S級、SS級は?
この都市、アイダホは、魔族の正規軍の来襲を察知して、市民兵、農民兵、傭兵を動員するとともに、上級の冒険者のチームをいくつも雇い入れた。傭兵と冒険者の違いは、微妙なところがあるのだが。その冒険者の中にS級のパーティーが二ついた。さらに、SS級の冒険者にも声をかけたのだが、
「もう盛りが過ぎた引退直前な私では…。」
と断られたが、その彼が、自分の代わりとなると言って推薦したのがグレイトだったのだ。市の評議員の一人も、彼のシンパのようなものだった、彼を大いに評価し、熱心に推挙した。そのこともあって、グレイトはやって来たのだが、S級パーティーとの関係が微妙なものとなった。そのうち、ひとつのパーティーとは問題なかった。
「君が、グレイト・ゼブラ君だね?噂は聞いているよ。魔族の正規軍、さらに少なくとも小魔王が来るだろうから、君が来てくれて、安心しているよ。ともに頑張ろう!」
と手を握りあった。彼は三十代で30人程のパーティーを率いた、赤毛の逞しいが、親しみを感じる男だった。アンドレといった。
「は?とにかく、足手まといになるな!」
だったのは、40近くの100人超のパーティーを率いるS級冒険者だった。バンバンという名の巨漢のスキン頭だった。
「俺達の後ろで、黙っていろ!」
それで、ゼブラ達は、市の守りを命じられ、彼が先頭に立って、救援の近くの大公の軍も含めて、魔軍に対峙することななった。
が、突破され、グレイトとそのパーティーと、少数の市の守備兵、義勇兵、農民兵が、その魔軍と戦う羽目になったのである。
あっという間に崩れかける守備隊の中、ゼブラのチーム、30数人が魔軍を食い止め、押し返し、突き破り、そして、その総大将を倒したのである。
ボロボロになって戻ってきた、S級冒険者とそのチーム、さらに主力部隊だが、全く役割を演じていない訳ではなかった。
「そう言ってもらうと、救われる感じだよ。」
と、ゼブラ達が礼儀正しく迎えると、アンドレは苦笑して、握手した。
バンバンは、違った。
「俺が、主力と戦ったおかげなんだ!いいとこだけ取りやがって…いい気になるなよ!」
とボロボロで、パーティメンバーを何人も失いながら、強圧的な態度で終始した。
それは、報酬交渉の場においても、ますます激しくなっていった。自分の立場を守るためにはやむを得ないところがあったが、ゼブラにも自分と自分のチーム利益を守らなければならなかった。激しいやり取りの後、何とかまとまったものの、バンバンの怒りは収まらなかった。彼は、ゼブラの中傷を行い続けることになった。
「どう?魔王軍小魔王を一撃で倒したと言っているS級冒険者は?」
「S級だよ、単なる。それ以上でも、それ以下でもないよ。」
「以下じゃないか?組織力とかはあるけれど・・・、本人の実力は・・・。」
「じゃあ、小魔王を倒した奴は誰よ?」
「その戦に参加した、もう一人のS級冒険者の話に出てくるA級冒険者の・・・ええと誰だったっけ?」
「あいつが、ペテン師の嘘八百野郎だから気をつけろと言ってたやつ?」
「でも、それだけの実力があったら、名乗り出ても・・・自薦してもいいのではないか?」
「とにかく呼びましょう・・・いえ、私達の方から行きましょう、確かめるために。」
「そうだな。もしかすると、もしかするかもしれないし。」
「わずかでも、可能性があったら、調べてみようよ。」
「私達は、もう切羽詰まっているんだから・・・。今すぐ行きましょう!」
6勇者たちは、防音の結界を張った部屋の中で、そう結論していた。
彼らは、魔王軍と戦って、撃退していた。正確には、魔王軍が引き上げ、彼らが立っていたというところが正確だった。倒したとはいえ、副魔王はもとより小魔王にも苦戦して、ボロボロだった。幸い、誰も気がつかなかったが。
「七人目の支援の勇者」
の神託があったと言って、秘かに教会などを通じて捜してもらってはいるが、勇者は見つかっていない。エセや彼ら以下の連中しかいなかった。冒険者、SS級やS級に期待をかけて、招集してみた。結果は、散々だった。SS級は、名誉称号に近く、引退或いは盛りを過ぎていると自覚する3人しかいなかった。それでも、戦列に
「老骨に鞭打って、奮戦いたします。」
などと言って。まあ、かなりの戦力アップにはなるが。
S級は、さすがに現役が多かったが、色々だった。中には、指導力とかで、チーム力を高めてのS級という奴もいた。ただ、実力は基本的にはS級であり、それ以上ではないのだ。勇者ではないのだ。
「どうして名乗り出てくれないんだろ?」
と誰かがぽつりと言った。
「そりゃあ、自分が勇者なのに女も、地位も、富も、聖剣も何もかも全てとられちゃったからじゃないか?」
とリョクゼンが答えたが、
「それじゃ、勇者も転生者か転位者ということになるぞ。そりゃあ、怒るし、用心深くなるだろうな。俺達が失敗するのをほくそ笑みたいと思っても当然だろうな。」
イノーキが、投げ出すような口調で続けると、
「本来の勇者って、俺達のようなのに、ざまあされるんだよな。何故か、性格も最低野郎になってさ。用心する、奴の方からこちらを避けるのも当然かもな。」
リッキーが考えこむように言った。すると、
「お前らのせいじゃないか?」
ゴッチが立ち上がって怒鳴った。
「それを言うなら、お前だってそうだろうが!」
「なんだとー!」
「まあまあ、止めなさいよ。みんな多少の違いがあっても、基本的には同じなんだから。」
スタアが止めに入った。
「とにかく、彼に会いに行けば分かるでしょう?それから、また、考えましょう。」
これには、誰もがうなだれて同意するしかなかった。
A級冒険者グレイト・ゼブラに、六勇者は会いに出発した、