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【巨壁】のグランド

不定期更新の新連載。深夜の変なテンションで書いたので、設定もガバ。ご都合主義で気楽に書いて行きます。

俺の名前はグランド・ガイル。クライ王国のはずれ、魔の森に面した要塞都市を拠点にするBランクの冒険者だ。

俺の飯の種はもっぱら、魔の森に現れる魔物である。魔の森ってのはヒトの手が入ることを拒絶し続けている森のことで、一説によると森そのものが魔物なんじゃないか、と言われている。

要塞都市は、そんな森をこれ以上広がることがない様に抑えつける目的で建てられた前線基地なのだ。


それ故に名前もない要塞都市だが、絶えることのない魔物の出現により冒険者がこぞって集まることで賑わっている。

要は俺も他の例に漏れず、魔物を討伐する目的でここにいるわけだ。ただ、他者と違う点はと言えば一つくらいか。


「おい、あれ。ずっとソロで森に挑み続けているっていうBランクのおっさんだろ?二つ名もあって実績もある。引く手数多だろうし、どうしてパーティーを組まないんだろうか。」


「知るかよ。それでも十分な稼ぎがあるんだから十分だろ。ホラ、あんなおっさん放っておいて依頼に行くぞ!今日はゴブリンの討伐を取ったからさ。」


俺のことを見ておっさんというのは別にいいのだが、俺がまだ26だ。15やそこらの小僧どもから見れば十分おっさんかもしれんがな。

冒険者ギルドに入ると決まってこんな風に言われるので、必要があるとき以外はできるだけ避けているのは仕方がないと思う。


「おう!【巨壁】のグランド!今日は何を狩りに行くんだ?朝飯がまだなら寄ってけよ!」


小僧どものこそこそ話に気を取られていると、面倒な奴に絡まれた。普段はそんなことないのに酒を飲むと面倒になるそいつは、俺と同期の冒険者で、Aランクパーティー“不死鳥イモータル”のリーダー、メイガスという。

同い年の俺と比べるのも恥ずかしいくらいのイケメンで、仲間からの信頼も厚く、要塞都市で唯一のSランク冒険者だ。パーティーランクは一人の戦力とは別の数え方をするからややこしい。


「チッ、【勇者】殿に誘われたのは光栄だが、俺はこれから森に向かわねばならない。残念だが、失礼するよ。」


既に依頼を取り終えていた俺は、メイガスにそう断ってさっさとギルドを後にする、つもりだった。

しかし、メイガスは諦めずに俺に絡んでくる。


「まぁた、指名依頼かぁ?なぁなぁ、グランドよぉ。俺のパーティーに入れよぉ。お前がいれば百人力なんだからさぁ。」


俺はメイガスに何度も勧誘されている。しかし、それを受けるつもりはない。俺は縁故採用でパーティーに入るなんて御免だ。

俺はいつも言っている理由を告げて断った。


「何を言ってるんだ。俺みたいなドワーフもどきを入れたところでどうにもなるわけじゃないだろ。いい加減諦めてくれ。」


「えぇ~?ドワーフもどきって言っているのは一部のバカだけだろ?気にすんなよ~。」


俺は身長が低い。ドワーフよりちょいと大きいくらいか。大体150セトル(150㎝)くらいだ。それなのに【巨壁】なんて言われているので、口さがない者たちは陰でこそこそと俺の悪口を言っているらしい。

しかし、そんなドワーフもどきにも神の恩恵は配られる。


この世界では15歳になる年、あるイベントが行われる。それは神が人類にスキルと呼ばれる力を授ける。

それは絶対に有用という訳では無く、【魔法】や【剣術】などから【ゴミ拾い】なんてものまである。一人につき一つの特別な力は、その将来に直結するわけだが、俺は運良く、戦闘に向いたスキルを得ることが出来た。


そのスキルが故に【巨壁】なんつー皮肉な二つ名を賜ったわけだが、まぁ、伯が付いたと思えばまだ我慢できるか。


「実際、ドワーフもどきだしな。ここまで低身長の人族はそういないだろ?親が分からねぇから、片親か両親がドワーフかもしれねぇし。」


「まぁ、そうだけどなぁ・・・Zzz・・・。」


俺の言葉を最後まで聞いて納得したメイガスはそのまま机に突っ伏して寝息を立てる。どうも限界が来ていたみたいだ。

近くにいたパーティーメンバーが奴を回収していった。最初からそうしてくれよ・・・。


さて、面倒な奴は帰ったことだし、俺は俺の仕事を済ますかね。


俺は自身の装備、魔の森で倒した魔物の素材で作った大楯と大槍を担いで要塞都市の森側の門へと向かう。既に太陽は昇っていて、多くの人が働き始めているので気を付けて移動する。背の小さい俺は人ごみに装備を持って歩くと危険なのだ。


