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我儘王子と訳有り侍女  作者: 合澤知里


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64/64

64.念願を果たす王子

 ルーカスが十六歳の誕生日を迎えて成人してすぐ、二人の結婚式が盛大に挙げられた。


「凄く綺麗よ! ルナ!」


 新婦の控室で、純白の花嫁衣装を身に纏ったルナを一目見て、マリアが感嘆の声を上げる。はにかむように微笑みながら、朝早くからエマを中心とした数人がかりで頭の天辺から足の爪先まで磨き上げられ香油をしっかりと塗り込まれコルセットを限界まで締め上げられ念入りに化粧をされ髪を丁寧に編み込まれと長時間耐えた甲斐があった、と若干遠い目になるルナであった。


「お父様、お母様、お兄様。血の繋がらない私を、温かく迎えてくださり、今まで育ててくださって、本当にありがとうございました」

 ルナは三人に向かって、深々と頭を下げた。


 裏社会で暗殺集団として有名だったモルス一族として生を受け、自らも暗殺者として訓練されて育ち、一族と共に滅ぼされる筈だった所をオースティンに救われた。そして事情も知らないのに、家族として迎え入れ、ここまで育ててくれたゴードン伯爵家には、感謝してもし切れない。


「ルナ……、ルーカス殿下に、よく仕えるのだぞ」

 声を震わせるオースティンは、今にも泣き出しそうである。


「幸せになるのよ、ルナ」

「お前なら絶対に大丈夫だ。だがもし何かあったら、ルーカス殿下や、俺達を頼ってくれて良いんだからな」

「はい。ありがとうございます、お父様、お母様、お兄様」

 ルナは目を潤ませて頷いた。


 何でも自分一人で解決してしまいがちなルナだが、今後は王太子妃という立場に就く以上、一人ではどうしようもない事も出てくるだろう。そんな時に、頼る事ができる人々が居る環境を、ルナは改めて有り難く思った。


 時間だとエマに呼ばれて式場に移動し、ルナはオースティンにエスコートされて真紅の絨毯の上を歩く。オースティンからルーカスに託されると、ルーカスは腕を差し出しながら、満面の笑顔を浮かべた。


「ルナ……凄く綺麗だ。今まで出会った中で、誰よりも」

「ありがとうございます。ルーカス殿下も、とても素敵です」


 病弱で儚げな美少年だったルーカスが、あどけない風貌が若干残るものの、逞しく立派に成長した、自信に満ち溢れる新郎姿に、ルナも笑みを浮かべて見惚れる。

 二人は共に祭壇の前に立ち、神父に誓いの言葉を述べた。


「では、誓いの口付けを」


 神父に促されて、ルーカスはルナのヴェールを上げる。顔を赤らめたルナが、そっと目を閉じ、その唇に吸い寄せられるように、ルーカスはそっと己の唇を重ねた。


「今ここに、お二人が夫婦となられました事を宣言致します」


 これがファーストキスである二人は、お互いに耳まで真っ赤になったが、それでもやはり幸せで、はにかんだような笑みを零す。二人を見守っていた列席者達もまた、初々しい二人の幸せそうな姿に、自分達まで幸福な気分になりながら、惜しみない拍手を送るのだった。


 結婚式が滞りなく終了した後、国民達へのお披露目の為、二人は王宮の広場に面したバルコニーに向かった。


「ルーカス王太子殿下!! ルナ王太子妃殿下!!」

「ご結婚おめでとうございます!!」

「ヴァイスロイヤル国万歳!!」

 バルコニーにルーカスとルナが姿を現すと、詰めかけていた国民達から大歓声が沸き起こった。


「凄いな。王宮にこんなに国民が集まったのを見るのは初めてだ。ルナが元平民だからかな? 皆親しみを感じて、大歓迎してくれているぞ」


 予想以上に所狭しとひしめき合っている大勢の人々に目を丸くしながらも、手を振って国民の歓声に応えるルーカスに耳打ちされ、ルナは胸が一杯になった。

 元平民、という事で一部の貴族達からは反対の声が上がり、王太子妃選抜試験を受けて実力を認めてもらえたものの、本当に自分で良いのか、という懸念は、ルナの心の一部に巣食ったままだった。だが、こうして目の前に集まった大勢の人々が皆、自分を歓迎してくれているのを目の当たりにすると、自分が王太子妃で良いのだと、皆に励まされているような気がする。

 ルナもルーカスを真似ておずおずと手を振ると、更に歓声が大きくなった。改めて歓迎されているのだと実感が湧いて、自然とルナの表情が綻んでいく。


「ルナ、俺、一つやりたかった事があるんだ」


 ルーカスはそう言うと、ルナを横抱きで抱え上げた。所謂お姫様抱っこである。


「ルーカス殿下!? 重たくありませんか?」

「大丈夫だ。間違っても落としたりなんかしないから、安心しろ」


 得意気に笑うルーカスの言う通り、重たい花嫁衣装を着ているにもかかわらず、ルーカスの腕の中は安定感があった。非力だったルーカスが、頑張って鍛え抜いた成果である。

 ルーカスに抱き上げられるルナを見て、国民からも黄色い悲鳴が上がり、ルーカスは益々気を良くした。


「どうだ? ルナ。やっぱり抱き上げられるのは、花嫁の特権だろ」


 最初に出会った時に、ルナに軽々と抱き上げられてしまったが、これで漸く、自分がルナを抱き上げる事ができた、と満悦するルーカスだったが。


「そういうものなのでしょうか? 別に私は、花婿が抱き上げられても良いと思うのですが。ルーカス殿下がお望みでしたら、今ここでして差し上げますけれども」

「いや絶対望まないから! 間違ってもしてくれるなよ!?」


 こんな衆人環視の中で抱き上げられては堪らないと、慌ててルナに言い聞かせるルーカス。その様子が、遠目からは仲睦まじい二人の会話に見えるようで、国民達から上がった黄色い歓声は、二人がジュリアンに促されてバルコニーから姿を消してからも、暫く鳴り止む事が無かったのだった。

これにて完結です。

お読みくださり、ありがとうございました!

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― 新着の感想 ―
[良い点] 完結おめでとうございます。 [一言] ハッピーエンド! よかったよかった。 そして、このお話にも筋肉ブームが……。 筋肉スキーなアリシアとお兄様の恋物語も見てみたいなと思いました。
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