お友達
「…………」
そう、不敵に微笑み告げる白河さん。その言葉から察するに、どうやらさっきの屋上での件を見られていたようで。まるで姿を見ていないことから鑑みるに、きっと僕より先にいたのだろう。……それにしても、気配どころか視線すら全く感じなかったけど……まあ、かなり緊張してたしね。
ともあれ、今の彼女の言葉は数十分前、屋上にて告げられた桜野さんの返事に関してで。
『……お友達から、ねえ。一応聞いとくけど、三崎って友達いるの?』
『……へっ? あっ、いえ……』
『だよね。少なくとも、学校では誰とつるんでるとこも見たことないし。さて、そんなぼっちのあんたが最初の友達にあたしを選んだってことよね? つまりは、あたしなら簡単に友達になれると……ふっ、随分と軽く見られたもんじゃない』
『……あっ、いえ決してそういうことではなく! ……その、ただ僕は……』
そう、こっちをジトッと見て告げる桜野さん。……いや、決してそういうつもりでは……いや、でもそう思われるのも当然か。実際、僕は友達がいないのだし。
「…………はぁ」
すると、何処か呆れたように溜め息をつく桜野さん。そして、再びゆっくりと口を開き――
『……でも、そうね。それでもこうして言いに来た勇気に免じてチャンスをあげる。そうね……今から一週間以内に、一人で良いから友達を作ってくること。そして、あたしに紹介しにくること。それが出来たら、ひとまず知り合いから始めてあげるわ』
「そういうわけで、貴方は友達が必要――そして、私は貴方と性的な関係を持ちたい。なので、この申し出は双方に有益――即ち、ウィンウィンというわけです。それとも、セフレはお友達に含まれませんか?」
「……いえ、そういうわけでは……ただ、いくら桜野さんと知り合いになるためとは言え、流石に方法が方法かと……」
「……いや、もう知り合いではありますよね? ひょっとして、意外と天然さんですか?」
そう、楽しそうに微笑み尋ねる白河さん。そんな彼女にたどたどしく答えると、些か呆れたような表情へと変わり……うん、ご尤も。でも、いざあのように言われてしまうと、ひょっとしてまだ知り合いですらなかったのかなと――
「――まあ、それはともあれ……本当に、それで良いのですか?」
「…………へっ?」
「そもそも、今まで貴方はご友人がいなかったのでしょう? そして、恐らくは自分には無理だと諦めていることでしょう。となると、あの人の『お知り合い』にすらなれませんが……彼女に対する貴方の想いは、その程度のものだったのですか?」
「……ですが、それは貴女を……」
「――私を傷つけないため、とでも言いたいのですか? だとしたら、聞き苦しいことこの上ありませんね。そもそも、私の方から申し出ているのに、私を理由にお断りするのはどう考えても筋が通っていないかと。ご自身の臆病さの言い訳を、私に求めるのは控えていただけたらと」
「…………」
そう、僕をじっと見つめ告げる白河さん。きっと、彼女の言葉は正論。だから、こんな気持ちになる権利はないのだろうけど……それでも、多少の苛立ちを自覚しないわけにはいかなくて。なので――
「――それでは、白河さん。僕の目的のため、遠慮なく『利用』させていただきますが……本当に、それで宜しいですか?」
「ええ、もちろんです。それでは、今後とも宜しくお願いしますね、三崎先輩?」
そう尋ねると、ニコッと満足そうに微笑み答える白河さん。……うん、すっかり掌で転がされた気がしないでもないけど……まあ、所詮は僕だしね。
ともあれ――こうして、初対面の二人による何とも奇妙な関係がここに結ばれたわけで……うん、どうしてこうなった?




