名誉毀損?
(……ふふっ、随分と大胆ですね。まさか、このような密室の空間に連れ込むとは。ひょっとして、夜まで待ちきれず今すぐにでもこれを着けた姿を見たいと――)
(……あの、白河さん。急に連れ込んだことは申し訳ありません。ですが……その、ご冗談を交わしている余裕はなくてですね……)
それから、ほどなくして。
そう、揶揄うように話す白河さん。こんな状況にしてしまって申し訳ないし、声を潜めてくれているのはありがたいけど……でも、流石に冗談を交わしている余裕がなくて。
ともあれ、こんな状況とは――本来、一人でしか入らないであろう試着室に二人で潜んでいるという何とも奇妙な状況で。そして、その理由は――
「――ねぇ、これチョー可愛いんだけど!」
「だよね、あたしも思った!」
そう、カーテン越しに届く声。そして、僕でさえ覚えのある二つの黄色い声。岩倉さんと藤崎さん――共に二年B組のクラスメイト……そして、桜野さんのグループに属する女子生徒達で。
(……なるほど、そういう事情ですか。それは何とも面し――いえ、些か窮地の展開ですね)
(あれ、今面白いとか言いかけました?)
その後、ほどなくして。
そっと息を潜めつつ、ひっそりとそんなやり取りを交わす僕ら。言わずもがなもしれないけど、咄嗟に彼女を試着室に連れてきてしまった理由をお話ししていたわけで。……いや、そもそも今は何も話さない方が良いのだろうけど……まあ、僕の勝手で巻き込んでおいて何の説明もしないというのは流石に気が引けて。……ただ、それにしても楽しそうですね、白河さん。
……ともあれ、大変申し訳ないけどこうなっては付き合っていただくしかない。こうなってはも何も完全に僕の責任なんだけども、こうなってはこの状況に付き合っていただくしかない。どうにか、この窮地を切り抜けるまで二人でここに――
「――ところでさ、最近気付いたんだけど……結構イケメンじゃない? 三崎って」
「…………へっ?」
すると、不意に届いたのは全く以て思いも寄らない言葉。……しまった、うっかり声が……でも、それくらいに衝撃で。……えっと、イケメン? 僕が? いや、そもそもここでよもや僕の名前が出てくるとは――
「あ〜それあたしも思ってた! でも、カッコいいよりも可愛い系?」
「あ〜マジ分かる!」
(――ふふっ、たいそうおモテになりますね、先輩?)
(……いえ、そんなモテてなど……)
すると、声を忍ばせ何とも楽しそうにそう口にする白河さん。いや、モテてなどはいないけども……うん、それでも僕などには勿体ないご評価に甚だ――
「――でもさ、絶対童貞だよね! 三崎って」
「――っ!?」
そんな恐縮の最中、不意に届いた衝撃の言葉に呼吸が止まる。……いや、良いんだけども。何と言われても別に良いんだけども……でも、なんで急にそんな――
「――あ〜だよね、草食系ってやつ? なんか、ちょっと前に流行ってたやつ」
「そう、それそれ! それでさ、三崎とヤッてみたくない? ほら、あの可愛い顔でイッてるとことかチョー見たいし!」
「あ〜なんか分かる。あと、ビンビンに反応してるとこも見たいかも。どこがとは言わないけど」
「あははっ、どこがとは言わないけどね!」
(……ふふっ、童貞だそうですよ? 奏良先輩。今から出ていって名誉毀損だと訴えます? もちろん、私も証言しますよ? 私が、どれほど先輩に満足させてもらっているのか)
(……うん、お願いなので止めてください)
すると、何とも楽しそうにそんなことを言う後輩の美少女。……いや、お願いなので止めてください。ほんとにやりかねないし、この子。
ともあれ、その後も僕に関する話は続き……うん、そろそろ勘弁していただけたらと。そもそも、僕なんかのことでそんなに話すことなんて――
「――随分と楽しそうね、二人とも」
「…………へっ?」




