職人芸?
「…………すごいですね、先輩。もはや、職人芸かと」
「…………へっ? あっ、いえそんな職人芸だなんてとんでも……ですが、ありがとうございます、白河さん」
それから、しばらくして。
ふと、鼓膜を揺らす柔らかな声。ハッと顔を上げ声を方向――すぐ右を見ると、呆気に取られた表情の白河さんが。どうやら、僕の作ったこの作品に対して言ってくれているようで……その、ありがとうございます。
さて、何をしていたのかと言うと――古くからここ沖縄に伝わる伝統工芸品、琉球ガラスの製作体験をさせてもらっていたわけで。……しまった、楽しすぎてつい。
「……その、申し訳ありません、白河さん。つい、没頭してしまったみたいで」
「ふふっ、何度謝るんですか。そもそも、私は楽しかったですよ。集中している先輩のお姿、とても素敵でしたし」
「……あ、ありがとうございます」
その後、少し遅めの昼食を取るべく移動をしつつそんな会話を交わす。……うん、本当に申し訳ない。
「……ところで、改めてですがほんとに頂いて良いんですか? スタッフの方も仰っていましたが、ものすごい出来ですよ、これ。素人の私が見ても逸品だと分かるくらいに」
「……あ、ありがとうございます白河さん」
すると、そう問い掛ける白河さん。そんな彼女の手には、独特な色合いのグラス――先ほど、僕が作った琉球ガラスがあって。……ものすごい出来だなんて、過分にして勿体ないお言葉だけど……うん、ありがとう白河さん。そして――
「ええ、もちろんです。と言うより、願わくば白河さんにもらっていただけたら嬉しいなと」
「……先輩……ふふっ、それでは遠慮なく」
そう、微笑み告げる。すると、柔らかく微笑み謝意を告げてくれる白河さん。この様子だと、少なくとも迷惑とは思われていないようで……ふぅ、良かった。