目玉焼き
いいよなあ、あの音。コンコン、パッってノックしたら、はあいって、すっと出てくる、まあるいお月さま。
透き通った羽衣を纏っている。キラリ輝いている。ソロでも大人気のスターな存在である。
たまに共演者を添えると、いろんな顔、味わい、名バイプレイヤーにも化ける。他の素材とのコラボレーションも最高。何て万能なのだ、と感じることが度々ある。
朝昼晩のどこにでもキャスティングできる上に、ティータイムでも対応できる。
さて、パチパチと音を立て始めた。焦げないように、フライ返しで様子を見る。ベーコンを敷いた上にのせたから、塩は振らないでおこう。お月さまは、昨日は柔らかい、とろりとしたなめらかさだったから、今日は少し固め、食べ応えのある仕上がりにしよう。
ブロッコリーは冷凍を使って、軽く茹でたら、マヨネーズをかける。ひとつのお皿に元気の源が集まる。盛り付けたのを見ただけでも、一日が何とも言えない、ありがたい気持ちで満たされる。
食が細く、どちらかというと食わず嫌いであり、食事よりも紙と書き物に興味のある自分が虜になった、マルチな才能を発揮する食卓のダ・ヴィンチ。卵その人である。
今日に至るまで、生きる活力、命の支えそして、食べているひとときこそが最上の恩恵幸福の頂上だと教えてくれた、卵料理。
香ばしいジューシーなベーコンの温かい塩味とともに、弾力のある黄身とふんわりとした白身を頂く。ゆっくりと深く、時々口に入れるブロッコリーの歯応えとまろやかなマヨネーズも、これまた毎日でも飽きない、魅力的な味覚を残す。
次の週末には、白く艶やかな米飯の上に半熟仕上げ、醤油でさらに美味しさを引き立てながら、豆腐とワカメのお味噌汁を添え、遅く目覚めた朝を楽しみたいものだ。