合流
「グレート・ゼブラ殿は、魔族の軍が接近しているとの報を受けて、チームを率いて出撃しておりましたが、先ほど、その軍を壊滅させたとの伝令が着ましたので、もうしばらくすれば戻られるかとと思います。」
グレート・ゼブラの先遣軍が、魔王討伐軍の拠点として確保していた場所の砦の司令官は、6勇者を先頭とした人間・亜人そして魔族の連合軍の伝令に告げた。伝令は、その軍が翌日には到着するとの連絡を伝えてきたのである。そして、伝令の騎士は、その言葉を持って来た道を帰っていった。
「これは忙しくなるぞ。いよいよ最後の戦いだな。」
髭面の歴戦の騎士である、砦の司令官は魔王城のある方向を見ながら、周囲に聞こえるように口にした。
グレート・ゼブラとそのチームは、その日の夜になる前に砦に戻ってきた。
「おお、ついに勇者様方がおいだになるか。」
と大仰な身振りを加えて、いかにも待ちかねていたかのように叫ぶように言った。
"あんたも勇者でしょうが。"
四人は、ため息をつきながら思っていた。
「6勇者様。お待ちしておりました。与えられた使命を、6勇者様の先払い、魔王打倒、征伐のために邪魔になる障害を排除することを、何とか果たせました。魔王との戦いでは、何とか、幸運により何とか凌ぐことができましたが、もはや私達の手に余るところとなっておりました。最早、6勇者様方のお力なくば、どうしようもない所まで来ておりました。」
とゼブラはロピアの前に跪いて状況報告のあとこう締めくくった。ロピアの後ろには、他の5勇者が、その後ろに皇帝、王侯貴族、部族長あるいはその代理達が立ち並んでいた。その中には、もちろん同盟軍である魔族の長達もいた。
「何を言われますか、支援の勇者、ゼブラ殿。あなたとあなたとともにあった戦士、騎士、兵のおかげで、かの魔王とその軍をここまで追いつめることができたのです。お礼を、どれほど言っても、尽くせないでしょう。これからも、この戦いでも私達を支援して下さい。」
とロピアは、ゼブラとその後ろに控えるバディ達4人を先頭にした彼のチーム、さらに彼とともに戦った人間、亜人、魔族の戦士、騎士、兵士達に頭を軽く下げた。
「まあ、あの時より6勇者様達の方が有利になっていると思いますよ。」
「それは、どういう根拠で言っているのかしら?」
ロピアは疑わしそうな目だった。他の5人は黙って成り行きを聞いていた。7人は、結界をしっかり張っている一室にいた。彼らが集まっているのは、秘密である。ただ、全員自分の親しい者達には伝えていた。
ゼブラの言った通りならありがたいに越したことはないが、本当にそうなのかは疑問だし、不安だった。ゼブラに信頼を置いていないから、なおさらだった。
「多分6勇者様達は、あの時以来、傷が癒えてからですが、得た戦訓から戦い方を考え、かつ、鍛錬を続けていたことでしょう。しかし、あの魔王は、傷が癒えるとすぐに戦いにでて負傷してしまい、傷を癒すだけに時間を費やしていたわけだす。実戦の経験は大きいですが、奴は油断して戦い傷ついて、退きました。成長するような戦いぶりではありませんでした。だからこそ、以前より6勇者様方が有利になったと申し上げたのです。」
ゼブラは穏やかな調子で、先ほどの王侯貴族聖職者部族長の集まる会合の時と同様な態度で自分の言ったことを説明した。ロピアがまず、ため息をついて、
「あなたの言う通りかもしれないわね。油断はするな、でも、恐れで萎縮するな、することはない、と言いたいわけね。」
"まあ、そういうことだが。"
「邪魔になる連中は、できるだけ排除、片付けるように・・・事前の清掃はさせていただきます。」
"だから、後はやれということね。"
"一番おいしい所はゆずるからと言いたいわけか。
""俺達で後は決めろということか。"
"彼と行動を共にするか?"
"彼のように、他の5人を助けるか?"
"みんなが満足してくれるには・・・。"
と6人は心の中でつぶやいていたが、3人は"ロピアに最後のはなは持たせるか?"と考え、後二人は"俺が魔王を倒すとして・・・。""イーノとゴッチに止めを・・・でも、2人にどうやって納得させる?私だって・・・。演出で何とかなる?"ロピアが一番悩んでいた。
6勇者のうち3人が、互いを見た。
「私さ、魔法討伐の主役は降りるわ。」
ちょっと、素っ頓狂な感じで、ボールがすっぽ抜けたように言葉が飛び出したというような感じだった、スタアの発言は。リッキーとリョクゼンは、呆れたという表情とホッとしたという表情とグッジョブという表情が入り混ざっていた。そして、大きく深呼吸して、意を決するよう表情となった。
「魔王を誰が倒すかで争っても仕方がないだろう・・・思うんだ。俺は、得られるものは得られた、満足しているしね。それを守れればいい。まあ、悩みや困ったことはあるけどね。」
「ただ、俺達の協力を言ってもらいたい・・・言ってくれ。それでいい。後ろにいるお偉いさんには何とか説明するから・・・。」
「もう―、魔王の他に怖い相手と戦いたくないのー!」
スタアの言葉で締めることになった。苦い顔の二人だが、これでいいかと思い口にしなかった、それ以上。"それで済むと思う?"という顔のロピアを見たゼブラが、困ったな、言いたくないな、と顔をしたものの、
「俺が解決策を言えるか分からないが・・・、国や部族のことは忘れた、知らない、後は勝手にやってくれ、でもいいのではないか?」
あなたね~、この馬鹿と睨むロピアと
「?」
の5人。
「平和、共存のプランというブーケを放り投げてさ。」
「?」
はやっぱり5人。
「ん。」
と難しい顔のロピア。
「何よ。選挙制の皇帝の帝国?選挙と言っても、国民選挙じゃないじゃない、こんなまやかし・・・。」
とまで言いかけて、ロピアは口をつぐんだ。他の5人は、どうして黙った?、という顔だったが、ロピアは、流石に気が付いたのである。しばらくして、他の勇者たちにも分かりかけてきた。ロピアが言いかけたことも、5人が思い浮かべたことは、この世界での現在では不可能なことだったからだ。
"こいつ、よくわかっているわね。"とロピアがまず思った。
"まあ、革命→国民が王を選ぶとかの低次元の歴史的?知識じゃないってだけだよ"とはゼブラだった。