第19話 -インポータント データ-
「みんなで頑張ってチームを救いましょうよ!」
高々と突き上げた拳が枕元の壁に激突して、俺は目を覚ました。
「痛てぇ…」
薄皮を擦りむいた拳を擦りながら、枕元の時計を見ると、デジタルの表示はAM6:55を示している。
うるさい目覚ましが鳴りだす前にストップボタンを押して目覚ましを止めると、狭苦しいユニットバスの洗面器に水を流して擦りむいた拳を冷やした。
顔を洗ってユニットバスを出ると、ノートパソコンの電源を入れて、草草タウンを検索する。
検索結果は、先日大々的な会見を行った身売りのニュースで持ち切りだ。
俺はため息と共にノートパソコンの画面を閉じると、手早く身支度を整えて家を出た。
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事務所に入ると、始業時間前なのに部長の中山が自分のデスクで革張りのチェアに深く腰掛けて、課長の小島と何やら談笑している。
「お早うございます!」
俺は大き目の声であいさつをすると、自分の席に腰かけた。
「お早う、鈴木くん!」
「お早うございます、北原先輩!」
北原さんが安物のチェアーごと俺の方に移動して、部長たちの方を目で指しながらコソコソと話しかける。
「融資の話がうまくまとまったみたいよ」
「だから部長たちご機嫌なんですね」
(あっちの小島さんもうまくやってくれるといいけど…)
俺は小島のだらしない笑顔を見ながら、Loosersの先行きにも少し希望を見出していた。
「あ、でも北原さん!」
「ん?」
「買収の邪魔して、その中国系の企業に報復されたりとかしないんですかね?」
「ん~、ウチって別に特殊技術とか持ってる訳じゃないじゃない?」
「はぁ…」
「向こうは傾いてる印刷会社ならどこでも良かったみたいよ、ウチ以外にもいくつも候補があるみたいだから、もう他の会社に話が行ってるみたい」
「へぇ~、北原さんって、意外と事情通なんですね」
感心した様に驚いた俺に、北原さんがふくれっ面を作る。
「なによ!」
「ごめんなさい!」
速攻で謝った俺は、笑顔で続けた。
「野球と一緒で情報が大事ですね!」
「分かって来たじゃない、野球も社会もIDよ、鈴木くん!」
北原さんは、ふふっと笑うと、いつもの様に悪戯っぽい笑顔で俺に言った。
「じゃあ、今日からはスプリットの特訓ね!」




