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第5話「その救世主の名は『現実』」


「眼鏡君!

 この学園内になぜか女達に追い回されている女がいるハズだっ。

 そいつを一緒に探してくれ!」


「そ、そんな漫画みたいなこと」


錠の突拍子も無い言葉に、ヴァレリーが愚痴りたくなるのは当然のことだった。

そんなシチュエーションもさることながら、一つの村、町、区に匹敵する面積要する

この学園内でその人物を探し出すのは限りなく困難。

汗搔くことなく、ヴァレリーの足は自然と駆け足、早歩き、歩行と情熱を失っていく。

錠も少し走り始めただけで分かるのである。これは無理だ、と。

だが、そんな二人の少年の前に、これまた突拍子も無く黄色い歓声は飛び込んできた。


「紐が結べるなんてすごーい!!

 天才!かっこいー!」


「おねがーい!

 私と結婚してー!」


それはまるで電車。足元震わす地響きと騒音が押し寄せる。

周りにいた生徒・教師たちも唖然とその光景を見つめる。

そして数秒前まで絶望にひれ伏していたこの二人の少年も、呆気にとられるのであった。


「いた」


まさにこれだと言わんばかりの光景が、二人の前に広がっていた。

無数の女共から逃げ惑う一人の女。

このシチュエーションこそが、この必死の形相で逃げ回る女こそが、探して求めていたその人なのである。

頑張ってと錠を送り出すヴァレリーに対し、サムズアップを返して感謝を伝え駆け出した。

そこからの手際は見事の一言だった。錠は逃げ惑う女を人気の無い物陰まで誘導し、

何とか追っかけを巻くことに成功する。

女もなぜこうも錠の誘導に素直に従ったのか。

別にそれを錠は問いただそうとはしなかった。

語らずとも、顔を見合わせ、深いため息をつけばそれが1000字の説明となっていた。


「・・・はぁ。

 山田、お願い。今すぐ死んで。

 死ね」


「2度も言うな。

 いいか、おまえのせいで俺は困っているだけでイケメンが湧いて出てくる

 体になっちまったんだぞ!」


「は!?

 こっちは蝶結びしただけで女の子に求婚迫られる

 素敵なボディになったんですけど!?」


大声出すなと、錠は吉田の口を乱暴に塞いだ。

まだ周辺にあの追っかけ女集団がいるやもしれぬ。

分かっているとばかりに、吉田は錠の腹部を殴打してその手を跳ね除けさせた。

右手で腹部の痛みを押さえながらも、錠は”あること”をまず確かめねばならなかった。


「事実の確認をするぞ、このアホっ。

 おまえの体は確かに女だな?」


「あら、よく聞いてくれたわ。

 今の私の名前はシャーロット・ゴールドスタイン。

 This is perfect Angel...」


「は、はぁ?

 おまえの脳はメロンパンか何かか!?

 男の俺が『困ってるだけで長身イケメン・イケボだらけの学校でモテまくる魔法少女の力を持つ女転校生』、

 女のおまえが『前世は剣聖、バカでも分かる知識を振りかざすだけで女にモテる孤狼という異名をもつ男』。

 俺とおまえ、肉体的構造と精神体は転生に成功したが、

 名刺が全くの逆になっちまったんだぞ!」


「ふ、ふっざけないでよ!

 (たた)ってやる、アンタの末代まで(たた)ってやるわ!!」


「バカかおめーはっ!

 天使が人を祟るな!」


鬼の形相で首を絞めようとするシャーロットこと吉田を力づくで引き離す錠。

ある一点を除いて異世界への転生に成功した両者。

だがその一点があまりにも致命的で、急所としか言う他ない現状。

これからどうしようと、頭を抱えながら独り言を念仏のように呟き始める吉田。

この動から静への急激な転換の速さに幾何感心しながらも、

錠は顎を手でさすりながら、思考を凝らした。


「(やっぱりあの転生が原因かよ。

 一人しか転生できないハズの所に、俺と吉田の二人が存在しちまった。

 それがきっとトリガーに・・・)」


この絶望的な状況になった原因を、そもそものスタート時点、発射台。

中年親父が『一人だけ』と公言したのに対し、錠と吉田の二人が結果的に

この異世界に転生されたことで不具合が発生したと考察。

一つ舌打ちした。

それが分かってどうなる。それがこの事態を一発逆転できる鍵になるのか、いや。

問題なのはこれから。この驚異的なまでの不具合を何かしらで修正、ゼロに戻さねばならない。

そのゼロという文字が浮かんだ瞬間、錠はふとポケットに手をやった。


「(待てよ。

 確か転送の際の取り扱い説明書があったハズ。

 記憶が間違ってなきゃ、そこにリセットの方法が・・・。

 あ、あった!!)」



『9ページ


 ~リセット方法~

 

 甲子園へ行け    』


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