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異世界迷宮に転移したら、僕はみんなの食糧でした。  作者: 捨一留勉
第一章 少女との出会い
6/114

第五話 初めての友達は、ゴブリンでした。

初コメいただきました!

活動報告にてお礼を。

 

『精霊魔法について

 精霊魔法とは、己の魔力を精霊に譲渡し、魔法を行使させる術のことである。

 その威力は火、水、風、土、それぞれの精霊との親和性、さらに己の精神力によるところが大きい。

 まずは己が使える精霊を調べる必要がある。

 精霊は己の心の内を表しており、心が安定している者ほど全ての属性を均等に扱える。

 火の精霊であるサラマンダーは情熱を、

 水の精霊であるウンディーネは慈愛を、

 風の精霊であるシルフは自由を、

 土の精霊であるノームは協調を、それぞれ表している。

 実際に調べるには、魔力を使う方法がある。

 魔力は血の流れと同じように、全身を駆け廻っている。それを頭に思い描いた上で、以下の呪文を順に唱えていく。

「火よ、明りを灯せ」

「水よ、潤いをもたらせ」

「風よ、音を集めよ」

「土よ、形を成せ(皿などを思い浮かべるとよい)」

 上記が入門編の魔法であり、これで己の適性が分かるはずである。

 魔力の低い者は発動するまで時間がかかる場合があり、また、適性の低い魔法を使うと、魔力欠乏症による強制睡眠、最悪死に至ることがあるので留意されたし』


 僕は冊子に書かれていたここまでを、干し肉を食べながら読んでいた。

 もう一度自分のステータスを確認する。


≪名前≫永倉勇也

≪種族≫人族

≪年齢≫16

≪身長≫168cm

≪体重≫58kg

≪体力≫12

≪攻撃力≫15

≪耐久力≫12

≪敏捷≫12

≪知力≫10

≪魔力≫18

≪精神力≫16

≪愛≫0

≪忠誠≫0

≪精霊魔法≫火:94 水:6 風:85 土:15

≪スキル≫食用人間:捕食者の旨いと感じる味になり、肉体の再生に捕食者の寿命を使用できる。

 鑑定:あらゆるものの情報を読み取る。


 休息していたのと、少しは腹が満たされたおかげで、体力は完全に回復している。

 本格的に魔法を試すのは明日にするとしても、ちょっとは確認しておきたい。じゃないと、気になって眠れそうもなかった。


 だけど、改めて自分のステータスを確認してみると、どうやら僕は魔法使いに向いているらしい。ステータスの中で魔力が一番高く、次いで魔法の威力に関係があるという精神力が高いのだ。あれ? 知力は関係ないのだろうか……。

 まぁ、それは置いておいて、僕が魔法使いに向いていそうだというのは良いのだが、ステータスの精霊魔法は、おそらく適性とか親和性とかの度合いを表しているのだろう。

 おかしくないか?

 火と風はやたら高いのに、水と土がやたら低い。

 何だか性格に問題があると言われている気分だ。


 まあいい、試してみよう。

 まずは一番苦手そうな水から試してみようと思う。

 苦手な属性を使うと最悪死ぬらしいが、僕の魔力は他のステータスと比べても高く、それに使うのは入門編の魔法だ。恐らく大丈夫だろう。

 折角だから、飲んでちょっぴり減った、水の入っている皮袋に向かって試してみる。上手くいけば、今後水に困ることはなくなるだろう。


 意識を集中する。

 血の流れを意識し、そこに魔力が循環していると考える。


「水よ、潤いをもたらせ」


 僕の体から紫色の靄みたいなものが立ち上ってきた。

 そして、それがごっそりと消えていく。四分の一近くは消えて行ったように見える。

 刹那、皮袋の中に水の流れる音がした。


 チョロチョロチョロ。


 えっ、終わり?

