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異世界迷宮に転移したら、僕はみんなの食糧でした。  作者: 捨一留勉
第五章 旅立ちと新たな出会い、そして再会
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第五十四話 またハーレム

感想&評価&ブクマ有難うございます!

何とか間に合いました。


≪名前≫なし

≪種族≫ドラゴニクス(変異種)

≪称号≫狡猾な略奪者

≪年齢≫9

≪身長≫198cm

≪体重≫58kg

≪体力≫27

≪攻撃力≫25

≪耐久力≫28

≪敏捷≫29

≪知力≫14

≪魔力≫18

≪精神力≫12

≪愛≫120

≪忠誠≫0

≪精霊魔法≫火:31 水:69 風:47 土:53

≪スキル≫擬態:周りの風景に擬態できる。


 それは地竜の一種だった。


 勇也に放った攻撃はスキルではない。

 竜種が持つ内蔵魔法、竜の息吹(ドラゴンブレス)である。


 右手を丸々失ったそれが、勇也を爬虫類の縦長の瞳孔で見つめている。

 爬虫類の表情というのは、よくわからないのであるが、腕を奪われて怒っているというのは間違いなさそうだ。


「何で罠だと分かった?」


 しかし意外と冷静に、状況を分析してくる。

 それは、それだけ彼女の知能が高いという事でもあるのだが、同時に余裕を感じさせる態度でもある。事実、状況はお互い腕を失った状態で、拮抗しているようにも見えるが、彼女には余裕があったのである。


「くふふ、別に罠だなんて気付きませんでしたけど?」


 そして勇也もまた落ち着いていた。

 状況的に見れば、勇也の腕はすぐにでも生えて来るであろうし、余裕があるようにも見えるだろうが、勇也の場合はそういうわけではない。

 単純に、自分の命に固執していなかったのだ。


「アンタ、頭イカれてんな」


 彼女がそう言ったところで、勇也の腕が元に戻り始めた。

 彼女はその様子を驚愕の表情で見つめる。


「スキル持ちか、厄介な奴だ……。だけどあの奇妙な武器は奪った」


 それでも勇也を危険な相手と判断した彼女は、早々に手札を切ることにした。


――QAAAAA!