「おっ、こんにちは、グランドさん。今日も依頼かい?」


「ああ。」


「ほい、どうも。うーん、ありがとう。」


そんなこんなで門へと到着すると馴染みの門番が話しかけてくる。俺は彼にギルドカードを渡すと、彼はそれを確認してすぐに返してくれた。

ギルドカードは各ギルドで作れる身分証だが、偽造が不可能という謎技術で作られているため、町の出入りに使われる。


「じゃ、頑張って。」


「ああ。ありがとう。」


俺はのっしのっしと森の中へと入っていく。今日の目標は、この森の浅い所に出てきたという一つ目巨人(キュクロープス)だ。普段は浅い所にはいない奴なのだが、群れを追い出されたのか、要塞都市に近いところまで来たようだった。

幸い被害はまだ出ていないが、早急に対処しなくてはならないと冒険者ギルドから依頼があった。

どうもこういった大型の魔物は俺を指名して依頼することがギルドで当たり前になっているのか、最近は通常の依頼を受けることの方が少なくなってきた。


「まぁ、良いがな。こっちとしてもスキルを隠していた時より伸び伸びやれる。」


俺は目標が最後に目撃された地点まで到着すると、辺りを見回して痕跡がないか探す。一つ目巨人(キュクロープス)なんていうデカい魔物は目立つ。すぐに見つかるはずだ。


俺の予測は正しかったようで、ちょっと見まわしただけで、それらしい痕跡を見つける。無理矢理に通ったのか木々が倒れてしまっている。これを辿れば一つ目巨人(キュクロープス)に着くだろう。


良かったな。森が自己修復する前で。もう少しゆっくりしていたら、手がかりなんぞ残らなかったかもしれん。


安心した俺は再びのっしのっしと歩を進める。そしてそれは見つかった。


「グゴゴゴ・・・ググゴゴゴ・・・zzz・・・」


「こら、凄惨なこって。」


俺が見つけたのは、偶然にも一つ目巨人(キュクロープス)に見つかって殺されてしまった牛の魔物の死骸で、その傍らでは一つ目巨人(キュクロープス)がいびきをかいて寝ている。

よくもまぁ、こんな血を撒き散らした場所で寝れるもんだ。


俺は一つ目巨人(キュクロープス)の目の前まで歩いて行くとそこでスキルを発動する。


「さて、やるか。不意打ち御免。【巨大化】」


スキルが発動すると俺の体が見る見るうちに大きくなっていく。その大きさはおよそ8メトル(8m)目算で一つ目巨人(キュクロープス)と同じくらいだ。


俺のスキルは【巨大化】という非常にシンプルなスキルだ。その効果は自分または自分が触れたものを巨大化するというものである。

自分や自分の武具に使用する分には制限もないようなものだが、他にやる分には時間制限や限界があるなど特別便利な訳でもない。


このスキルが俺の二つ名の由来となったわけだ。ずいぶん前に要塞都市をオークの群れが襲ったことがあった。その群れはもはや軍隊で、他所からの救援が来るまで持ちこたえるのは無理だと考えられた。そこで、各ギルドでは住民たちを逃がそう決まり、なぜか冒険者が貧乏くじを引くことになった。

まぁ、魔物を相手にするんだから仕方がないとも思ったが、冒険者は根本的に騎士とは違い、命を大事にする。要は、逃げる冒険者が続出したのだ。

俺はその当時は血の気が多かった。身長のことを悪く言われれば食って掛かったし、無理だと言われた依頼でも、スキルを駆使してやり遂げていたくらいだ。


そんな俺が前線に送り出されたことでやってやろうという気持ちになってしまったんだよな。

俺は最初こそ、大楯と大槍でどうにか戦っていたが、もはや無理そうだと思ったところで、出し惜しみを止めた。スキルを開放して戦うことにしたわけだ。


スキルを開放した時には“不死鳥イモータル”の活躍なんかもあって、オークの群れはすでに半数ほどまで減っており、門を守り切ることくらいは出来そうだった。

ということで、俺は武具ごと大きくなって大楯を構えてオークを蹴散らし続けたってわけだ。


そしてそれを見た冒険者が俺を【巨壁】なんて呼んだわけだ。結局その犯人は見つからず終い。しかし、実は俺はこの二つ名を気に入っている。だって、ちびの俺が【巨壁】だぜ?喜ばないわけもないだろ?


とまぁ、俺の二つ名の由来は置いておいて、とりあえず、一つ目巨人(キュクロープス)に話を戻そうか。


俺は【巨大化】した大楯を大きく振り上げて眼下で寝ている一つ目巨人(キュクロープス)に落とす。それは単純な質量による暴力で、高さも加わったことで強大な威力を発揮する。


ダガァン

「グァピッ」


それが一つ目巨人(キュクロープス)の最後の声だった。俺はスキルを解除して潰れた一つ目巨人(キュクロープス)の頭から角と目玉、魔石を拝借するとその場を後にする。

動かなくなった一つ目巨人(キュクロープス)の死骸は放置しておけば森が勝手に処理してくれるので問題ない。


「楽だったな。みんな寝てればいいのに。」


俺は今回たまたま運が良かっただけだと思いなおして帰路に就く。あまりにも早く終わってしまった依頼に、ホッとしつつも急にできた時間をどうするかと頭を悩ませる。


「あー、久しぶりに色宿にでも行くか。」


俺も男なのである。







拙作を読んでいただきありがとうございます.


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