再びの?
「……あの、すみません桜野さん」
「……いや、なんで謝ってんの?」
「……えっと、それは……」
それから、ほどなくして。
再び歩みを進めつつ、何ともたどたどしく謝罪を述べる僕。すると、どこか呆れたような微笑で尋ねる桜野さん。……まあ、そうなるよね。何の説明もなく、急に謝られたりなんてしたら。……ただ、それでも――
「――あっ、ここなんか良いんじゃない?」
「……へっ? あ、えっと……」
「ん、嫌だった? あっ、それとも怖いわけ?」
「……ああいえ、嫌と言いますか……」
すると、ふと立ち止まりそう口にする桜野さん。そして、そんな彼女にまたもやたどたどしくなる僕。……うん、なんだか覚えがあるね、このやり取り。
さて、桜野さんが示したのはお化け屋敷の会場――言わずもがなかもしれないけど、先ほど会った大切な友達たる白河さんの在する一年A組の教室で……うん、また来ちゃった。
「――次の方、どう……あっ、今日も来てくれたんですね三崎先輩!」
「あっ、はい……その、すみません」
「いやなんで謝るんですか。こっちは大歓迎なのに。ところで、そちらは桜野先輩ですよね?」
「……知ってんの? あたしのこと」
「はい、もちろんです。すっごく綺麗な先輩だと、一年生の間でも有名なので」
それから、10分ほど経て。
受け付けにて、朗らかな笑顔でそう告げてくれる女子生徒。昨日もこんな笑顔で迎えてくれて、ほっと心が温まる思いで……まあ、だからこそいっそう屋敷での怖さが引き立った部分もあるけども。
……ただ、それはともあれ……うん、やっぱりすごいなぁ、桜野さん。同学年のみならず、違う学年の間でもこんなにも評判で……でも、桜野さんほどの御方なら当然とも言え――
「…………ん?」
そんな感慨の最中、どうしてか何とも愉しそうな笑顔で僕を見つめる受け付けの女子生徒。……あれ、なんだかそこはかとなく嫌な予感が――
「――いやぁ、やっぱりモテモテですよね三崎先輩。ほら、昨日もすっごく可愛い子と一緒に来てたじゃないですか。それで、今日は桜野先輩……ふふっ、白河さんがますます怒っちゃいそう」
「……あ、いえ、その、モテてるわけでは……」
そんな予感の最中、愉しそうな笑顔のままそう口にする女子生徒。……うん、昨日も来てたね。すっごく可愛い子と。でも、別にモテてるわけでは……まあ、それはそうと――
「……すっごい可愛い子、ねぇ。ほんと、随分とモテモテなんだね、三崎?」
すると、隣からポツリと届く声。……いえ、決してモテてるわけでは……ただ、それはともあれ……うん、怖いね。こう、表情を見るのが。