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27.突然に

 リンスレットはユーリと別れ、一人で人気のない道を彷徨っていた。

 人気がないと言っても、決していないわけではない。王都の人口は確かに多いが、それでも栄えている場所とそうでない場所は明確に存在する。

 吸血鬼が身を潜めるとすれば、人に紛れて堂々と過ごすか、こうした人気のない場所でひっそりと暮らすか――そのどちらかだろう。

 自由に動けるユーリに人気の多い場所は任せて、リンスレットは路地裏などを探索する。

 仮に戦闘になったとしても、他に巻き込まれる人ができるだけいないようにするだめだ。


「……と言っても、そんな簡単に見つかりませんよね」


 すっかり日が暮れてしまい、リンスレットは廃れた広場の噴水にぽつんと腰を掛けていた。

 近くでは汚れた服に身を包んだ子供が遊んでおり、その近くでは神父と老婆が話をしている。


「先日もらった薬ですけどね……本当によく効きましたよ」

「そうですか。それは良かった。必要になれば、また言ってくださいね」


 人通りがないと言っても、治安が悪いわけではないようだ。


「……はあ。仮に見つけられたとして、私は戦えるんでしょうか」


 ――純粋な疑問であった。

 まだ、ユーリから血を与えられなければならない不安定な状態。離れ離れになる前に血を分け与えてもらってはいるが、リンスレットは吸血鬼になってから戦闘をしたことはない。

 一応、自分の身体能力が確実に向上していることは分かっている――それでも、相手は『本物の吸血鬼』だ。

 中途半端な状態でやれるのか、そんな気持ちはある。

 けれど、リンスレットも決意した――町で出会った少女のようなことを繰り返させないために、この王都に潜む吸血鬼は倒す、と。


「もう少し、南の方に――」

「本当に助かりました。どうか、お礼の品としてこれを……」

「いや、そろそろ行かねばならないので、これで」


 神父と老婆は、まだ話をしていたようだ。

 一瞬だけ、ちらりと視線を二人に向ける。――神父と目が合った。

 その時、ぞくりと背筋が凍るような感覚を覚える。

 丸眼鏡の向こうにある笑みは、ずっとリンスレットに向けられていたのだと、気付いたからだ。


(なんで、私のことを――)


 その疑問の答えは、すぐに分かる。

 ペキリッ、と音が鳴って、老婆の首が神父によって簡単にへし折られた。


「だから、早く帰れと言ったのに。彼女に気付かれてしまったではないですか」

「な、あ、あなた、何を……!?」

「それは、こちらの台詞ですよ。僕のテリトリーで、『汚らしい臭い』を垂れ流すなんて……どういうつもりなんですか?」


 神父の目が赤色に染まり――リンスレットは気付く。

 王都で普通に人々に慕われ、暮らしていただろう神父が、吸血鬼だということに。

町中にいたモブが実は敵のボスだったパターン、みたいなの好きで……。

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