変わらぬ朝
朝七時、目覚ましの音で目が覚める。
天井近くに位置した小さな小窓から、白い光が差し込んでいた。
目をこすりながらけだるけな体を起こし、朝の準備を始める。
洗面や歯磨きを済ませ、一通りの身支度をすませると、差し出し口に置かれた規定の衣類に着替えた。
様子を見計らい、ちょうどのタイミングで施設の女性が迎えてくれた。
「おはようございます。朝食を持ってきました。」
見慣れた30代くらいの女性が、ガラス越しに朝食のトレーを持って立っている。
「おはようございます。お願いします。」
そう返すと、女性は扉のロックを解除して入室し、小さな机に配膳をおいてくれた。
「30分後また取りに来ます。食べ終わったらここに置いておいてください。」
「わかりました」
確認を終えて、見慣れた女性はそそくさと部屋を出る。
「今日は焼き鮭かあ、、」
鮭に加えて今日の朝食は、薄味の味噌汁と菜の和え物、白米と健康的な和食だった。
塩気は抑えめだが朝の食事としては、胃に通りやすくてそこそこにおいしい。
朝食を平らげると、トレーの隣に置いてある錠剤と水に手をかけた。
もともと立ちくらみのひどい体質のため、毎日薬を飲まないとすぐに倒れてしまう。
配膳を持って行ってもらい食事を終えて一服していると
「奈那ちゃん、おはよう。」
爽やかな声が聞こえてきた。30を手前にして青年のような笑顔の彼が、ガラス越しに立っていた。
「せんせい!おはようございます」
思わず頬がほころぶ。
彼の名前は月島零矢、普段は先生と呼んでいる。幼い頃から自分の担当をしてくれてる研究員さんで、かれこれ十数年お世話になっている。初めて出会った頃の彼はまだ16で、高校生だっただろうか。今現在でもその容姿はあまり変わらず、年齢の割に若々しいと思う。
正直タイプだ、、。
「じゃあ、検診はじめようか」
「はい」
そうして、奈那のいつも通りの朝が始まる。