホームルームにて出場する種目はみんな少なくとも一つは決まっていて。そして、僕が出場するのは――
「……なんと。一応ご確認しますが、そちらは冗談ではないのですよね?」
「……はい。僕自身、未だに信じられなくて……それこそ、明日の朝にでも趣向を凝らしたドッキリパネルが出てきても驚かないくらいで」
「……いや、皆さんそんなに暇ではないかと」
それから、ほどなくして。
そう、たいそう驚いた表情で尋ねる白河さん。まあ、それもご尤も。僕自身、未だに信じられないでいるくらいだし。
「……ちなみにですが、それは桜野先輩からの発案ですよね? よもや、奏良先輩から言い出したはずはないでしょうし」
「おや、分かりませんよ? ひょっとすると僕の方から言い出した可能性も――」
「あるんですか?」
「……いえ、ありません」
その後、そんなやり取りを交わす。心做しか途中から覚えのある流れになったけど、それはともあれ白河さんの言う通りで。桜野さんからの発案にて、なんと彼女と僕がペアで二人三脚に出場することとなって。
「ところで、奏良先輩。それは何とも面白い展開ではありますが、反対なさる方もいたのではないですか?」
すると、言葉の通り楽しそうにそう問い掛ける白河さん。そして、きっと彼女の中では具体的に一人の生徒が浮かんでいて――
「……はい、笹宮くんは強く反対なさっていて」
「ふふっ、そうでしょうね」
そう告げると、果たして予想通りといった答えを返す白河さん。……まあ、そうなるよね。笹宮くんからすれば自分が組みたかっただろうし、そもそも実際にそう告げていたし。
だけど、桜野さんは断った。二人三脚は、なるべく背丈が近い方が良いからと。……なるほど、理屈は理解できる。男子の中でも背の高い笹宮くんは、恐らく女子の中で平均くらいの背の桜野さんとはそれなりに大きな差が出てしまう。なので、理屈としては理解できるのだけど、やはり申し訳なくはあって――
「……まあ、それでも選ばれたのは貴方です。ぐっと距離を縮められるまたとないこの機会、活かさない手はありません。頑張ってくださいね、先輩」
「……そう、ですね。はい、ありがとうございます白河さん」
すると、ぐっと拳を握りつつ笑顔で励ましてくれる白河さん。……うん、申し訳ないとか言ってる場合じゃないか。彼女の期待に応えるためにも、これを機に少しでも仲良くならなくちゃ。




