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カメリエ

「ここに来るのは初めてか……」


セージと別れた後、俺は村から少し離れた場所にある墓地に来ていた。


ここに来た理由はただ1つ、俺の師匠に会うためだ。


刻まれた名前を確認してまわっていると、とある墓石の前にぽつりと佇んでいる少女を見つける。


俺はその横顔に見覚えがあった。


「よおカメリエ、久しぶりだな。随分大きくなったじゃないか」


突然声を掛けられ驚いたのだろう。


少女はビクッと身を震わせると恐る恐るこちらを見る。


「なんだ、ミステルおじさんか。いきなり話しかけられたからびっくりしちゃったよ全く」


やれやれといった感じでため息を吐きながら首を振るこの少女はカメリエ。


先ほどのセージの娘で俺の師匠の孫だ。


俺が村を出たときには確か9歳だったから今は19歳ほどだろうか。


顔は随分と大人びているが、天真爛漫な雰囲気は昔のままだ。


父親と同じように髪を後ろ頭で結って綺麗に纏めている。


「カメリエも墓参りか?」


「うん、まあね。おじいちゃんのところにはよく来るんだ」


そういって墓石の方をちらりと見る。


つまりこれが師匠の墓か。


(ただいま、師匠。帰ってきたぜ)


墓の前で屈み、近況報告をする。


「いやあ、ほんと久しぶりだよね。おじさん」


報告を終え、立ち上がる俺にカメリエが話しかける。


「全くだな、昔はこんなにちっこいがきんちょだったのにいつの間にか立派になっちまってよ」


「えー、そんなに小さくはなかったよ」


手を腰の辺りまでもっていきながら笑うとカメリエがむくれた。


彼女は村に戻る俺の後をついてくる。


「そういえば俺の家で何かを研究しているらしいな」


歩きながら問いかけるとカメリエは少しばつの悪そうな表情を浮かべる。


「なんか勝手に部屋使ってごめんね。丁度いいところがあそこしかなくって、帰ったらすぐに片づけるから」


「俺1人では広くて持て余していた家だ、別に構わんさ。そのまま使っててくれ」


そう答えるとぱっと顔を明るくする。


「本当に? やった! おじさんありがとう!」


今にも飛びかかって抱き着いてきそうな勢いだ。


「それで、一体何の研究をしているんだ?」


「家に着いたら教えてあげるよ。それ関連の物でおじさんに渡してくれって頼まれているのもあるし」


いたずらっぽく笑うカメリエ。


俺に渡すもの? 一体何だろうか。

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