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異世界迷宮に転移したら、僕はみんなの食糧でした。  作者: 捨一留勉
第五章 旅立ちと新たな出会い、そして再会
58/114

第五十五話 空中散歩

※評価&ブクマ有難うございます!


※前話、勇也のステータスですが、≪敏捷≫34→43に訂正しました。


「じょ、冗談だろ? 旦那?」

「至って真面目ですが」

「暴君って、あの暴君だよな?」

「僕が知っているのは、あなたたちをかなり巨大にしたような奴のことです」


 彼女は深々と溜息を吐き、天を振り仰いだ。

 勇也に忠誠を誓っているとはいえ、命は無駄にしたくなかったのだ。


「わかった。旦那がやるというならやろうじゃないか。……はぁ、折角『黒帝』がいなくなって、やり易くなったと思ってたのによ」


 しかしやはり断ることは出来ない。彼女は勇也に忠誠を誓っているのだから。


「クイー」

「クー」

「クエー」

「クオー」


 他の四体もわかったというように返事をする。

 勇也はニコニコと笑いながら頷き、五体に向かって『鑑定』を発動させた。


≪名前≫なし

≪種族≫ドラゴニクス(変異種)

≪称号≫狡猾な略奪者

≪年齢≫14

≪身長≫201cm

≪体重≫59kg

≪体力≫29

≪攻撃力≫27

≪耐久力≫30

≪敏捷≫27

≪知力≫14

≪魔力≫20

≪精神力≫12

≪愛≫80

≪忠誠≫50

≪精霊魔法≫火:31 水:69 風:47 土:53

≪スキル≫擬態:周りの風景に擬態できる。


 勇也の最大の能力である『食用人間』であるが、今まで勇也はクロに食い殺され、凜華に片腕を食われ、同じく凜華に食い殺され、そして今回は狡猾な略奪者と呼ばれる彼女と、その妹たちに食い殺されたわけである。

 その中で一つだけ違いがあった。

 凜華に片腕を食われた時だ。

 あの時凜華は三年歳を取ったのだが、他は全部五年である。つまり勇也が命を失うかどうかで、奪う寿命の長さが異なるようだった。

 ステータスもどうやら条件は同じらしい。命のやり取りがあって、勇也は相手のおそらく一番高いと思われるステータスの一割ほどを、奪い取ることが可能のようだ。


 他の四体についても結果は同じであった。


≪名前≫なし

≪種族≫ドラゴニクス

≪年齢≫14

≪身長≫201cm

≪体重≫59kg

≪体力≫28

≪攻撃力≫28

≪耐久力≫28

≪敏捷≫26

≪知力≫11

≪魔力≫19

≪精神力≫9

≪愛≫60

≪忠誠≫30

≪スキル≫擬態:周りの風景に擬態できる。


≪名前≫なし

≪種族≫ドラゴニクス

≪年齢≫14

≪身長≫201cm

≪体重≫59kg

≪体力≫30

≪攻撃力≫25

≪耐久力≫29

≪敏捷≫26

≪知力≫11

≪魔力≫19

≪精神力≫10

≪愛≫60

≪忠誠≫30

≪スキル≫擬態:周りの風景に擬態できる。


≪名前≫なし

≪種族≫ドラゴニクス

≪年齢≫14

≪身長≫201cm

≪体重≫59kg

≪体力≫28

≪攻撃力≫26

≪耐久力≫28

≪敏捷≫27

≪知力≫11

≪魔力≫19

≪精神力≫11

≪愛≫60

≪忠誠≫30

≪スキル≫擬態:周りの風景に擬態できる。


≪名前≫なし

≪種族≫ドラゴニクス

≪年齢≫14

≪身長≫201cm

≪体重≫59kg

≪体力≫28

≪攻撃力≫26

≪耐久力≫30

≪敏捷≫26

≪知力≫11

≪魔力≫19

≪精神力≫10

≪愛≫60

≪忠誠≫30

≪スキル≫擬態:周りの風景に擬態できる。


 四体ともステータスは似たり寄ったりだ。

 特徴に少し違いはあるようであるが。

 その四体は甘えるように勇也の元に近寄り、体を擦りつけてくる。その時に、いつの間にか回収したらしいエカレスも、勇也に渡された。

 これが人間の女であれば、勇也は拒んだであろうが、勇也はクロが甘えて来るとの似たようなものだと思い、特に嫌がる素振りを見せていない。


「それにしても、名前が無いんですね」


 五体にはすべて名前が無かった。

 不便でありそうなのだが、姉妹は名前が無くて困るということは無かったのだ。

 しかし、当然勇也は不便である。

 そこで彼は名前を付けることにした。


「えーっと、貴女はツヴァイ」


 長女を指差して勇也は言った。


「貴女はドライ、貴女はフィアー、貴女はフュンフ、貴女はゼクス」


 さらに他の姉妹たちにも次々と指を差し決めていく。

 彼女たちは全員赤銅色の皮膚を持っているのだが、それぞれに特徴があった。

 ツヴァイと名付けられた長女は、この中で唯一人語を操り、ショートパンツとサスペンダーという特徴のある見た目をしているので、当然簡単に見分けられる。

 他の姉妹たちには、主に模様の違いがある。

 ドライはオレンジのラインが体の横に走っており、フィアーは鮮やかな赤の縞模様が体にある。フュンフは他の姉妹たちと比べ、体色が薄く朱色に近い。ゼクスは長女と見た目が大して変わらないのだが、左目の横に長い傷が走っていた。