 皮袋の中を確認するが、量はほとんど変わっていない。若干増えたかな? と思う程度だ。

 鑑定を使って魔力を確認してみる。


≪魔力≫13/18


 ……思ったよりだいぶ減っている。

 うーん、水魔法が使えれば飲料水の問題は解消されると思ったのだが、これは別の手段を探した方が良いかもしれない。

 土魔法についてもそんなに変わらなさそうだ。

 最近の異世界物のトレンドは土魔法だというのに。


 一応土魔法も試してみる。


「土よ、形を成せ」


 掌の上に小さなお猪口が現れた。

 イメージしたのはお茶碗サイズの皿だったのだが。

 消費魔力は、


≪魔力≫9/18


 水魔法よりは少し低い程度だろう。

 だけど、入門魔法二つで半分も魔力が削られてしまっていた。


 僕は一つ溜息を吐いて横になった。

 もう今日はこれ以上魔法を使わない方が良いだろう。

 うん、使いたくない。

 それに魔力を使うと、どうやら眠くなるらしい。心地良い程度の睡魔が訪れていた。


「お休み、ゴブぞう」


 僕はゴブぞうに就寝の挨拶をして、そのまま眠りについたのだった。




 目が覚めても辺りは暗いままだった。

 周りの洞窟を見れば、異世界転移が夢だったという事もまず考えられない。

 それに何よりも、寒さをしのぐために抱き枕にしたゴブぞうが目の前にいるのだ。


「お早う、ゴブぞう」


 人は死ぬと冷たくなると言うが、ゴブぞうは冷たいと感じる程ではなかった。

 確かに徐々に体温が下がって行ったようであるが、生暖かいと感じるぐらいの暖かさは残っている。

 おかげで、こうやって暖を取れたわけであるし。


 スマホの示す時刻は朝の四時。

 ちょっと起きるには早すぎる時間だが、異世界の、しかも迷宮の中でそんなことは関係あるまい。

 それにやりたいことは山ほどあるのだ。


 僕はゴブぞうをどかして起き上がった。

 岩の上で眠ったせいで体が痛い。

 眠るときは松明の灯りの届かない、窪みの奥まで移動していたのだが、改めて松明の灯りが届く場所まで移動する。

 そこで準備体操をするように体を動かし、ステータスを確認した。


≪名前≫永倉勇也

≪種族≫人族

≪年齢≫16

≪身長≫168cm

≪体重≫58kg

≪体力≫13

≪攻撃力≫15

≪耐久力≫12

≪敏捷≫12

≪知力≫10

≪魔力≫19

≪精神力≫17

≪愛≫0

≪忠誠≫0

≪精霊魔法≫火:94 水:6 風:85 土:15

≪スキル≫食用人間:捕食者の旨いと感じる味になり、肉体の再生に捕食者の寿命を使用できる。

 鑑定:あらゆるものの情報を読み取る。


 お、昨日より少しずつステータスが伸びている。

 魔力もちゃんと回復しているし、これなら昨日の続きができそうだ。

 早速、魔力の流れをイメージする。

 そして、


「風よ、音を集めよ」


 途端に、こちらに向かってひたひたと近づいてくる足音が聞こえてくる。

 どうやらこの窪みに近づいて来ているまぁゴブリンだろうががいるらしい。

 数は二。

 正面から挑んでも負けはしないだろう。

 今度は眠くなったりもしていない。


 それにしても、やはり窪みで眠るのは危ないのかもしれない。

 これも何か方法を考えなくてはいけないだろう。

 とりあえず今はゴブリンの迎撃だ。


 僕は外に飛び出して、ゴブリンに対峙した。

 二匹のゴブリンは現れた僕に対し、武器を構え……ないで、


「「ギガガ!」」


 武器を掲げて声を上げてきた。


 ……。


 ゴブリン二匹が目を合わせる。

 そして、また僕に向かって、


「「ギガガ!」」


 ……。


「ぎ、ぎがが?」


 ゴブリン達は満足そうに頷くと、そのまま僕の横を素通りして行ってしまった。


「何だ、今の……?」




