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幼馴染の攻略がこんなに難しいなんて聞いてない!  作者: ぼんばん


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17.作戦④:光莉視点

 こんにちは。

 私は狛柴光莉です。

 美里ちゃんと同じ会社に勤めるシナリオライター兼小説家! 界隈ではそこそこ有名なんだよね!

 何を隠そう、私はこの会社での美里ちゃんを愛でる会の会長なのだ。だから、焦ったい美里ちゃんと八草くんの関係を応援している。

 美里ちゃんの部署の女子とか、私の部署、まぁ主に制作に直接関わる部門勢は大概八草くんの存在を認知し、応援している。

 一部の男性陣はまだ彼女にすることを夢見ているみたいだけど、余程スペックが追いつかないからノーチャンだと思う!


 そんな美里ちゃんは仕事とゲームはバリバリできるけど、普段はぼーっとしててふわふわ浮かんでいる感じの子だから、時々心配になるんだよね。

 ちょっとズレたところもあるし、自分に向けられる好意に鈍いところがあるもん。


 最近、八草くんと旦那の誠一くんが仲良しみたいだからちょこちょこ話聞くんだけど、そこまで頭いいなら早く美里ちゃんを彼女にしてって思う。


 ただ美里ちゃんの作戦は結構八草くんには効いてるみたいで、時々誠一くんにボヤいているから関係が変わるのも遠くない未来なんじゃないかなって思う。


 そんなことを考えながら帰路に着こうとすると、ロビーを宇宙人よろしく運ばれる美里ちゃんを見かけた。

 あのサイドの2人って昼休みに美里ちゃんを合コンに誘ってた人たちだよね?!

 彼女の口ぶりからして、自分が合コンに誘われていることに気づいてなさそうだった。でも、何かはっきり伝えるのも憚られて。そう、何か美里ちゃんには知ってほしくなかった。

 大方美里ちゃんねらいの人がいるんだろう。

 直接言いにいくと口で負けそうだから内線で伝えるようにフォローしたけど、たぶん今軌道に乗ってる製作に夢中になって忘れてたんだろう。誠一くんもよくやるから知っている。

 私がはっきりと伝えなかった責任がある。慌てて追いかけなきゃと走り出すと、後ろから名前を呼ばれた。


「光莉!」

「誠一くん、今美里ちゃんが!」

「知ってる。広報の肉食チームだよね?」


 彼女らそんな風に呼ばれてるんだ。

 いやいや、そんなことより。


「追いかけなきゃ!」

「大丈夫だと思う。さっき追いかけながら聞いたんだけど、お店ここらしいから。」

「あっ、そうなんだ。なら、そこに向かって……。」

「焦らなくていいよ。」


 え、どういうことだろう。

 私は首を傾げながら、誠一くんのスマホの画面を見た。そのメッセージの宛先は八草くんで、さっきの連行写真と店名、そして恐らく合コンに行っている旨が端的に伝えてあった。