「ふーん、その名前には何か意味でもあるのかい?」

「ドイツ語という言語で、二から六です」


 安直ではあるが、それをツヴァイは気にしていなかった。

 彼女にはそれよりも気になることがある。


「一は?」

「一は僕ですよ。ちなみにアインといいます」


 そこまで言うと、勇也は再び壊れたように笑い始めた。

 勇也は某恐竜映画をネタにしているのだが、それを知らない彼女たちは反応のしようがなかった。ただ困惑し、自分たちの主が笑い止むのを待つだけだ。


 勇也はひとしきり笑うと、最後に呟く。


「くふふ。アナ、君の障害は僕が全部取り除いてあげるからね」


 そんな勇也の様子を、ツヴァイは黙って見詰めていた。

 自分たちの主の精神は、狂気に満ちている。彼女はとっくにそれに気付いていたが、逃げ出すことはもちろん、どうすることもできなかった。

 彼女はすでに勇也の下僕である。

 スキルで刻み込まれた忠誠心は、簡単に消すことのできるものではないのだ。今の彼女にできるのはせいぜい意見を言うことぐらい。それが通らなくとも、勇也の命令には絶対に従わなくてはいけなかった。


「さて、暴君はどこにいるかわかりますか?」


 ツヴァイは首を捻って考える仕草をし、口を開いた。


「アイツの行動範囲は広い。川で餌を取っているか、どこかの密林で餌を取っているか、じゃなかったらあの山で休んでいるだろうな」


 ツヴァイの指差す先には確かに山があった。

 といっても、密林の間から少し顔を出している程度で、そこまで大きなものではない。

 川から少し離れており、今いる草原からも少し離れているが、今の勇也であれば難なく辿り着くことができるだろう。


「わかりました。では、あの山に行ってみましょうか」


 勇也はそう言って地面を蹴る。

 早速手に入れた翼で移動してみることにしたのであった。

 勇也の翼は魔法を発動させる装置でもあり、羽ばたかなくても宙に浮いていることができた。

 簡単に上空まで飛んで行くことができ、そのまま移動することもできる。

 勇也は空からその山を目指し、その後をドラゴニクスの姉妹が追った。


「旦那、あんまり高く飛んでいると魔物に見つかるぜ!」


 ツヴァイが、高速で飛んで行く勇也の後を必死に追いながら声を掛ける。


「くふふ、別に構いませんよ」


 そう言って勇也は、エカレスを構えた。


 草地は、歩けば半日はかかりそうなのであるが、能力が大幅に向上し空すら飛べるようになった勇也には、大した距離ではなかった。

 五体のドラゴニクス達も、自分たちの庭である草地帯を苦もなく走って行く。それでも飛ぶ勇也の速度は速く、必死に追いかけなくてはいけないが。

 勇也はぐんぐんと草地の上を進んで行き、あっという間にまた密林の中へと入って行った。


 草地にいた時は獲物を見つけられなかったが、密林にまた入ると、様々な魔物の気配がある。

 勇也はそれを敏感に感じ取り、弱い魔物だろうと強い魔物だろうと関係なく刈り取って行った。

 ホブゴブリンやハイオーク、カニバモスキーなどを次々と殺していく。

 それは最早狩りとは呼べない。殺戮だった。

 ツヴァイに「別に構わない」と勇也は言ったが、むしろ見つかることを望んでいるのだ。


 ツヴァイはそれを驚愕の面持ちで見つめる。

 自分たちが勇也を襲った時よりも、今の彼は明らかに強くなっていた。

 探知能力も高く、ツヴァイが見つけることのできなかった魔物ですら勇也は見つけ出し、根こそぎその命を刈り取った。


 ズガァァァンっ! ズガァァァンっ! ズガァァァンっ!


 密林の間を銃声とは思えないほどの轟音が響き渡る。

 初めは移動しながら狩りを行っていたのが、いつの間にか逆転してしまっていた。


「あははははは! もっとかかってきなよ! 僕はここにいるよ!」


 勇也は大声で自分の存在をアピールするが、勇也を襲おうとする魔物は現れなかった。

 もうその時には、勇也がただの餌ではないことに、この密林に住む魔物たちは気付いていたのである。

 餌のふりをして命を刈り取る。

 ここら一帯に住む魔物たちは、勇也をそのような邪悪な魔物だと認識していた。


 勇也は周りを見回して首を傾げる。

 近くに魔物の気配がまるでなかった。


「まぁ、いいか。大丈夫だよ、アナ。君の敵になりそうなのは、あのでかいトカゲくらいだから。くふふ」


 勇也はまた一人微笑んで、暴君が(ねぐら)にしているという山を再び目指して飛んで行く。


 ツヴァイはその様子を見て、これなら暴君を倒すこともできるかもしれないと考えた。

 だが同時に思う。

 自分は一体“何”に忠誠を誓ってしまったのか、と。



※ご覧いただきありがとうございます。次話はまた不明ですが、出来れば一週間以内にはあげられたらいいなぁ、と思っております。

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