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その日、マントルは、ギュンターから取材を頼まれた。取材と言うのは、時の総理ロジウムが首都ピルパラのど真ん中にある「ピルパラ英霊神社」を参拝するということで、その写真と参拝の様子をリポートする、というものだった。マントルはクリープを保育園に預け、イスアを車に乗せて現地に向かった。
「取材、1時間くらいで終わると思うよ」
「うん、いってらっしゃい」
神社の近くの駐車場に車を停め、イスアを車に残し、マントルが正門に向かって歩くと、正門横には十数人の報道関係者が集まっている。マントルはカバンからカメラと腕章を取り出し、腕章をつけると、その集団に加わった。
しばらくして、一台の車が正門脇の車入口に近づくと、周りでフラッシュがたかれる。マントルもそこで写真を撮影すると、引き続き、報道陣と一緒に神社の中へと移動した。神社境内から、参拝する総理ロジウムの姿は、意外に簡単に撮影することができた。
待ち時間は少しあったが、参拝自体は数分の出来事で、記者会見等も開かれず、総理が車で足早に帰っていくと、報道陣も撤収を始めた。マントルも戻ろうと正門を出た時、突如かけられたのが、、
「何で、お前まで、ここにいるんだ」
の言葉だった。見れば、大勢の人垣の中にプルートがいる。声と同時に人々の目がマントルに注がれ、マントルは目を丸くする。
「あなたと話をしていても、ラチが明きません。マントル、来なさい。君の祖父・プルームさんに挨拶しなさい」
マントルが近づくと、怒鳴り声が響く。
「馬鹿め。子供がいないのに、孫がいてたまるか!」
人垣の中に入ろうとしていたマントルは、寸前で立ち止る。
「気を反らせて議論から逃げるつもりだな。わしが言っているのは、生半可な知識で国を混乱させるな、と言うことだ」
「白亜国の平和のための活動の、どこが生半可ですか。総理参拝を容認するあなたの方が、よほどおかしい」
再び2人の言い争いが始まると、周りと一緒にそれを見ていたマントルは、やがて、近くの公衆電話に走って行き、戻って来た。
「あの、プルームさんですよね。うちの社長のギュンターが、ぜひ、お会いしたいと言ってますが」
すると、怒りで振り回していたプルームのステッキが止まった。
「何だ、君は、ギュンター君の部下か?なら、行こう。こんな奴と議論をしていたって時間の無駄だ」
あっさり、その場から離れたプルームを、マントルは車へと案内した。曲がり角で振り返ると、まだ大勢の人の中でプルートが2人の方を睨んでいた。