 既読はすでについており、ちょうど返信もきた。


「返信き……うわぁ。」


 返信は、『うけますね。』の一言。

 これ、真顔だ。絶対1ミリも笑ってない。


「どうする、行ってみる?」

「……うん、一応?」


 行ったところで出番は全くない気がするけど。

 既に解決した気分になっていた私は店の地図を見てあることに気づく。


「あ、ここ向かいに美味しいレストランあるよ! たぶん通りが見える席も多いからそこ行こうよ。」

「……そうだね。」


 誠一くんもいくべきか帰っていいか半々だったみたい。私の言葉で決まったのか、あっさりと了承してくれた。



 席はばっちり。

 食事を楽しみながら居酒屋のある場所を見ていると、見覚えのあるシルエットが物凄い速さで店に入っていった。


「足速……。」


 誠一くんも同じことを思ったらしい。

 数分もすると、少し不機嫌そうな八草くんと手を繋いだ美里ちゃんが店から出てきた。

 お見事、まるでドラマみたいな去り方だね。

 シナリオに使えそうだよ。


 私がうんうんと頷きながら姿勢を正すと同じようなことを考えていたらしい誠一くんも満足げに微笑んだ。


「よーし、これで気兼ねなくデザートも楽しめるね!」

「そうだね。」


 私たちはワイングラスを合わせるとやっと気兼ねなくそれを口にした。




 家に帰ると誠一くんのスマホに何通かメッセージが届いていることに気づく。

 1通は八草くんから、簡単にお礼が来ていた。

 もう1通はもちろん美里ちゃんから。写真を撮っている暇があったなら助けてほしかったと書いてある。まぁそれはごもっとも。


「にしても、美里ちゃんが軽いのか2人の力が強いのか。」

「合コンってどうなったんだろうね?」

「うーん……私その2人にはあんまり好かれてないからなぁ。」


 というのも、誠一くんが肉食チームといった彼女らはとにかく面食いで、誠一くんも気付いていないところでターゲットになっていた。

 大体は私の味方をしてくれたけどちょっとした嫌がらせはあった。でも、それを私が跳ね除け結婚までしてしまったのだから、私と対峙するのは分が悪いと踏んでいるのだろう。


 その横で誠一くんは何やら返信をしている。

 気になって画面を見てみると、宛先は美里ちゃんで私はにんまりと笑ってしまった。




 もちろん週明けのランチでは、プリプリと頬を膨らませる美里ちゃんがフロアで待っていた。

 本人的には最大級の怒りらしいけど正直可愛い。むしろ、美里ちゃんが本気で怖いなって思うのって八草くんや友達を馬鹿にされた時とか、チーターに出会した時にするあの冷たい目だと思うんだよねぇ。

 傍で見たことあるけど、あれは怖かった。


「ちょっと! 聞いてる?!」

「あーうん、ごめん。聞いてるよ。」

「撫でないで!」


 だって可愛いんだもん。

 私が彼女をよしよしとしていると、見たことのある肉食チームが何やら手に持ってこちらにやってきた。


「九重さん、金曜はごめんね。これ、お釣り。」

「ああ……。ってお釣りですか?」

「うん。あの、晴くんって子が置いていったんだよ。」

「えっ、そうなんですか?」


 気づいていなかったらしい美里ちゃんは頭を抱えている。彼女はあまり金銭の貸し借りをよしとしないから嫌だったんだろう。

 それより気になるのは。


「ねぇ、九重さん。あの晴くんって彼氏?」

「違いますけど……。」

「ならさ、紹介してくれない?」


 あ、地雷踏んだ。

 美里ちゃんの目がスッと細くなる。


「そうそう、格好良かったよね。あの登場。」

「イケメンだったし! ね、今度はセッティングしてよ〜。」

「嫌です。」


 あまりにも冷たく言い放ったものだから、女の子たちは固まった。こうなった時の美里ちゃんは怖い。


「彼は友人以外に下の名前を呼ばれるのを嫌います。それに、あの日みたいに事前に連絡もなく自分勝手に予定を押し付けるような方を彼に紹介したくありません。

 親しき仲にも礼儀あり、って言いますよね?」

「そ、それは……その、ごめんなさい。九重さんと話したいって人がいたから。」

「なら、その人が直接来るべきでは? 少なくとも私は無理矢理連れて行かれて楽しくなかったです。ああいった場にはもう誘わないでください。」


 美里ちゃんの瞳は真っ直ぐに2人を捉えていた。

 2人はその視線に負けたようにそそくさとその場を去っていった。本当に怖い。


「で、話の腰を折られたけど撫で撫でじゃ誤魔化されないからね!」

「うんうん。」


 急に可愛い怒り方になる美里ちゃんが面白い。

 私が懲りずに撫でていると背後から少し沈んだ声がした。


「何やってるの2人で。」

「百合さん! 聞いて……?」


 美里ちゃんの勢いはみるみる萎む。

 私も振り返ってその原因は理解した。あの百合ちゃんが目の下に隈をこさえ、明らかに疲れ切った顔をしていた。

 とはいえ、仲の良い人はわかる程度、だけど。


「百合さん、疲れてる?」

「……最近仕事が忙しくてね。」


 はて、繁忙期でもないし、決算でもない時期だが何かイベントはあったか。

 私と美里ちゃんには思い当たらなさそうだ。


「それより、あの宇宙人事件、詳しく聞きたいんだけど。あの噂うちの部署まで広がってたよ。」

「えっ、恥ずかしすぎる!」

「会社内引き摺られてたもんね。」

「それもこれも止めてくれない狛さんのせいだよー!」


 わっと泣き真似をしている美里ちゃんを尻目に、私が経緯を話すと、我慢できなかったらしい百合ちゃんは噴き出していた。

 百合ちゃんは私たちの前ではよく笑うけど、普段はクールだから周りの男性社員がざわめいていた。

 美里ちゃんもそうだけど、百合ちゃんにもそんな風に自然体で一緒に過ごせる人がいたらいいんだけどな。


「よーし、じゃあ美里ちゃんの愚痴も含めて今度私の家でお泊まり会しようか! 今度新居に引っ越すんだよね!」

「おお、新居! そうしよ!」

「旦那はどうするの?」

「罰として参加させよう!」


 私たちの話は時に誠一くんにとってあくの強すぎる話だから罰としては十分だろう。

 彼の嫌がる顔を想像してしまい、私たちはつい笑ってしまった。

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