これからのこと
「バデイの懸念しているとおりだ。しかし、拒絶はできないだろう?俺は、お前たちとのささやかな幸福とこの世界の平和のために、今言ったやり方で6勇者達に、7人目の、支援の勇者として協力することにしたんだ。」
ゼブラは、自身が異世界からの転生者であることと6勇者も同様であることは、あえてのべないことにした上で、自分の立場と今後の懸念を説明した。
「うーん。」
難しい顔をするグレート以下5人だったが、
「まあ、しかたがないな。なるようになるしかないか。」
アトキンス師匠が、あっけらかんと言言い放った。
4人が彼女をジト目で見たが、グレートは笑い出した。
「師匠は、あいかからずですね。でも、たしかにその通りですね。でも、考えておかないと。」
「それで、私を5人目に入れるという話は…。」
「ありません!」
4人はハーモニーし、ゼブラは、ないない、と手を小さく振った。
「冗談だ、冗談だ。まあ、S級冒険者として協力してやるから…、そうだ、前金として。」
いきなり、グレイトに抱きついて、唇を重ねた。唖然としている4人を後に、投げキスをしながら、笑い声を出して行ってしまった。
「5人目はないよ!」
"師匠は・・・これからのことを心配して、彼女らを落ち込ませまいと思ってわざと・・・だ、きっとそうだよ。"ゼブラは、師匠の配慮を監視やした、感謝しようとおもった、配慮だと思うことにした、背中に四人の痛い視線を感じながら。
「みんな心してくれよ、半ば捨て石に使われるだろうからな。それに、慎重にな、疑いを持たれないように。魔族との提携も進める、それにはみんなの協力も必要だ。それから・・・まずは自分の身を大切にしてくれ、生き残ることを優先してくれ、他は二番目以下で・・・。」
「馬鹿。」
四人は、ハーモニーした。
「あいつは、本当に大丈夫なのか?」
ゴッチは、ロピアに詰問するように問い詰めた。
「彼を信じるしかないでしょ?それとも彼なしで私達だけでやっていくというの?」
「副魔王以上の魔族女を一人で倒した?奴のホラじゃないか?本当かどうかわからないだろう?」
「少なくとも、かなりの魔族の部隊の隊長クラスを、今まで倒しているのは確かよ。私達と比べてどうかしら?」
彼女は、皮肉っぽい表情を見せて、覗き込むようにした。
「せいぜい、使いつぶさせてもらえばいいか。」
一人で納得したように、背を向けて行ってしまった。"全く、私に面倒ごとはに全てまかせておいて、後で文句ばかりいうんだから。"
「まあ、彼も活躍しないとならない立場だからね。」
"私だってそうなのよ。"二人のやり取りを隠れて聞いていたスタアが、出てきて声をかけてきた。彼女はリッキーとともに、立場があまり重くない。今、あまり焦る必要もないから、ロピアの言う事に比較的従順だった。
"まあ、奴の言う事をそのまま受け取るわけにはいかない・・・。かと言って使いつぶしては・・・うまく死んでくれればいいけど、そうでなければ・・・。奴が何か言っても聞く者がいなければ・・・、あれが奴の本音なら別にかまわないけど・・・。それより奴を取り込んだ方が得かも?少なくとも二人はライバルになりかねない、彼と提携できれば・・・。"
「でもさ、魔族との提携なんかできるかな?」
いつの間にか、スタアもいた。
「私は敵でなくても嫌よ。ダークエルフとかさ。」
いかにも嫌だという表情をしたのは、スタアだった。“こいつは、そういう狭いところださか見ない、満足している…、羨ましいわよ、馬鹿女。それに比べて、私は…。”
ロビアの立たされている立場は、かなり微妙だった。“天秤にかける?かけると間違えば、却って危ない。”王位継承に一番近いところに立っていることができるのは、彼女の策略、人望、彼女が見いだして要路につけた人材、政策…もあるが、勇者であること、国の発言力を高めているという実積だった。それがなくなれば、温和で野心のなかった姉よりはるかに政敵がいる自分の立場は一気に危うくなる。心の中では、決して顔には出さなかったが、彼女は、焦っていた。そう、顔には出していなかったはずであった。
「私だって、立場が危ういのよ。」
スタアが不満顔で言った。“あんたの比じゃないのよ!”と思うロビアだったが、一応、ハイエルフの事情でも聞いてやるわ、というふうに彼女の手を取って、自分の部屋に連れて行った。
「私だって、あいつの下にいるのは、まずいのよね。」
ハイエルフは、多くの部族に分かれている。それが、何となく一人の王の下にまとまっているのだが、それはそうでもしないと、てんでバラバラ、互いに攻撃しあって…になってしまうからなのだが、それでいて意志の統一をはかる組織も方法も同意もないのである。王の権力は弱い、あまりにも。その王の後見をなすように、彼女は振る舞っているが、王を傀儡化しているのではないかと思えるほどだったが、その権威は、彼女が勇者であるが故である。ちなみに、彼女は傀儡を作って支配している、支配しようとしているつもりは全くない、純粋に助けているつもりなのだ、あくまで彼女主観ではだ。
「本当は、もっと上手くいくものかと思ったわ。勇者の妻になるヒロインの妹に転生して、成り上がる、闇堕ちした、というより、本来の役割につけなくて闇堕ちになっちゃった勇者にざまあする筋のライトノベルに似ていたから、それを参考したのに…その成り上がりの半分も上手くいかなかったわ…。なんで、何にも知らない勇者にざまあしなければならないのか、今思えばおかしいことだけど、したい、と本気で思っていたのよね。」
“馬鹿な女。”スタアの愚痴とを聞いて、ロピアは思った。
今、彼女が勇者として後見しているハイエルフの有力者は、ただ、ただ無能、善良ではあるが、の盟主を後見している。人のいい彼は、乗っ取り、取って代わろうというのではなく、必死に守ろうと東奔西走、八面六臂で頑張っている。だが、それを上手くやるためには善良すぎ、かつ、力不足なので、四苦八苦している。その彼を助けているスタアの最大の敵が、彼女の攻略対象で、半ば以上成功した相手なのである。イケメンで、有能…有能な者が野心がないことは少ない。彼女の成り上がりの参考になった小説では、善良で無能な盟主は全ハイエルフの支持を集め、それをイケメン、有能な…が助けることになっていた。“どうして、そうならないのよ!”と嘆く彼女だったが、ロピアには“あったり前でしょう。”でしかなかった。
確かに、
「悪役令嬢は…××に溺愛されて…」
等の設定ものでは、イケメンで有能な辺境公とか隣国の王子・国王は、正義を愛し、野心はない、国王を打倒する、他国を占領するが、相手の自業自得であり、正義、平和、幸福を実現するのに協力してくれるのである。
“そんなうまい話があるはずないじゃないの!”
と心の中で罵るロピアだったが、自分の言葉に痛みを感じた。彼女自身が信じ、そして、頭を痛めているからだった。
「考えてみれば、謀反、侵略だもんね。そんなことをする奴が、野心家じゃないはずないわよね。そういう野心家じゃないと、国は保てないかもね。なにもできない純情…なんかに期待なんかしないわよね、私だって。」
スタアのあきらめの言葉に、ロピアはうなずくしかなかった。