表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
115/124

折衷案?

「――ところで、今更ながらどうでした? 奏良そうら先輩」

「……へっ?」

「ほら、私の幽霊姿ですよ。どのような印象を持たれました?」

「……ああ」



 その後、ほどなくして。

 個性豊かな屋台の並ぶ石畳を歩きながら、楽しそうに微笑みそう問い掛ける白河しらかわさん。今はもう、お怒りは収まっているご様子で……ふぅ、良かった。


 さて、問いに答えなければ。……どんな印象、か。我ながら拙い表現だとは思うけれど……それでも、真っ先に浮かんだのは――



「……そう、ですね。趣旨を考慮すると、あまり適切な感想ではないと思いますが……すごく、綺麗でした。尤も、いつも綺麗そうではありますが」

「……そ、そうですか……まあ、怖がらせる立場としては些か不本意な感想ですけども…………ふふっ」


 そう伝えると、さっと顔を逸らし呟くように答える白河さん。趣旨を考慮すれば怖かったと言う方が適切だろうし、ある意味ほんと怖かったけど……それでも、真っ先に浮かんだ印象は綺麗という他なかったから。



「それにしても、本当にびっくりしました。まさか、包丁を持って追いかけてくるなんて。偽物と分かっていてもすごく怖かったです。一応お尋ねしますけど、あれってアドリブですよね?」

「ええ、もちろん。お陰さまで、あの後リーダーの子にすっかり怒られてしまいました。あっ、ちなみにあの包丁は山姥を担当していた子から拝借しました。尤も、仰る通り偽物ですけどね」

「……そ、そうですか」

「ええ。ですが、もし包丁あれが本物だったらついうっかり刺してしまったかもしれませんね。彼女の方を」

「お願いだからそれは止めて!!」



 その後、白河さんはカスタード、僕はこしあんのたい焼きを手に歩みを進めつつ尋ねると、花の咲くような可憐な笑顔で返答こたえが……いやそれは止めて!! 刺すならせめて僕にして!! ……うん、聞かなきゃ良かった。それまでの流れとしては自然な問いかと思ったけど、どうやらお怒りはまだ完全には収まってなかったようでして。



 ともあれ、そんなちょっぴり怖い冗談以外は和やかな話に花を咲かせる僕ら。……うん、冗談だよね?


 ……ところで、それはそれとして――


「……あの、どうかなさいましたか白河さん」

「……いえ、なんにも」



 そう、逡巡しつつ尋ねてみる。すると、目を逸らしつつそう口にする白河さん。だけど、今回は自身の意思で頑なに逸らしているような印象で……えっと、いったいどうし――



(……別に、戻さなくていいのに)

「……ん?」


 すると、ポツリとつぶやく白河さん。全ては聴き取れなかったけど……でも、戻さなくていい、とは聴こえた気が……でも、いったい何の――


「……あっ」


 ふと、声が洩れる。すると、それに反応してか逸らしていた目を再び僕へと注ぐ白河さん。……うん、きっとあれだよね。冬雪ふゆお嬢さまという、当然ながら初めて口にしたあの呼び方のことで。


 でも……うん、恥ずかしい。あの時は、メイドさんになりきっていたのでどうにか出来たけど……でも、今はほんと難しい。さて、どうしたものか――


 ……うん、片方だけでも良いかな? それなら、なんとか言えないこともない。そういうわけで、深く呼吸を整える。そして――



「……ところでお嬢さま、次は――」

「いらない方を戻してくるな!!」





評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