 天に向かって鳴き声を上げる。

 すると、草叢からガサゴソと物音が聞こえ、すぐに彼女たちは姿を現した。

 それはショートパンツとサスペンダーこそ着けてはいないが、彼女と同じ地竜、ドラゴニクスであった。それが新たに四体姿を現す。

 彼女たち五体は姉妹。群れで狩をする魔物だったのだ。


――QIIIII。

――QUUUUU。

――QEEEEE。

――QOOOOO。


 四体が揃うと同時に、勇也の腕は元に戻った。


「ああ、アナ。やっと良さそうな奴らが出てきたよ。あははははは」


 長女であり、この中で唯一人語を操れる彼女は、勇也の言動に寒気を感じていた。

 先程から不気味に笑い、人族は比較的助け合うというのに、この男はそれをしない。まともな神経をしていないのか、それとも精神をやられているのか。

 だが、どちらにせよ、餌にする分には変わりなかった。

 だからとっと食い殺してしまおう、そう考えていた。無論、それが勇也の狙いだとは気づけるはずもなく。


 五体は勇也を円になって取り囲む。

 あとは彼女の号令一つで一斉に襲い掛かるだけだ。

 だが、その前に勇也が動いた。

 躊躇うことなく真っ直ぐ彼女に突っ込んでいったのだ。

 しかし彼女とて警戒していなかったわけではない。

 勇也が襲い掛かって来るのにしっかりと反応し、彼女は危なげなくそれを回避した。

 それでもその動きは人族にしては異常に速く、少し肝を潰す羽目にはなったのだが。


――QAAAAA。


 攻撃を外した勇也に、隙が生まれたと判断した彼女は合図する。

 すると、勇也を取り囲んでいた妹たちは、一斉に勇也に襲い掛かった。


 二体が同時に勇也に食らいつく。

 勇也の左腕と胴体だ。

 勇也は右手で胴体に食いついた一体を殴り飛ばし、左腕に食いついた一体は、力任せに振り回して投げ飛ばした。

 だがすぐさま、他の二体が勇也の右腕と左腕に食らいつく。


「くふふ、あははははは!」


 圧倒的不利。

 そんな状況でも勇也は狂った笑いを上げた。本当に楽しくて仕方がないというように。

 それを聞いた彼女は怯みそうになるが、妹たちが作ったチャンスを潰すわけにはいかない。

 彼女は勇也に突進し、そのまま引き倒す。

 勇也は三体の地竜に地面に押さえつけられ、身動きが取れなくなった。


 それでも彼は笑顔だった。

 そんな勇也の様子を、彼女は目を細めて見つめる。

 その目が物語っているのは、忌々しさか、それとも薄気味悪さか。

 彼女はそれ以上観察するのをやめ、勇也の右足に食らいついた。


「がぁぁぁぁぁっ!」


 勇也の絶叫が響き渡る。

 それに気を良くした彼女であったが、その気分はすぐに害されることになった。


「ハンプティ・ダンプティ塀の上、

ハンプティ・ダンプティ落下した♪」


 歌だった。

 勇也は食われながら歌い始めたのだ。

 魔物の彼女からしてみても、食われながら歌う人族というのは気味が悪い。

 母親だったり、おそらく恋人だったり、誰かの名を呼びながら死んでいく冒険者はままいる。許しを請うものもいる。罵倒しながら食われるものもいる。ただ泣き叫んで死んでいくものだっている。だけど、歌いながら食われるものは初めてだった。


 腕に食らいついていた二体が勇也の腕を食いちぎる。

 それでも勇也は、食いちぎられる瞬間こそ叫び声を上げるが、すぐにまた歌い出す。


「兵隊治しにやってきた。

 だけど元には戻らない♪」


 さらにもう二体も合流し、勇也を喰らった。

 勇也はすでに虫の息である。

 もう放っておいても死ぬであろうし、ここまで食われれば回復することもないだろう。彼女はそう思い安堵したのだが、勇也が自分を見る眼差しに気付き、凍りついた。

 勇也は笑っていた。

 彼はずっと笑っている。戦い始めた時も、形勢が不利になった時も、食われている時も、こうして死を前にしても。暗く輝く瞳で。

 自分たちが追いつめている。もうこの男はすぐに死ぬ。そのはずなのに、彼女は意味も分からず恐怖した。


 彼女は恐怖に突き動かされ、勇也の喉元を食いちぎったのだった。

 そしてようやく勇也の瞳は光が消える。

 だがもちろんそれで終わりではなかった。

 勇也を食べ終わった彼女を激痛が襲う。


(ぐっ、まさか毒……?)


 しかし彼女にしてみれば、それは有り得ない事だった。

 毒であれば、一口食べれば毒だと気付けるはずだ。食べてみた時に、目の前の今では残骸となったものが、毒を持っているとは思わなかった。

 それに通常人族は毒など持っていない。それでも地竜に効くほどの毒を持っているなら、それはスキルだろう。そうだとするとおかしい。わざわざ遅行性の上、気付かれにくい毒なんて、何の意味があるのだろう。それでは自分の身が守れない。

 だが、毒であることに疑いの余地はなかった。

 他の四体の姉妹たちも、彼女同様に苦しんでいる。


 痛みは身を焼くような熱さとなり、彼女を苛む。

 しかも体の異変は激痛だけにとどまらず、体のいたるところから、ゴキゴキっと骨の軋むような音まで鳴っていた。

 さらに、失った腕の断面から肉が盛り上がってきている。


(どうなっている!? 俺様に何が起きてるんだ!?)


