お呼び出し?
「………………ふぅ」
それから、一週間ほど経て。
深く、呼吸を整える。今、僕がいるのは四階へと続く階段――数ヶ月前は僕もいた、一年生の教室が在する四階へと続く階段の前で。
さて、ここで何をしているのかというと、一年A組の教室――白河さんの教室へと赴くべく精神を整えているわけで。……いや、それでなんで整える必要が、とは我ながら思うけども……まあ、そこは僕なので。
【――卒然ですが、奏良先輩。宜しければ、本日お昼をご一緒に如何ですか?】
一時間ほど前のこと。
三限目が終わった後、スマホを見るといつの間にか届いていたのは一通のメッセージ。僕の友達たる後輩の女子生徒、白河さんからのメッセージで。……まあ、そもそも今のところ彼女以外の人から来るとも思えないんだけど。
さて、再度呼吸を整えた後、覚束ない足取りにて四階の廊下を歩いているわけだけれど――
「…………」
……うん、気まずい。廊下中、更には各教室からも数多の視線がこちらに……まあ、そうなるよね。恐らくはたった一人だけ、違う学年の生徒が廊下を歩いてるんだから。
ところで、本当はあちら――A組に近いあちら側の階段から来たかったんだけど、生憎のこと今は諸事情あって掃除中とのことで……うん、どうして今に限って……いや、掃除してくださってるのはもちろんありがたいのだけども。
ともあれ、居た堪れない状況の最中どうにかA組――白河さんの教室へと到着。そして、おそるおそる開放された扉の前へ。そして――
「――ふふっ。校内にて二人で食事なんて、これぞ友達という感じですね、先輩?」
「そうですね、白河さん。よもや、この僕にこんな日が来ようとは……生きてて良かったです……」
「……いや、流石にそれは言い過ぎかと」
それから、ほどなくして。
何処か悪戯っぽく微笑む白河さんに、沁み沁みと頷き答える僕。すると、さっきのご様子とは一転、少し困惑したような……あれ、何か変なこと言ったかな? 学校でご友人とお食事なんて、きっと誰もが憧れる理想のシチュエーションだよね?
ともあれ、僕らがいるのは校内の中庭――敷き詰められた様々な石と緑豊かな木々が心地の好い空間の隅の方にて、二人ベンチに腰掛けているわけで。
……ところで、それはそれとして――
「……あの、白河さん。その、こうしてお食事に誘ってくださったことは本当にありがたく嬉しいのですが……その、教室へお伺いするという形でなくとも良かったのかなと。例えば、直接ここに……あるいは、校舎内でも階段の近くなどでも良かった気が……」
そう、控えめに尋ねる。もちろん、彼女の下に伺うこと自体が嫌なわけじゃない。ただ……まあ、ほんと気まずいといいますか。せめて、あの廊下を通らない場所で待ち合わせ出来たらなぁと――
「――ふふっ、すみません。ですが、あれには明確な意図がありまして。奏良先輩に、私の教室にお姿を見せていただくという意図が」
「…………へっ?」
そんな願望の最中、届いたのは思いも寄らない白河さんの言葉。……えっと、どゆこと? どうして、僕が姿を――
「――ねえ、先輩。教室に来るまでの間にも、結構な量の視線を浴びていたのではありませんか?」
「……へっ? あっ、はい、それはもう。……まあ、そうなりますよね。違う学年の生徒が、ご自身の学年の廊下を歩いていたら」
「……いや、なんでですか。そもそも、一学年につき優に200人以上の生徒がいるのですよ? それも、一年生はまだ入学から二ヶ月ほど――同じ学年でも、顔も知らない生徒の方が多いでしょう。なのに、どうして知らない生徒が一人歩いていただけで気になることがあるのでしょう。そもそも、先輩だって顔も知らない生徒がすぐ近くを歩いていても別に気にも留めないでしょう?」
「……それは、確かに……」
……うん、それは確かに。そもそも、僕の場合ちゃんと顔も見れないだろうし。……でも、だとしたらどうして――
「――では、どうしてそのようなことになったのか。理由は極めて単純――皆さん、貴方に見蕩れていたのですよ。類稀なる美少年たる貴方に」




