お誘い?
「……その、おはようございます桜野さん」
それから、数日経た朝のこと。
登校後、昇降口にていつもの如くそんな挨拶を述べる僕。そして、いつもの通り彼女から返答が……あれ、来ない?
「……あの、桜野さん……?」
そう、おずおずと問い掛けてみる。だけど、彼女はこちらを口を閉じたままこちらをじっと……えっと、どうしたのだろ……あっ、ひょっとして、もう挨拶もしたくないほど嫌われて――
「……ねえ、三崎。急で悪いけど、昼休み屋上に来てくんない? ちょっと、話があるから」
「……おや、それはそれは。ほぼ挨拶のみの関係から一転、デートのお誘いとは。これは何とも急接近の予感です」
「……い、いえそういうわけでは……その、僕なんかがデートなど頗る烏滸がましいというもので」
「……いや、デートに烏滸がましいとかあります?」
その日の放課後にて。
プルメリアが美しく開いた住宅街を、そんな応酬を交わし歩いていく僕ら。……いや、烏滸がましいとか本来はないのだろうけど……まあ、そこは僕なので。
さて、何のお話かと言うと、お昼休みにて屋上で桜野さんから告げられた内容――かいつまんで話すと、次の休日に会えないかという内容に関してで。……うん、ほんとびっくりです。一瞬、偽者かと疑ってしまったくらいで……いや、偽者でも意味が分からないけど。
ところで、烏滸がましいどうこうはさて措くにしても――きっと、客観的に見たとてデートとは認識しづらいのかなと思う。と言うのも――
「……なるほど、笹宮先輩と三人で。確かに、そうなるとデートとは定義しづらいですね。四人であれば、ダブルデートのように解釈できたかもしれませんが」
その後、ほどなくして。
詳細を加えた僕の説明に、そっと頤に指を添えつつ真剣な表情でそう口にする白河さん。尤も、三人でデートという場合もなくはないのだろうけど……まあ、パッとイメージはしづらいよね。
さて、今彼女が言ったように、笹宮くんも含めた三人で会うことになっていて。きっかけは、笹宮くんが桜野さんをお誘いしたことみたいで。二人で何処か遊びにいきたいと……うん、すごいなぁ笹宮くん。僕だったらまず言えないや。
ともあれ、話を戻すと――もちろんお二人はご友人だし、一緒に遊びにいったことも何度もあるとのこと。だけど、それは他のご友人も含めた大勢でのこと――二人でとなると、桜野さんの方では些か事情が変わってくるようで。嫌ではないものの、些かながらも躊躇いが生じるようで……なので、この度僕に一緒に来てほしいとのご申し出を受けたわけで。
……うん、もちろん嬉しい。それはもう、今すぐ跳び上がりたいくらいに。ただ……どうして、僕だったのだろう? 彼女には親しいご友人が沢山いるし、どうして僕を選んでくださって……いや、僕が気にすることでもないか。きっと、何からの事情があったのだろう。例えば、他のご友人は皆さん既に予定が入っていたとか。ともあれ、僕に出来ることは、少しでもお二人の邪魔にならないよう――
「……あれ、どうしてでしょう。心做しか、随分と明後日の方向に決意を固めている気が……」
そんな意気込みの最中、ふとすぐ隣から届いた声。見ると、何処か困惑した表情の白河さんが。……あれ、どうかしたのかな?




