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Number18 ~転生エース~  作者: J・P・シュライン
序章
5/81

第5話 Curve(カーブ)

『ピッチャー、渡辺に代わりまして、佐々木、背番号18』


 無機質な声が投手の交代を告げ、球場は一瞬戸惑いに包まれたが、すぐさまそれは期待のどよめきへと変わった。


「佐々木さん、今度は大丈夫ですよ!」


 力強い励ましの声で意識を覚醒した俺の目に飛び込んできたのは、カクテルライトに照らされた美しい人工芝のグランドだった。

 リリーフカーの女性は、優しく俺に微笑みかけながら、ゆっくりとアンツーカーの方へ車を走らせる。


 俺は女性の頭越しに周囲を見回して状況の把握に努めた。

 この前と同じ神宮球場の見慣れたスコアボードが、状況を簡潔に教えてくれる。


 ヤタルトスワローズ0-0東京Loosers

 8回裏スワローズの攻撃中ワンアウト1・2塁


 また、絶体絶命の大ピンチだ。


「頑張って下さいね、佐々木さん」


 マウンドに俺を降ろしたリリーフカーの女性は、励ましの言葉を投げて去っていく。


(俺は鈴木だ!)


 デジャブの様な光景だが、二回目ともなると少しは落ち着いて対処できる。

 俺の周りでは、見たことのあるおっさん連中が輪になって何事か話していた。


「佐々木、気を抜かなきゃ大丈夫だ、緊張するな!」

 キャッチャーマスクを被った小男は監督の指示を確認しているのだろう、ベンチの方を向いて俺に背を向けている。

 背中にはKOJIMAの文字が見える。


(小島さんって言うのか、アホの課長と同じ名前だな)


 やはり前回より余裕があるのだろう、下らない事が浮かんでくる。


「よし、投球練習は1分以内だぞ、佐々木」


 今回も、キャッチャーの言葉でおっさん連中は守備位置に散らばっていき、残された俺の手には野球のボールが握られていた。


 ネクストを見ると、テレビでよく見る顔がこちらを睨みながらバッターボックスへと向かっている所だ。

 前代未聞、三度のトリプルスリーを達成した強打者・山本哲夫(やまもとてつお)


 アナウンスを受けて山本がバッターボックスに入ると、球場中が割れんばかりの大声援を送る。

『山本哲夫!』『山本哲夫!』夢へと続く道『山本!』

 勇ましいチャンステーマと共に、外野席を埋めたビニール傘の群れが今にも襲い掛かってくるように揺れている。


(やってやるさ、また165km/h出してやるっ!)


「プレイッ!」


 アドレナリン全開にしてセットポジションに入った俺の耳に、良く通る少年の声が聞こえてきた。


「がんばれ~!ささき~!!」


 瞬間、北原さんと通ったブルペンの記憶が俺の脳裏に蘇る。

 高々と足を上げ、キャッチャーミット目掛けて思いっきり振り降ろされた俺の腕から放たれたボールは、右バッターの山本の方にフワッと浮くような軌道を示した後、急激に弧を描いて逃げる様に落下した。


【カーブ!】


 虚を衝かれた山本のバットの先っぽがボールに当たり、キャッチャーの小島の前に力なく転がる。

 小島はその打球を素早く捕んでセカンドに送り、余裕でアウトカウントを稼ぐと、そのボールは更にファーストに送られ、ダブルプレイが完成した。

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