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キャンプファイヤー

「――今日はありがとうございます、奏良そうら先輩。本当に楽しかったです。まあ、まだ終わってはいませんが」

「いえ、こちらこそありがとうございます白河しらかわさん。まだ終わってはいませんが、本当に心に残る楽しい一日でした」

「まあ、そうでしょうね。随分と可愛い女の子と随分と仲睦まじくイチャついていたようですし」

「いや、別にイチャついてはいなかったかと……」



 それから、数時間後。

 茜色の空の下、グラウンドのフェンス周りをゆっくりと歩きつつそんなやり取りを交わす僕ら。……あれ、まだちょっぴり怒ってます? 


 まあ、それはともあれ……あれからもしばらく色々と回った後、僕の休憩時間が終わったため二年B組の教室へと戻り再びメイドさんへ。するとほどなく、お言葉の通り秋奈しゅうなさんと山城やましろさんがご来店し……うん、すっごく恥ずかしかった。例の呪文を唱えた際の、何とも楽しそうな秋奈さんの笑顔と山城さんの暖かな微笑が今でも鮮明に思い出されて。


 だけど、そんな恥ずかしいことも含め今日一日本当に楽しくて。……そして、一番の理由はもちろん――


「ん、どうかしましたか先輩」

「……いえ、何でも」


 すると、キョトンと首を傾げ尋ねる白河さん。……まあ、そうなるよね。無言のまま、じっと見つめてたりなんてしたら。


 ところで、例の呼び方だけれど……まあ、結局は戻すことに。ほら、まあ……どうにも、僕にはまだハードルが高くって。



 ともあれ、本日もほぼ終わりグラウンドの方へと視線を移す。すると、そこには鮮やかに燃える火の周りで手を取り踊るペアの生徒達。少し遠目からなので表情こそ見えないものの、和やかで楽しそうなその雰囲気は十分に伝わって……あっ、先生達もいる。ひょっとして、あのお二人は付き合って……うん、やめよ。無粋な詮索は良くないよね。


「折角ですし、私達も踊りにいきます?」

「……へっ?」


 すると、柔和に微笑みそう問い掛ける白河さん。そんな彼女の提案に、もちろん快諾……と、言いたいところなのだけども――


「……ですが、踊れませんよ? 僕。それはもう、何の謙遜でもなく全く以て」

「……まあ、想像はつきますけどね。あの時のあの有り様を思い起こせば。ですが、ご心配なく。ちゃんと私がリードして差し上げます。ベッドの上でのように」

「うん、最後の一言はいらないよね?」


 我ながら情けない返答をする僕に、悪戯っぽく微笑み告げる白河さん。いや、別に否定するつもりはないけども……でも、こういう公共の場でその手の話を出されると、やっぱり恥ずかしいといいますか……まあ、誰も聞いてないだろうけども。


 ともあれ、彼女の言うあの時とは、公園で僕の二人三脚の練習に付き合ってくれたあの時のことで間違いだろう。……まあ、あれを知っていれば僕が如何に踊れないかなんて容易く想像もつきそうだよね。

 さて、そういうわけで……ここで手を取り一緒に踊ろうものなら、僕はともかく白河さんに恥ずかしい思いをさせてしまうことに――


「――ですが、私のことはお気になさらず。皆さんそれぞれのパートナーに夢中なようですし、どうせ誰も気づきませんよ。それに、そもそも他人様ひとさまに知られたら恥ずかしいような関係じゃないですか、私達」

「……白河さん……ふふっ、それもそうですね」


 すると、悪戯っぽい笑顔のままさっと僕の手を取り告げる白河さん。……ほんと、敵わないなぁ。



 その後、白河さんのリードの下しばし燃え盛る火の近くにて踊る僕ら。だけど、あまりに僕がぎこちないせいか、同じく仲睦まじく踊っている皆さんからの視線がチラホラと……うん、ほんとに申し訳ない。

 





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