 そこで彼女は声を聴いた。


『愛と忠誠どちらを捧げますか?』


 子供の声、もしくは女の声だった。

 声は無機質にそんな事を聞いて来る。

 彼女はそんな声に従いたくなかったが、“選ばなくてはいけない”。分けもわからずそう感じた。

 愛と忠誠。捧げなくてはいけないのは、間違いなく目の前にいる人族に対してだ。

 目の前にいる人族はすでに残骸ではなく、一つの命を持った生き物だった。

 まだ意識はなく、呼吸しているのかも疑わしいが、間違いなく再生しつつある。

 この人族にどちらかを捧げなくてはいけない。

 彼女はこのわけのわからない状況に恐怖した。だがそれでも、“選ばなくてはいけない”。

 愛か忠誠、そのどちらかを。

 そして彼女は勇也に対し、忠誠を誓ったのだった。




 勇也が目を覚ますと、五体の地竜が彼を見守っていた。


「おう、旦那。目が覚めたかよ」


 声は可愛らしいのに口の悪い地竜を、勇也はじっと見つめる。


「くふふ、ええ、新しい僕の従僕さん」


 勇也は微笑んでそう言った。


「あー、ところで一つ聞いていいか?」

「ん?」

「その背中のは何だ?」


 勇也は意味が分からず、首を傾げた。


「いや、その背中に生えている翼だよ。さっきまでそんなのなかっただろ? 旦那は人族じゃないのかい?」


 ますます頭の上に疑問を浮かべる勇也だったが、とりあえず背中を見てみることにした。

 そこで勇也は、何か黒い皮膜のようなものを発見する。それを辿って行くと、どうやら自分の背中に繋がっているらしい。

 勇也は試しに背中に力を入れてみた。勇也の力を入れるタイミングに合わせて、黒い皮膜も一緒に動いた。

 勇也はさらに力を加えて行く。

 すると、その被膜が確かに自分のものであるという事が感覚として勇也に伝わってきた。それだけではなく、勇也は背中から温かな力のようなものを感じていたのである。

 やがて、このまま飛べるという事に気付いた勇也は、地面を蹴って空に向かって羽ばたいた。


 空中に飛び上がった勇也の足元には、広い平原とそれよりもさらに広い密林地帯が広がっている。少し離れたところに、長く巨大な川もはっきりと確認することができた。

 きっと少し前の勇也なら、これで高所を恐れる必要もなくなるということもあり、自分が飛べるという事実に喜色を表しただろう。

 だが今の勇也は、ただ必要だから確認したというように、ひとしきり飛んでみせるとすぐに地上に戻ってきた。

 その表情に特に変化はなかったのだが、翼を眺め手に取って確認している内に、徐々に顔が綻んでいく。


「ああ、アナ……」


 勇也が自分の翼を見て思い出したのは、愛しいゴブリンの少女だ。

 勇也の背に突如生えた翼は、彼女の持つ翼と全く同じものだった。

 飛べるということより、最愛の女性と同じものを持ったという事が、勇也を喜ばせたのである。


「で、それは何なんだ?」

「さぁ、わかりません。あなた達に食べられるまでは生えていなかったんですが、食べられた後で急に生えてきました。僕は歴とした人間なんですけどね」


 そんな人間はいない。

 彼女はそう思ったが、口には出さなかった。

 目の前にいる男は彼女にとって主であり、口答えするべき相手ではないのである。


 彼女は納得していなかったのだが、それ以上聞いて来なかったため、勇也はそれ以上翼のことについては考えず、他のことを確認しておくことにした。

 まずは自分のステータスである。

 勇也は自分を『鑑定』した。


≪名前≫永倉勇也

≪種族≫人族(変異種)

≪称号≫ゴブリンの友

≪年齢≫16

≪身長≫172cm

≪体重≫59kg

≪体力≫35

≪攻撃力≫33

≪耐久力≫35

≪敏捷≫43

≪知力≫12

≪魔力≫39

≪精神力≫18

≪愛≫320

≪忠誠≫0

≪精霊魔法≫火:94 水:6 風:85 土:15

≪スキル≫食用人間・上質肉:捕食者の旨いと感じる味になり、肉体の再生に捕食者の寿命を使用できる。

    鑑定:あらゆるものの情報を読み取る。

    自己犠牲:自分が死ぬ時、仲間と認識した者の能力にブーストがかかる。

    自動照準(オートサイト)照準能力(エイミング)に補正がかかる。

嫉妬:嫉妬の感情に反応し、敵と認識したもののステータスを自分と同じにし、スキルを封じる。


 勇也は思わず自分の目を疑った。気が付いたらまるで別人のようなステータスになっていたのだから、それも無理はない。

 ここまで強化された勇也を倒すのは、銀の牙・ジェヴォはもちろん勇也の最強の下僕であるクロでさえ無理だろう。今まで勇也が出会った中で勇也が勝てなさそうなのは、暴君ただ一体である。


 そう考えた勇也は、普通では絶対考えないようなとんでもないことを思い付いた。


「そうだ、暴君を狩りましょうか」

「は、はぁぁぁ!?」


 この階層で名を馳せた暴君を当然知っていた彼女は、主の何気なく言ったような一言に絶叫を上げたのであった。




※そういえばジュラシックパークのシリーズに出てくるラプトルはラプトルではなく、デイノニクスだそうです。ラプトルはコヨーテサイズらしいですね。コヨーテのサイズがわかりませんが。スピルバーグ監督がラプトルという響きを気に入って、映画で使用しているらしいです。

※ストックないため、次回はまた不明です。新しい読者獲得のため、時間帯や曜日を変えてみようかと思います。

※今から活動報告を書こうかと思います。多分21時までには上がっていると思うので、今後の活動などご興味あればご一読ください。

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