準備開始です。
「……おお、やっぱすげえ似合うなお前。いや、似合うとは思ってたけど、それでもびっくりだわ」
「……うん、ほんと女の子みたい。それも、相当な美少女……」
「あ、ありがとうございますお二人とも……」
それから、数日経て。
そう、各々に称賛の言葉をくださる笹宮くんと桜野さん。そして、お二人だけでなく他のクラスメイトも次々と……その、過分にして勿体なきお言葉、恐悦至極に存じます。
さて、何に対してかと言うと……まあ、以前お話しした例の件――僕も担当することになり、目下二年B組の教室にてお披露目しているメイド姿に対してでして。
「――ほら、やっぱ言ったじゃん! 三崎くんは絶対に似合うって! ほんとにめっちゃ可愛いから自信持ってね、三崎くん!」
「……あ、ありがとうございます中山さん……」
その後、ほどなくパッと顔を輝かせ告げるボブカットの少女。彼女は中山さん――この度、僕がメイドさんになることを提案した女子生徒で。……うん、お気に召していただけたようで何よりです。
「それじゃ、三崎くん。さっそくだけど、あのお馴染みの呪文を披露してみよっか。ここにオムライスがあるっていう想定で」
「……へっ? あ、はい……」
すると、自身の席に座り軽いウインクと共にそう口にする中山さん。お馴染みの呪文……うん、やっぱりあれだよね。メイドさんだし。
……ただ、そうは言っても……うん、恥ずかしい。それはもう、ほんと恥ずかしい。……まあ、やるしかないんだろうけど。すっごいキラキラした目してるし、中山さん。そういうわけで、いったん深く呼吸を整える。そして――
「……えっと、その……おいしくなあれ、ぴえん、ぴえん、ぱおん」
「なんかしょっぱくなりそうだけど!?」