俺って勇者なんだよな・・・。
諸帝国皇帝、諸王国国王、多く諸侯貴族、各派教会代表、亜人有力部族長達が居並ぶ中で、6人の若き男女が、魔王打倒のための勇者として神の祝福と認定を、大聖堂の中で厳粛な式の下で行われた。
「私達6人は、勇者として一致団結、協力して魔王打倒のための旅にでます。」
と6人の中の見事な金髪の若い女性が進み出て宣言した。彼らに、全ての国々、部族があらゆる協力をすることを協約した。
その一時間後に、厳重な、かつ誰にも気が付かれない結界を幾重にも張られた一室で、ドアが閉まると同時に、そのドアを背中で押さえるようにして、その彼女が、
「ど、どうするつもりよ!」
と半泣き顔で、他の5人の顔を助けを求めるように見たが、彼らも深刻な顔でうつむくばかりだった。
その頃、遠く離れた都市の居酒屋で一人の冒険者が、
「俺って、勇者だったんだよな。」
6勇者認定式が行われる、今日、今頃という話が話題になった時、A級冒険者で、長身で逞しいが、マッチョともデカイがたいというほどではないスマートで、人の好さそうな黒髪の若い冒険者、名前をグレイト・ゼブラが呟くを耳にして、一瞬、彼とともに仕事の成功を祝っていた仲間達は目が点になった。
「子供の頃さ、俺の夢は勇者様でさ、その頃の夢ではさ、予定では今頃勇者様になっているはずだったことを思い出したんだよ。」
慌てて弁解すると、
「それを言えば俺だってそうさな。」
「しかし、ゼブラの旦那は実力はS級、いやSS級、一番勇者様に近いんじゃないか?」
「私はグレイトが勇者でないことが、不可解よ。」
最後に言ったのは、魔族正規軍の元聖騎士の女だったから、皆がその言葉に頷かざるを得なかった。
「そうよね。グレイトはすごいよね。」
「勇者様のチームに誘われたって、グレイトのチームから離れないよ。」
「あんたが誘われることはないわよ!」
「ひどいな~。」
仲間達は互いの軽口をたたきあうことで、グレイトのつぶやきを忘れてしまった。同時に、昨日の彼の活躍を思い出していた。
魔族の襲撃から村を守ってくれ、という依頼。その三日目、それまで順調に進んでいた、魔族の一隊を壊滅寸前まで追いつめていたと確信していた時、新たな魔族の登場で一変した。彼らは、前日まで相手にしていた魔族達とは段違いの力を持っていたし、遥かに統率が取れていた。
「魔族正規軍、騎士達だよ。」
その中で、グレイトは、その手刀と蹴りで次々に、魔族騎士達を倒して、味方の危機を救ったのだ。彼の手刀の一撃で、水平打ちなら胸の骨が砕け、脳天から竹割なら、頭が砕けた。蹴りは、相手の体を貫きさえした。それも、盾、鎧、防御結界さえものともせずに。彼が手刀や蹴りで戦ったのは、その時既に彼の剣が折れていたからだった。魔法攻撃は、味方の援護に使っていた。
「流石に魔族の正騎士殿だな。」
彼が感嘆したのは。彼の水平チョップ、蹴りでは、その正騎士、魔族の正騎士は、正騎士と呼ぶのは、その亀の魔獣としか見えない体に躊躇してしまうが、のとっさに背を見せた、甲羅をたたき割れなかったからである。苦痛の叫びはあげさせたが。
「やはり正騎士クラスになると、身体強化魔法をつかわないと苦しいかな?」
「な、なにを冗談を言っている!」
と言ったものの、背を向けて防御一方の姿勢を変えようとはしなかった。しかし、ざわめきに緊張した時、背中に今までにない痛みが走った。ゼブラが宙に飛び、両脚の飛び蹴りをくらわしたのだ。それは、もちろん身体強化はなかった。それでも、両脚は魔法もまとった甲羅を踏み破り、その内部の内蔵などを破壊して、その持ち主を絶命させた。
「そいつは、小魔王の親衛隊幹部クラスだよ、多分…。」
そう言って、絶句したのは、一ヶ月前に、魔族の追っ手から、ボロボロの状態でグレイトに救われた魔族の女聖騎士だった。赤毛の、長身の、やや細身だが、結構胸の大きい、魅力的な女性だった。今戦った魔族と同様な魔族ととても言えない、当人もあいつらとは、あんな化け物とは違いますと言っている、魔族である。マルシア・サンという名前だったが、人間界で生きるため、グレイトの奴隷になることを選び、彼と奴隷の盟約を結んだ。もちろん、グレイトは奴隷として扱ってはいない…どちらかというと、同士、仲間、家族…妻?として遇している。妻?というのは…彼女が夜這いした結果で、何人かの女達は認めていないが。