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14.これからの目的

 リンスレットの水浴びと食事を終わらせて、ユーリは再び部屋へと戻っていた。

 血で汚れたところは仕方ない……別に、ベッドでなければ眠れないわけでもないし、そもそもユーリはそんな汚れを気にしない。

 ……自分が一番、血で汚れているのだから。


「それで、リンスレット。吸血鬼になることを選んだ以上、あなたはわたしの下につく……そういうことでいいのね?」

「……騎士に戻れるわけは――」

「ないでしょう。あなた、わたしが元従騎士だって知っているのよね?」

「それは……」


 ユーリは冷たい視線を、リンスレットが言葉を詰まらせる。迷いながらも、こくりと頷いた。

《吸血殺し》――《調停騎士団》からはそう呼ばれていて、ユーリは殲滅対象として狙われている。

 ユーリ自ら騎士と敵対するような行動を取ったことはないが、吸血鬼という存在を調停騎士団は許さない。

『正義の味方』を自称するユーリも、それは例外ではなかった。

 何せ、吸血鬼でありながら悪人を殺すユーリは異端であると同時に、問答無用で殺人を繰り返している。たとえ悪人であったとしても、すでにユーリは幾人もの人間を殺してきたのだ。

 ユーリ自身も相手がどのような相手だったとしても、殺しを繰り返してきていることを許されるとは思っていない。

 いずれは――断罪されることになるだろう。

 だが、それでいい。それはユーリにとっての『敵』をすべて殺し尽くしてからだ。

 ユーリは言葉を続ける。


「言っておくけれど、わたしはあなたを助けたわけじゃない――こうなった以上、あなたもわたしの力として協力してもらうわ。使えないと判断すれば切り捨てる……それも、理解しておきなさい」

「……分かって、います。ただ、ちょっと心の整理がまだできてなくて……」

「そう? あんなにわたしの血を啜ってたのに」

「そ、それは言わないでください! 見せられたら、我慢できなくて……」


 恥ずかしそうにしながら、リンスレットが言う。

 吸血鬼の衝動のようなものだ――赤い血は、どうしても欲しくなってしまう。分かっていても、身体の言うことが効かなくなるほどには。

 以前はユーリもそうであった。

 今は、完全にコントロールすることができている。血を取らずとも、ユーリはほとんど人間と変わらない生活ができているのだ。


「我慢できるようになることね。町中ではあなたに血を吸わせたりはできないんだから」

「町中でって――あれ、町に行くんですか?」

「もちろん、行くわよ。わたしを何だと思ってるの?」

「そ、そういう意味ではなくて……もう次の行く宛てがあるんだなって思って」

「ああ、そのこと。クラインならついでみたいなものよ」

「……え、ついで?」


 きょとんとした表情で、リンスレットが言う。

 クラインのことをずっと狙っていたわけではない。ユーリには目的があって移動をしていた――その途中で聞いた、とある村の奇跡の話を調べただけだ。

 その村はすでに存在せず、クラインとイリナは二人で行動を共にしていたのだろう。

 ……イリナについては特に、解放してやれてよかったと思っているが。


「わたしの本来の目的は、《ガウェル王国》の王都にあるの」

「え、王都に行くんですか? だって、王都には調停騎士団の人達もたくさんいますよ……?」

「吸血鬼が騎士団から逃げると思っているの? それこそ、あり得ないわ。それに、奴らじゃ対応しきれないから言ってるのよ」

「……対応しきれないって、まさかクラインよりも強い相手がいるってこと、ですか?」

「クラインなんてそれこそ弱かったでしょ。あれはイリナが人工的とはいえ吸血鬼だったんだから。しばらく休んだら、王都に向かうわ――吸血鬼を殺すためにね」


 ユーリは冷静に、そう告げる。

 元々の目的は、彼女の名にある通りのこと。王都に住まう《吸血鬼》を殺すことが、今のユーリの目的であったのだから。


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