 それから一時間後、僕は松明の下で読書をしながら魔法の実験をしていた。


「風よ、音を集めよ」


 消費魔力は二だ。


「火よ、明りを灯せ」


 消費魔力は同じく二である。

 もう一度試してみよう。


「「「ギガガ!」」」

「ギガガ。火よ、明りを灯せ」


 やはり、二である。

 だが、若干風魔法より減っていない気がするのだ。

 何度か試せばわかるかもしれない。

 そう思い、一度魔力が回復するのを待って、連続で呪文を唱えてみることにした。


「火よ、明りを灯せ」


 やはり二だ。


「火よ、明りを灯せ」


 二。


「「ギガガ!」」

「ギガガ。火よ、明りを灯せ」


 やはり二。


「火よ、明りを灯せ」


 あれ? 今度は一しか減らなかった。


 うん、どうやら小数点以下でも減っているらしい。

 通算四連続火魔法を使ったことによって、やっと気付いた。

 おかげで僕の周りは、人玉のように浮かぶ炎のせいで眩しくってしょうがない。


 そんな中にゴブリンが四匹連れ立って近付いて来る。

 そして、やはり口々に「ギガガ!」と声を掛けてきて、僕が「ギガガ」と同じように返すと、満足して去っていく。

 さっきからずっとこの調子である。

 出会うゴブリン全てがなぜか僕を見ても襲いかかってこず、恐らく挨拶と思われる鳴き声を発して去っていくのだ。

 初めは何でだかさっぱりわからなかったが、もしやと思い自分の臭いを嗅いでみて気が付いた。

 ゴブリンくせぇ。

 元々自分の体臭は気になっていたが、今はそんなのが可愛く思えるほど臭いのである。もうこれは制汗剤でも、どうにもならないレベルだと思う。

 きっとゴブぞうと一夜を共にしたことで、すっかり臭いが移ってしまったのだと思う。字面にすると非常に危険な感じがするが。

 ともかく、そんな臭いのせいで、どうやらゴブリンどもは僕を仲間と勘違いしているらしい。


 まぁ襲い掛かって来ないならそれでいいのだ。

 元々僕だって好戦的な性格というわけでもないのだし。……多分。

 それに殺害を繰り返すのは、僕の精神衛生上よろしくないだろう。へし折りたくてうずうずしている自分がいるのが、何よりもの証拠である。


 それでも先に進めば、ゴブリン以外のモンスターも出てくるはずである。そうなった時にちゃんと戦えるよう、魔法は習得しておくべきだろう。

 まずは火属性の初級魔法だ。


『ファイアボール』


 最も有名であり、火属性の初級魔法の代名詞と呼んでも過言ではない。

 あの冊子に書かれていた火属性の初級魔法がこれであった。

 早速壁に向かって手を突き出し、魔法を放つ準備をする。

 周りに人とゴブリンがいないことも確認し、準備完了だ。

 意識を集中して、体に魔力を流す。

 だいぶ慣れてきたおかげか、実際に魔力が流れているのを感じられるようになった。

 よし、


「火よ、我が敵を焼け。【ファイアボール】」


 手の中にソフトボールサイズの火球が生み出される。

 触れているのに不思議と熱くはない。

 あとは壁に向かって、と思った瞬間、


 ボトッ。


 ファイアボールが地面に落ちた。

 刹那、目の前で炎が燃え上がる。


「のわぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ」


 僕は横っ飛びで回避して、さらにゴロゴロと地面を転がる。

 燃え移っていない。ぎりぎりセーフだ。

 炎は岩の上で激しく燃え上っていたが、周りに燃料となるものがなかったためか、しばらくして自然に鎮火した。


 何だったのだろう。

 まさか術に失敗したのだろうか。火の親和性はやたら高いというのに。

 いや、そういえば初めはファイアボールに触れることができていた。つまり、僕が触れている分にはただの球であり、どこかにぶつかった瞬間に熱を持った炎として燃え上がるということだろうか。

