やっぱり気になる?
「……綺麗、ですね」
「……ええ、本当に。久しぶりに訪れましたが、やっぱり魅入ってしまいます」
「あっ、先輩は来たことがあるんですか?」
「いえ、今日が初めてです」
「じゃあなんだったんですかさっきの戯言」
それから、一時間ほど経て。
目の前の光景に息を呑みつつ、ほのぼのとそんなやり取りを交わす白河さんと僕。今いるのは、テーマパークの中に在する鍾乳洞。悠久の歳月を経て形成され、なんと全長は5キロメートルにもなるという。そして、ひときわ目を惹くのが……洞窟内の至るところに見える、幻想かと思うほどに美しい青の光景で。
……ところで、それはそうと――
「――気になりますか? お二人のこと」
「……へっ? はい、まあ……」
すると、そう問い掛ける白河さん。お二人とは、言わずもがな江川くんと弓島さんのお二人のことで。……うん、気にならないと言えば嘘に……と言うか、すごく気になる。そもそも、今日の僕の役割からしてもどうしても気になってしまうわけで。
さて、そのお二人はと言うと、今は僕らと少し離れたところで仲が良さそうにお話ししているご様子で……うん、良かった。まあ、そもそもあのお二人なら助力なんてなくてもいつか自然と結ばれる気が――
「……それにしても、少し意外でした」
「……へっ?」
「先輩が、今回のお願いを承諾したことです。弓島さんの想いが叶うよう、お手伝いしたい――そこには、何ら疑問はありません。彼女とそれほど親しいとは思いませんが……それでも、先輩はそういう人なので。
ですが、先輩のことなので同時に江川くんのお気持ちも考慮したはず。彼に対する弓島さんのアプローチをお手伝いする、ということであれば何ら疑問はありませんが……ですが、今回のお願いは、私に対する江川くんの想いを諦めさせること。ならば、弓島さんのお気持ちを考慮したとて、本来であれば先輩は承諾できなかったのではないかと」
「……白河さん」
「あっ、言っておきますが反対しているわけじゃないですよ? 少し申し訳ないとは思いますが、私としても江川くんには私のことを諦めていただける方がいいと思っていますし。……ただ、少し疑問に思っただけで……」
すると、僕をじっと見つめそう口にする白河さん。心做しか、何かを期待しているような瞳で。
……別に、善人ぶるつもりはない。でも、彼女の言うように江川くんのことも考えた。弓島さんの想いが叶うようお手伝いはしたいけど、白河さんに対する江川くんの想いもまた尊いもので。なので、今回のような――良くない言い方をすれば、彼の気持ちを蔑ろにしてしまうような形でのお願いは承諾すべきではなかったのだと思う。……それでも、承諾したのはきっと――