6勇者も進む②
「分かったけど、何でわざわざ言いにきたの?」
ロピアは、いかにも不機嫌そうな表情で、リュウゼン、リッキー、スタアを前にして、長椅子に体を深く預けるように座りながら言った。対面する、やはり長椅子に、スタアは、だから嫌だったのよ、という顔を露骨にしていた。座り方もそれを現していた。男2人の方はというと、一応、姿勢を正していた。
「後から分かって不信感をもたれるのも困るし、何のかんのと言っても、あんたを頼りに…というか、俺達の代表と思っているからさ。」
「ふん。頼られても困るけど。」
リッキーの言葉に冷たく返した、ロピアだったが、それなりに考えていた。
3人は、グレート・ゼブラと友好関係になることを望む、魔王討伐の手柄を6勇者のロピアら3人とは争わない、今得ているところで満足するつもりだ、ということを伝えに来たのだ。
「あのゼブラと一緒にさ、あんた方を支援するさ。野心は捨てるということさ。」
「そう。それはありがたいわね。」
ロピアは、無表情で迷惑そうに言った。"こいつ何を考えているのかしら?""どこから言ってやろうか。"
「俺達は、支援してくれている王様たちを説得して、魔王退治の主役競争からは降りる、その下でそれを助けた者の立場に甘んじる、主役の覇権を認めて、その下で地位を安堵してもらうことにしようと。」
「それで納得してくれるかしら?」
「納得させるさ。まあ、うちは、あんまり欲がない王様たちが多いから。」
実際そうだった。だから、安全パイで満足してくれると期待していた。ただし、そのライバルの方は野心があるものが多かった。
「まあ、譲るから庇護は頼むよ。」
「虫がいいわね。でも、わかったわ。グレートは、そのための担保にするつもりね。」
「そうだよ。それも虫がいいかもすれないけど、できるだけ貢ぎ物を、サービスをすることで何とか許してもらうさ。」
「分かったわ。せいぜい私に感謝して、応援してちょうだい。ゼブラとのことで困ったら、少しは力になってあげるから。」
“この小悪党達が…。”“極悪女が。”“腹黒王女!”“欲深い野心家!”と心の中で、罵りあっていたが、それでも相手の言葉を信じていた。リョクゼンは王女と結婚していたし、その国が彼の後見になっていたが、覇権を目指すような国ではなかったし、彼を特に買っている王太子も、妻の王女も、そんな野心はない。できるだけ平穏にすませたい、という考えだ。平和主義といえばそうだが…。リッキーやスタアの場合も同様だ。
ロピアといえば、自国、母国の覇権を確立させたい。そうしなければ、敵対する勢力、諸国がいるからだ。それに対抗するためには、最高の権威がいるのだ。最高の名誉、名声だ、全ての諸国、部族が認める。そのためには、勇者の中の勇者にならなければならない。ゼブラ達が、自分に協力してくれるのであれば、それはそれで、ありがたいことではある。ロピアは、一瞬で判断した。あとの二人には、どう説明するか・・・そのまま言えばいいか・・・と結論した。
「なんだって?それじゃ、あいつら裏切るのか?どうしてそのままにしておいたんだ?説得しなかったんだ、どうして。」
「これからどうするつもりなんだ?このままにしておくつもりなのか?」
"ふん。肝心な時には私にまかせるのだから、こいつらは。"ロピアは、イーノとゴッチに状況を説明すると、彼女の予想通りに、怒り、戸惑って、彼女に文句を言い立てた。
「まあ、冷静になってよ。あいつらは、私達に敵対するつもりはないんだから。私達を支援してくれると言っているんだから。ただ、ゼブラと一緒に上に行くより、保身の方に走ると言っているだけよ。自分達と、自分達を後援する、後見してくれている国々は多めに見てねと、条件闘争、私達の後塵を拝してもいいから、下に立ってもいいかということで。」
ロピアが淡々と説明すると、流石に二人とも落ち着いてきたようだった。
「それでね、私達も役割を決めようと思うのよ。」
「?」
「ん?」
と、ロピアの突然の提案に顔をした2人にロピアは続けた。
「魔王を倒すのはあなた方2人よ。6人なら誰が本当に倒したということになるでしょうけど、2人なら、その功績は分け合うことができるでしょう?何とかうまく説明できれば・・・いえ、できるわよ。」
「そ、それはいいが、あんたはどうするんだ?」
「俺達に名誉は譲るなんて、殊勝な人間に何時からなったんだ?」
ため息をついたロピアは、
「あなた方が魔王を倒したと、王侯貴族の前で報告するのは私よ。」
「う。」
「ふん。」
露骨に不満顔になった二人だったが、しばらくすると、彼女と同様にため息をついて、
「わかった。乗ろう。」
「そんなところで妥協するよ。」
と観念したように言った。
「では、いっぱい助けてあげるから、せいぜい頑張ってよ。」
「そちらの方は任せてくれ。上手くまとめてくれ。」
「そういうことでは、あんたには勝てないからな。」
"裏切るなよ。"という顔だった。ロピアには、そう見えた。"それはこっちのセリフよ。どうまとめようかしら・・・。ゼブラと詰めておくか。"