赤ずきんで羊で狼で
「どうして貴方はずっとずっと私を見つめているの?」
「それはね、お嬢ちゃん。君がとても可愛いからだよ」
「なら、どうして貴方はそのナイフを私に突き刺そうとするの?」
「それはね、お嬢ちゃん。やっぱり君が可愛いからだよ」
「なら、どうして貴方は泣いているの?」
「それはね、お嬢ちゃん。…泣いている?誰が?」
「貴方はどうしてそんな目で私を見るの?」
「お嬢ちゃんを見ている?どんな目で?…俺は君なんて見ていないよ。え、ア、あれ…」
「なんで貴方は私の上でそんなにも悲しい目で私を見ているの?」
「…なんでこんなことになったんだろう」
「…きっと、貴方が私のお母さんを辱めたからじゃない?」
「そうか。やっぱりその時だよね。俺はそこそこ優秀で、きっと良い奴だったんだよ。もう、あの時のような僕には戻れないのかな?」
「うん。戻れないと思うよ」
「そっか。ならお嬢ちゃんを殺さないと。殺して遠くに行かないと」
「そうだね。それがいいかもね」
「逃げるしかないよね。どこか遠くでやり直そう。僕の事も、俺の事も、誰も知らない場所へ」
「うん。それがいいかもね。そうだ、最後に一言だけいい?」
「なんだい?」
「強く生きてね。お兄ちゃん」
「…あぁ。頑張るよ」




