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2…憎き人族に鉄槌を落とす気になれない。というか出来そうにない。

はははは、フザケンナ魔王様。


魔王とやらに、知識を埋めこまれて飛ばされた先で俺が現状を把握して真っ先に出た言葉がこれである。


俺は、ダンジョンマスターとしてダンジョンと一緒に飛ばされてしまったらしい。

魔王が居て勇者が居る。

剣と魔法が幅を利かせ、人を支配する王様が居て地を支配するドラゴンが居る。

神が実在し人に寄り添い、悪魔が実在し人を貶める。

そんな、なんともまぁファンタジーな世界にだ。


そして、俺の現在位置というと、魔王が敵対している者の中でも最大勢力である国の首都…その中に居る。


この世界の反魔王勢力の都市の中でも最大の人口と規模を誇り、駐屯するは世界最精鋭と名高い近衛軍。


最前線で魔王と戦っている他の方面軍等に比べれば、確かに数は少ないがそんなことが霞むほどの戦場伝説を遊撃軍として積み上げている。


数倍する魔王軍に包囲されるも、敵中央を突破して撤退に成功したとか。

出撃した情報だけで、味方の士気を上げるだとか。

一刀の元にオーガを両断出来るかどうかが、所属するための最低ラインだとか。

山賊を一人で追い散らす程の猛者がウジャウジャ居るとか。

等々…



馬鹿ではなかろうか?


ついでにこの都市、魔王討伐を目的にしてる勇者の拠点があるらしい。


その勇者の異形…イヤ、偉業は次の通り。


海を斬激で割った。

五万の魔王軍に単騎で勝利した。

魔王軍最大の拠点を魔法で湖の底に沈めた。

搦め手で勇者をどげんかするために差し向けたサキュバスの一族が、全員メスの顔して寝返った。

等々…


イヤ、だから馬鹿ではなかろうか?





そんな奴等が居座る都市のど真ん中に、俺はダンジョンごと飛ばされたわけだ。


魔王も、この世界の人間も馬鹿ではなかろうか?


ポーランドフサリアや、全盛期薩摩隼人やグルカ兵をを足して3で割った様な戦力を維持してるこの世界の奴等が馬鹿だし、最早聖書に載りそうなとんでもないことやらかす勇者も馬鹿だし、そんな奴等の庭に俺を配置した魔王も馬鹿だし………


どんなロジックで生きてやがんだコイツらは。







魔王のばーか。ばーか。大バカ野郎!!


魔王から埋め込まれた知識を確認して、信じられずに暫く固まり、夢から覚めろよとばかりにダンジョン一層、外界との接点となっている扉を開けたらさ。


こう。

どうみても、何か繁華街の裏路地っぽいのよ。

酸っぱい臭いとボロを纏った酔っ払いが、酒瓶抱えてイビキを立ててるのよ。

二、三メートル向かい側には、石造りの建物の壁が有るのよ。



街の中にいる。


マチの!中に!いる!!


暫し、扉を開け放った姿勢で呆けていたが、酔っ払いと目があって我に還った。


あ、街の住人にここにダンジョンが有るって知られたら………死ぬ。死んじゃう。殺されちゃう。


通報→調査→討伐。

そんなステキムテキコンボで死んじゃう。


何せ今、俺のダンジョンは総勢一名俺自身しか居ないのであるからして。




魔王様に呼び出されたからには、良い感じのチートを貰ったかと思ったが…


んなわけ無かった。


いや、まぁ眷族になったことで獲た能力は有る。

人類史で多くの権力者が求めた『不老不死』。

その擬似的な物。

そして、ダンジョン内での『モンスター生産及び管理能力』である。


まず、『不老不死』だが…

ダンジョンの最深部にある、ダンジョンコア。

それを破壊されない限り死ぬことはない。

例え磨り潰されようと、燃えて灰になろうと復活する。


また、老いることもない。

何百年経とうと、顔に皺が出来ることも無く悠久の時を過ごせるのだと言う。

だが、体が変化しないと言うことではないらしい。

体を鍛えたりすれば、しっかり筋肉もつくようだ。


ダンジョン内では。

ダンジョンから一歩出れば、『不老不死』は喪われる。

普通に刺されれば死ぬし、外の世界で生活すれば寿命も来るらしい。


これについては、正直助かる。

死ぬ事が出来ないまま、永遠を生きるとか、その、何だ。

そんな頑強なメンタルしてないし。

途中で、自分の存在とは何なのかとか思春期みたいな事を考え初めてどつぼに嵌まって、最終的には発狂しかねない。


気が付いたら、人間で無いものにされてしまったことは、ショック…なのだろうか?

正直実感がわかない。だって、容姿等々はそのままだし、別に「新しい力を感じるッッ!」って訳でもないし。


悪の組織に改造されたバッタ仮面とか、宇宙人と契約して魔法少女なった思春期ガールとかって、こんな感じなんだろうか?




そして、こちらの意思に関係なく与えられたもう一つのステキなチート。


『モンスター生産及び管理能力』。


これは要約すると、

ダンジョン内にモンスターを生み出しコントロール下に置く。

そのモンスターの能力を数値化して把握する。


と言うものである。

この能力が有るから、ダンジョンは反魔王勢力の最優先制圧対象になっているといっても過言ではない。

『管理』に関してはまぁ、根本的な危機感を煽るに至っては居ない。

だが、『生産』に関してはどうみてもアウトであるのだ。



彼らからしてみれば、半無制限に兵力を溜め込みいつか吐き出す自宅の目と鼻の先に構築される敵勢力の拠点。


うん、最優先で処理しなきゃね!

ってか、こんなん見過ごす奴等が自分の生活を握ってたりしたら、一国民としても絶対に排除しなきゃあかんでしょう?


別に延々と生きていたい訳じゃないけど、すぐに死にたい訳じゃない。

かといって、自衛のためにモンスターを産み出せばやって来るのは世界最高峰の戦力群であるのだ。


俺はそっと、心のなかでモンスター生産の封印を決めた。





最低限目に見える範囲の状況視察と、自己能力の把握を終えて俺が出した結論。


『気付かれないようにこそこそ小さく生きてくゾ作戦』


詰まるところは現状維持であった。




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ある国の、最深部はさながら蜂の巣をつついた様であった。


国の最奥、秘術魔術を司る最高府において、一つの観測が成された。


極めて大なる魔力反応。

それが、この堅牢足る首都において観測されたと。





そして、同時刻。

この国の最大勢力を誇る教会、その所属の聖女と崇められる修道女が一つの神託を賜る。


曰く『人の世最大の疫災がおりたった。』




ここから、物語は急速に動き出した。

魔王以外に望むものが居ないまま。



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