 よし、もう一度試してみよう。

 今度は手を壁に向けて伸ばすのではなく、掌を上に向けておく。


「火よ、我が敵を焼け。【ファイアボール】」


 掌の上にファイアボールが現れた。

 しばらく持ち続けてみても熱くならないし、何も起きない。

 というか、心臓にすごく悪いのだが。

 しかし、このまま放っておくと、消えてしまいそうな気もする。

 入門編の火の灯りは、三十分ほど空中を漂うと消えてしまった。ちなみにあれは初めから熱を伴っていたから、熱くて持てない。

 スマホを取り出す。

 すでに一分経ったとして、これからどれぐらい持つのだろうか。


 スマホを出してから四分後、手に持っていた火球は完全に消えた。

 どうやら五分もすると消えてしまうらしい。

 最後にもう一度ファイアボールを出し、壁に向かって投げつけた。

 ファイアボールが着弾し、壁が激しく燃え上がる。

 やはり掴んで投げつける魔法のようだ。

 何だかこれだと野球部員が有利な魔法な気がする。僕はコントロールにも遠投にも大した自身はない。射的とか、エアーガンとかの命中率は自信があるのだけど。

 だけど、それだとどこぞの眼鏡少年のようだ。苛められていて射的が得意とか、キャラが丸被りである。


 そんなくだらないことを考えている場合ではなかった。

 ステータスを確認するのを忘れている。

 慌てて自分に鑑定を唱えた。


≪名前≫永倉勇也

≪種族≫人族

≪称号≫ゴブリンの友

≪年齢≫16

≪身長≫168cm

≪体重≫58kg

≪体力≫13

≪攻撃力≫15

≪耐久力≫12

≪敏捷≫12

≪知力≫10

≪魔力≫6/19

≪精神力≫17

≪愛≫0

≪忠誠≫0

≪精霊魔法≫火:94 水:6 風:85 土:15

≪スキル≫食用人間:捕食者の旨いと感じる味になり、肉体の再生に捕食者の寿命を使用できる。

 鑑定:あらゆるものの情報を読み取る。


 魔力は入門編の時に使った分の七と、今の初級魔法で六、つまりファイアボールは一回につき三ほど減るらしい。小数点以下のせいで正確に把握できないけど。


 ん? それよりも何か変な項目が増えていなかったか。


≪称号≫ゴブリンの友:ゴブリンに仲間だと認識される。ただし、ゴブリンに友情は存在しないので注意。


 まさか異世界に来て初めての友達がゴブリンだとは思わなかった。しかも友情の存在しない友とはこれいかに。

 しかし、これでより一層ゴブリンを襲い辛くなってしまった。

 仲間だと思っている相手を襲うなんて、そんな外道なことは出来ない。

 正直腹が減って我慢できなくなったら、襲うと思うが。それに本当に仲間というわけでもないし。


 しかし、いつまでもここにいるわけにはいかなかった。

 今ではゴブリンよりも僕にとって害悪となった、クラスメイトという同種の仲間にいつ追いつかれるかわかならない。

 さっさと荷物とゴブぞうをまとめて出発しよう。


 ゴブぞうに荷物を背負わせて、僕がゴブぞうを背負う。

 少々重いが、まだこれぐらいならなんとでもなりそうだ。

 こうして僕はまだ見ぬ二階層へと向けて出発したのだった。


 だけど、実は僕の後ろからついてくる者がいた。

 壁に身を隠しながら、こっそりと。

 それはゴブリンでありながら、他のゴブリンとはどこか異なる存在であった。その行動も、その見た目も。

 僕はこの時、その追跡者の存在に……気付いていた。

 なんか変なのがいるなと。

 どう見ても脅威ではないから放っておいたのだ。


 だが、この者との邂逅が僕にとって大きな変革をもたらすことになるなど、その時に気付くことはさすがにできなかったのだ。


次回(明日)、新キャラ登場です。

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