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1.

 王都エゾ。

 寒い北国にあって、一年の半分以上が冬という、ウインタニア王国の首都。

 その四方には、森に囲まれ小さな村が散らばっている。

 そんな村の一つ。

 エデン。

 そこで新たな産声がこだまする。

 半年間、否、半年以上も冬将軍が支配する寒い地、が、わずか三ヶ月の間、春の女神を迎える一つの王国。

 それがこの北国、ウインタニア王国である。

 無論、南へを向かえば比較的暖かな国々もある、が、そことは大きな海に隔たれている。

 そのため、この国の暮らしは最初は貧しかった。

 また、魔物も多く徘徊していて、とても厳しい環境下にあった。

 そんな人々の暮らしを変えた革命児が産まれた。

 それが最初の箱庭師である。

 その箱庭師は不思議な能力を持ち、異世界である小人の国との間に扉を作ることが出来た。

 その扉から出てくる小人たちは通常、ボックルと呼ばれ、そのかわいらしき姿は3cmにも満たない小ささである。

 箱庭師は、のちにガーデン、もしくは箱庭と呼ばれる、わずか30平方cm小部屋を作ったのが始まりで、その箱庭は、ボックルたちが扉から出入りして生活する場でもある。

 とても、小さく狭そうに見えるが、箱庭の構造は別空間にて構成されており、箱庭を通じて前後左右にスクロールも出来、その広さはかなり広い。

 箱庭師はボックルたちが快適に暮らしやすいよう、箱庭に街を作るだけである。

 だけであると簡単には言うが、ボックルたちが気に入らなければ、ボックルたちが来なくなり、その扉は永久に塞がれ、その箱庭は廃れてしまうのである。

 そして、その箱庭が画期的なのは、ボックルたちが錬金術を箱庭師に伝える事だった。

 その錬金術によって生み出されたアイテムの多くは人々の生活を変えた。

 そうして、やがて、貧しい人々の暮らしは一変し、やがては一つの王都へ遂げた。

 それがウインタニア最初の王都エゾである。

 エゾの中心地には初代箱庭師が王家を築し、その周辺に街を配した。

 さらに周囲には大森林があり、小さな村が点々としていた。

 と、いうのも、ボックルたちは賑やかな場を望まず、森林のある場でないと現れないからである。

 つまり、王都は点々とした村々に支えられ、街の人々の生活は潤い満たされていた。

 今回はそんなはずれの村の一つであるエデンで発する話。

 そのエデン村のある一軒家で産声が上がる。


「あ、産まれた!

 こりゃ急がないと!」

「旦那ぁ、おめでとうございます」


 畑仕事をしていた一人の男が慌てて、一軒家を目指す。

 周囲の人々は口々にお祝いを送っていたが、見向きもせずに一心不乱に家へ駆けて行く。

 そして、家に入ると一言。


「産まれたのかぁ!」


 そこにはベッドの上に赤子を抱えていた女性がいた。


「ジャンったら、赤ちゃんが驚くでしょう」

「あ、あぁゴ、ゴメン、な、なんか、いてもいられなくなっちゃって・・・」

「フフフ・・・、ほら見て、女の子よ」

「おぉ、可愛いな」


 生まれたての赤子を見たジャンは顔が綻ぶ。


「ジェーンも元気そうだ。

 よく頑張ってくれた」

「やれやれだよ、今回は安産だったから心配無用だよォ」

「あぁ、ドミニクさんありがとうございます」

「それで、名前は決めてあるのかぃ?」


 産婆師であるドミニクは後片付けをしながらも部屋に入ってきた。


「な、名前!

 そうだった、ジェーン、決めてあるのか?」

「はいはい、もちろんですよ、ジャン。

 実はもう決めてあるのよ。

 この子はフィー、そう、フィーナと名付けようかと」

「フィーナ!

 いいな、フィー、わが家へようこそ!」


 生まれたての子を喜び合う夫婦。

 父であるジャン・クロード。

 彼は農場主でいくつかの畑を所有し経営していた。

 母であるジェーンは王家の血筋であり遠い子孫でもあり、箱庭師としても王都に名を馳せていた。

 そして、その子、フィーナがやがて、母をも超える箱庭師となり、このウインタニアの歴史を変える事になろうとは、ここにいる人は無論の事、誰もが予想はしていなかった。

 フィーナはここで生まれ、育ち、生活をする。

 気温は寒く、過酷とも言える環境の中、暖かな両親の元で育まれる。

 彼女の人生は今、ここから始まるのである。

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