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話したいこと

「……あの、桜野さくらのさん。それは、いったい……」

「……あっ、その……別に、一目惚れとかじゃないけどね」

「あっ、はいそれはもちろんです! ……その、僕なんかに一目惚れなさるようなら是非とも眼科に赴くことをお勧めします!」

「……いや、だったら大繁盛だと思うけど、眼科」



 思いも寄らない桜野さんのお言葉に、ただただ茫然とする僕。いや、一目惚れじゃなのは分かってる。そんなわけないのは分かってるけど……それでも、僕とお話ししたいと思ってくれていたことだけで天地がひっくり返るほどの衝撃で。……でも、いったいどうして? どうして僕なんかと――


「……今から、一年前……」

「……へっ?」

「……去年の、文化祭の時だけど……あんた、絡まれてなかった? なんか、ガラの悪そうな二人組の男に」

「……ああ、そう言えば」



 一人困惑していると、ふとそう尋ねる桜野さん。……うん、あった。中庭を歩いてたら、二人の男性にチョロチョロ目障りだとか言われて……でも、僕としては普通に歩いてたと思うんだけど……まあ、それはともあれあの後は結局――


「……幸い、不穏そうな空気に気付いた人が駆け寄っていって、それからもすぐに人が集まったから事なきを得たみたいだけど……ったく、ほんとロクでもない連中よね。なんであんなのが入ってきてんだか」


 そう、怒ったようなうんざりしたような口調で話す桜野さん。そして、それはきっと僕のための怒りで。それは、入学からほどないあの日――笹宮ささみやくんのことを悪く言っていた生徒達に毅然として怒りを示していた、あの踊り場での時のように……うん、ほんと優しいなぁ、桜野さん。そして、きっと僕はそんな彼女のことを――



「――それでさ、あんた……何故か、絡んできた奴らを庇ってたじゃん。この人達も、悪気があったわけじゃない。きっと僕が不快な気持ちにさせてしまったから、怒るなら僕に――みたいなことを、必死で頭を下げて言ってて。……正直、信じられなかった。と言うか、明け透けに言えば呆れた。なんで、どう見ても理不尽に絡まれてたあんたが庇うわけ? って」

「……桜野さん」


 そんな感慨の最中なか、お言葉の通り呆れたように告げる桜野さん。……まあ、そうだよね。でも、折角来てくれたんだし、良い思い出になるような素敵な時間を過ごしてほしいなと――


「……ほんと、意味分かんなかった。でもね……その日から、気になっちゃってた。でも、あんたはあたしのことなんて知らないと思ってたから話し掛けるのも流石に躊躇っちゃって。

 でも、今年……二年になって、あんたと同じクラスになれた。……嬉しかったし、チャンスだと思った。……でも、なかなか話し掛けらんなくて。他の皆とは普通に話せるのに……どうしてか、あんたには話し掛けられなくて。……だから、あの時はほんとびっくりした。まさか、あんたの方から告白してくるなんて思わなかったから。……なのに、なんで言っちゃったんだろうね、あんな馬鹿なこと。あの時の自分を蹴り飛ばしてやりたいくらい」

「……桜野、さん」


 すると、淡く微笑みそう口にする桜野さん。そんな彼女の言葉に、再び茫然とする僕。……うん、僕もびっくりだよ。まさか、桜野さんが僕と同じようなことを思ってくれていたなんて。こんなことなら、もっと早くに話し掛けていれば……なんて、僕にはどうせ無理だっただろうし……それに――



「……明後日」

「……へっ?」


 すると、ポツリと呟く桜野さん。そして、真っすぐに僕の目を見つめて言った。



「……休み明けの明後日、放課後にまたここに来て。話したいことがあるから」






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