鬼
冷たい風が吹き付ける夜の東京。
そんな中ブラブラと街中を徘徊する少年が二人いる。
防人竜太と古田裕太。
彼等二人は毎晩、未成年ながら酒を飲み酔いが周り暴力行為を行い補導される日々。
学校もほとんど行かない。
そんな自堕落な決して優等生とは言えない少年二人の手にはお酒がフィットしている。
アルコールで体も温まり冷たい風も心地よく感じる二人。
路地を曲がると電線が剥き出しになった少し狭い通路が姿を表す。
いつもなら誰も通らないし誰もいない通路。
だが今日は誰かが二人の行き先を塞ぐ。
「おいジジイ、邪魔だからどいてくんない?」
失礼極まりない、生意気な口調で聡太が道を塞ぐ者に話しかけると道を塞ぐ者は振り返る。
『人ではない』
二人は振り返って見せた顔を見てそう感じた。
奴の顔の部分、目、口、鼻、眉の位置はグチャグチャ、顔の色も紫色と赤、青が混在する独特な褐色。
この世のモノでは無い。
『逃げなきゃ』
二人の酔いは一気に飛び生存本能がビンビンに働いた。
だが竜太の脚は動かない。
恐怖で膠着してしまった。
「走れ!」
すぐに走り出した聡太の声で脚の膠着が解除され走り出そうとしたその時、グチャッと肉を潰した音がした。
そして目の前を、得体の知れないモノに背を向けて走る聡太の頭は消え去り、血を噴き出しながら彼の体は一二メーターほど頭無しで走りばたりと力尽きた様に倒れた。
「そう、た…?」
目の前で起きた出来事が信じられない。
あまりに一瞬のことだった。
理解が追いつかない。
そして今日は一色の顔を振り向かせるとそこには金棒に血を付着させた奴がいた。
どこから金棒を取り出したのか?
なぜ血がついているのか。
恐怖で冷静は判断も何もできない。
自分の死地はここだ。
そう確信した時だった。
金棒を持った奴の背後から刀を持って飛んできた鬼の仮面を被った『人』が現れ、奴を真っ二つに切った。
何が起こったのかまたしても分からないまま呆然としていると鬼の仮面の人は仮面を取り、座り込んだ竜太に手を差し伸べる。
「大丈夫か、少年? 怪我は?」
「ヘ? あ、怪我はないです」
助かったと安堵した竜太の目からは安心からなる涙が溢れ出す。
「そうか、よかった。アイツは、、もう無理だな。辛かったろう。もう大丈夫、お友達の事は残念だけど今日のことは忘れなさい。そしてもう夜遊びはやめなさい」
鬼の仮面の人が立ち去ろうとすると竜太は彼の袖を掴んだ。
「僕を貴方の弟子にして下さい」
「え? なんで?」
「僕は貴方の様に強くなりたいんです! 僕とアイツは今まで喧嘩は負けたことがなかった。なのにあの化け物には勝てる確率はゼロだった。なんなら俺たちは逃げ出した、そんな化け物を貴方は一撃で倒した。僕はそんな貴方の様に強くなりたいんです!」
竜太の目は真っ直ぐで根強い芯があった。
「うーん、まぁいいけど。お友達のこと、悲しくないの? それとも別に友達じゃなかった感じ?」
すると竜太は暗い表情を浮かべた。
「勿論悲しいですよ。悔しいですよ、、でももし今ここで貴方に声をかけなければもう二度と貴方に巡り合える気がしなくって。それで、、」
「まぁ、気持ちは分からなくはないよ。じゃあまず教えてあげよう。俺の仕事は鬼祓い。さっき俺が切った化け物は人の憎悪、悲しみ、怒り、傲慢さなどによって生み出される『鬼』と呼ばれるもの。そいつらを殺すのが俺の役目。そしてもう一つ目の役目が『神隠し』。もし、『鬼』に殺された人の遺体が世に見つかればニュースになり不安や悲しみへと繋がる。そうすると連鎖反応で鬼の出現率が増えてくる。それを抑制するために遺体を存在事消す。その故人は最初っからこの世に存在しなかったかの様に皆んなの記憶から消える」
「それじゃあ、、、」
「正解。今から君のお友達も、君には悪いけど消えてもらう」
「そんな、、」
「そんなに心配しなくてもいい。神隠しをその場で見た者は隠された故人を忘れることはない」
「そうなんですか、」
竜太はどこか安心した様だった。
「それじゃあ始まるよ」
竜太がそれ以上何かを言うまでも無く鬼の仮面の男は聡太に近づき遺体に刀を突き立てる。
驚きに竜太は一瞬困惑するも次の出来事に呆気に囚われる。
「神隠し」
聡太の遺体は一気に火に包まれ一瞬にして消え去った。
「はい、終わり」
どうでしたか?
良ければぜひいいねや、評価、ブックマークなどを残していってください!