いつも通り普通に?
「――改めてですが、本日は来てくださってありがとうございます、白河さん」
「いえ、お気になさらず。最初は驚きましたが、私も楽しみにしていましたし。まあ、二人でないのは少々……いえ、とても残念ですが」
「……その、すみません」
それから、数日経て。
そう伝えると、柔らかな笑顔で……だけど、最後は言葉の通り残念そうに答える後輩の美少女。……その、ごめんなさい。
さて、今いるのは地元の有名なテーマパーク――そこに白河さんと僕、そして江川くんと弓島さんの四人がいるわけで……うん、やっぱり場違いじゃない? 僕。
『……実は、これなんですけど……もし良ければ、私達と一緒に来てくれませんか? 白河さんと一緒に』
あれは、数日前のこと。
昇降口へ向かう廊下にて、控えめに手を差し出し告げる弓島さん。そんな彼女の手には、地元の有名なテーマパークのチケットが二枚。お言葉の通り、白河さんと僕の分なのだろうけど……えっと、どして?
だけど、お話を聞くとその理由が分かって。と言うのも、ある程度察していたことではあるけれど、弓島さんは江川くんに好意を寄せているとのこと。だけど、これまたある程度察していたことではあるけれど、江川くんは白河さんのことが――
そういうわけで、白河さんと僕の仲を見せつけ江川くんの気持ちを諦めさせてほしい、というのが弓島さんのお願いなわけでして。
……ただ、そうは言っても――
「……ですが、実際のところどのように振る舞えばいいのでしょう。ご存じかと思いますが、生まれてこの方そのようなお付き合いをしたことがないんですよ、僕」
そう、隣を歩く白河さんへと尋ねてみる。改めてだけど、本日の役割は僕らの仲を見せつけ、江川くんに白河さんのことを諦めてもらうこと。……まあ、僕が勝手に引き受けておいて今更ではあるのだけども……でも、こういうお付き合いをしたことのないこの僕に、いわゆる恋人のような演技が出来るとは――
「いえ、それほど深刻に考えることもないかと。そもそも、私達がそういう仲に映っていたから弓島さんは今回のご依頼をしたのでしょう? それなら、いつも通り普通に過ごせば問題はないかと」
「……確かに、それはそうかも」
すると、仄かに微笑み答えを返す白河さん。……確かに、それはそうかも。むしろ、無理に演じようとすれば相当ぎこちなくなるのは火を見るよりも明らかで……うん、やっぱり普通が一番だよね。そう、普通に……普通に――
「……きょ、きょうはとってもいいてんきだね、まいハニー」
「思った以上に下手だったよ!!」