避けてる?
「……ねえ、三崎。ずっと聞きたかったんだけど……あれ以来、避けてるよね? あたしのこと」
「……へっ? あっ、いえその……」
「……ああ、別に怒ってるわけじゃないから。むしろ申し訳ないって思ってた。ずっと気を遣ってくれてたんでしょ? 奨斗に」
「……あ、いえお気になさらず! その、僕が勝手に気にしていただけなので」
それから、ほどなくして。
笑顔に溢れる賑やかな廊下を歩きつつ、少し躊躇う様子でそう問い掛ける桜野さん。……うん、やっぱり気づいてたんだ。……まあ、そりゃそうだよね。そこまで露骨ではなかったと思うけど、以前と明らかに違うことは自分でも分かってたし。
さて、もはや説明不要かもしれないけど……桜野さんの言うように、あれ以来――修学旅行での笹宮くんの告白の件以来、僕は心持ち彼女を避けていた。尤も、彼女を嫌いになった、なんてそんなあり得ない事情ではもちろんなく……ただ、笹宮くんに申し訳ないなと思ったから。……まあ、こんなことを思うことこそが、彼に対し本当に申し訳ないことなのだろうけども。
「……ごめん、ちょっと暗い雰囲気にしちゃったね。でも……出来れば、これからは気楽に接して。以前みたいに」
「……桜野さん……はい、もちろんです。今まで本当にすみませんでした」
「……いや、だからいいって。それより、今日は久しぶりに一緒に楽しも?」
「……はい、桜野さん」
すると、仄かに微笑みそう口にする桜野さん。そんな彼女に、頭を下げ謝意を告げる。まあ、以前も気楽ではなかったんだけど……ともあれ、やっぱり良くなかったよね、避けたりするのは。
……だけど、すぐに以前みたいに戻れるかは正直のところ分からない。それでも……うん、桜野さんの言う通り、まずは今日を一緒に楽しもう。