いよいよ本番です。
「――さあ、いよいよ本番。今日は存分に楽しんで、みんなで最高の思い出にしようね!」
それから、数週間経て。
二年B組の教室――そのほぼ真ん中にて、パンと手を叩き満面の笑顔で告げるボブカットの女子生徒、中山さん。そして、そんな彼女にそれぞれ明るく応じるクラスの皆。……うん、やっぱり良いなぁ、こういう雰囲気。
さて、本日は文化祭当日――ここ数週間、皆で頑張ってきた成果を発揮するその時がとうとうやってきたわけで。
「……うぅ、とても緊張してきました。これは、あれですね。やはり、人という文字を手に――」
「いや物理的に書こうとすんな。しかも、よりにもよってそんな落ちにくそうなモンで」
すると、さっと僕の手を取り呆れたように告げる笹宮くん。ちなみに、僕の手には黒のマジックペンが……うん、確かに。これはなかなか落ちないよね。
「……まあ、緊張すんのも分かるけどよ。でも、気楽にやろうぜ。別に、失敗しても誰も責めないんだし」
「……笹宮くん……はい、ありがとうございます」
すると、そう口にする笹宮くん。体育祭――二人三脚を控え、緊張していた僕に声を掛けてくれた時のような明るい笑顔で。……うん、ありがとう笹宮くん。