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異世界迷宮に転移したら、僕はみんなの食糧でした。  作者: 捨一留勉
第三章 お別れ
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第三十三話 一触即発の危機に陥りました。

感想&ブクマ、誠に有難うございます。

 

「私たちはここに来るまでに、沢山の仲間を失ってしまったわ。それでも、困難と試練を乗り越えて、ここまで来ることができたの。

 皆、思い出したくもないかもしれないけど、あの鉄仮面の男の仲間が言っていた通り、グループ分けして進んだら、魔物に襲われる回数も減らすことができたわ。そして、ここにこうして、また生き残った皆が集まることができた。先生は、出来ればまた一緒に皆と進んでいきたいと思ってる。

 そこで、皆に改めて紹介したい人物がいます。アナベルさんよ。アナベルちゃん、お願いね」

「は、はいなのです」


 アナが少し緊張しているのか、手をぷるぷると震わせながら、口を開いた。

 こんな大人数の前で話すことなんて、ないだろうからね。


「あ、アナはアナベルと言います。アナはメイジホブゴブリーナです。メイジは魔法使いという意味で、ホブゴブリーナはホブゴブリンの雌なのです」

「え? 悪魔じゃないの」

「ゴブリンってあの緑でキモいのでしょ」

「こんな可愛くなるのか?」


 辺りがざわざわとし出した。

 まぁ、無理もない。

 毎度思うけど、こんな美少女がゴブリンと同種と言われても信じられないだろう。


「あ、あと、アナはユーヤの将来のお嫁さんなのです」

「「「ユ、ユーヤって誰だ??」」」


 うん、まぁ、しょうがない。

 日本にいた頃に、下の名前で呼ばれたことなんてなかったし。


「永倉のことだ」

「「「ええ!?」」」


 イケメンが補足すると、まだ知らなかった連中の絶叫が広間内に木霊した。

 それにしても、今それ言う必要あったのかな?

 視線が僕に集中する。


「こんな可愛い子が永倉と?」

「有り得ないだろ……」


 茫然とした声が聞こえてくる。

 はっはっはっはっはっ、ざまぁ見ろ。

 妬め、妬め。

 ……いや、どっちかっていうと、信じてないっぽい。


「あ、それと、よく聞かれるので先に答えておきますが、アナはすでにユーヤと交尾している仲なのです。だから、ユーヤに手を出すのは駄目なのです」

「「「ハァ!!?」」」


 それは言う必要なかったでしょ!

 今度こそ、妬みの視線と、何かゴミでも見るような視線が僕に集中した。

 アナ、安心して。

 こいつらにとって僕はゴミらしいから。


「話が脱線してしまったのです。アナが皆様にお話ししたいことは、皆様の能力についてなのです。皆様のステータスを確認させていただいたのですが、はっきり申しまして、身体能力は一般人以下なのです」


 アナって、前から思ってたけど、思ったことをズバズバ言うよね。

 ほら、ほとんど全員落ち込んじゃってるじゃん。


「ですが、スキルはとても秀逸な物ばかりなのです。スキルを使いこなせるようになれば、戦うと休むを交代して、全員で先に進むことも可能だとアナは思います」


 なるほど、ローテーションを組めばいいっていうことか。

 確かに全員揃った今、スキルはより取り見取りだし、前衛と後衛のバランスもいい。

 今度こそバランス良くパーティーを組んで、パーティーごとに交代で戦闘と休憩に別れる。そうすれば、あの強力なスキルの持ち主たちだ。魔物に連続で襲われても、何とかなりそうな気がする。

 という事は、僕はきっと後衛をやらされるだろう。

 アナはステータスが高いけど、近接戦闘なんてできなさそうだし、やっぱり後衛だろうな。

 違うパーティーになったら嫌だな、などと考えていたけど、それは杞憂で終わった。

 最悪の形で。

 いや、そもそも僕が誰かと群れることなんて、出来なかったんだ。


「そういえば、先生たちの能力って何なんですか?」


 そう言い出したのはイケメンである。

 その質問は必要なものだ。これから全員で行動して、パーティーを組んでいくんだから。

 凜華はおそらくヤンキー茶が事前に教えていたのだろう。凜華だけは飛ばされて、委員長たちがそれぞれ能力を話していく。

 気功を操れるが、大して威力は無い『道士』、『反射』に『硬化』、『消費軽減』、無駄に名前はカッコいい『韋駄天』、そして謎能力の『液体人間』だ。スキルの説明だけ見れば、肉体を液体化させられる、としかわからない。

 六人の説明が終わると、イケメンの表情は引きつっていた。

 うん、まぁ、言いたいことはわかる。僕も同じことを思ったから。

 イケメンはその表情のまま、僕を見た。


「それと、永倉の『食用人間』だったか。その、一体どういう能力なんだ? まさか、魔物を呼びやすくなるとかじゃないよな」

「は? ちげーし。むしろ、勇也きゅんはぁ、アナベルちゃんに仕込まれてるから、気配隠すのとか上手いもんね」


 凜華がフォローしてくれる。

 まぁ、確かに凜華の言う通りだ。

 僕はアナに仕込まれている。

 でも、熱で感知するグラコンダとか、匂いで感知するヘルハウンド相手には、意味ないけどね。


「それにぃ、『自動照準(オートサイト)』が付いているから、射撃も上手いしね」

「は? 何それ? そんなん付いてる?」

「うん、付いてるよ、勇也君。気付いてないみたいだから言わなかったけど、その、何ていうか、一度ちゃんと見た方が良いと思うの」


 委員長にも言われてしまい、僕は頷くより他なかった。

 確かに、最近人のばっかり見てて、自分のは見てなかったからな。

 アナも同様らしく、僕を見て首を傾げている。

 後でお互い確認し合おう。


「そいつは沖田なのか……。で、結局、『食用人間』って何なんだ?」


 ちっ、凜華が上手く誤魔化してくれたと思ったけど、煙に巻けてなかったか。


「食べると美味しいみたいです」

「そ、それだけなのか?」


 人から見たら、それ以外わからないらしいし、これでいいだろう。

 と思っていたのだが、僕の天使が爆弾を放り投げてしまった。


「もう、なんでユーヤはそうやってすぐに誤魔化そうとするのですか? ユーヤを食べると、食べた者はユーヤの従魔(サーヴァント)になるのです。しかも、食べた相手の寿命を使って肉体を補填できるのです」


 どうです? 凄いでしょ? と言うように、アナが無い胸を、否、人と比べたらちょっと小さいけど、芸術品のように美しい胸をそり返した。

 その仕草は可愛い。

 だけど、それは言っちゃ駄目だった。


「おい、待てよ。さっきも聞いたぞ、そのサーヴァントって言葉。一体どういう意味なんだ?」

「さぁ?」


 イケメンが首を傾げる。

 お、もしかしてサーヴァントの意味が誰もわからなければ、ワンチャンあるんじゃないか?


「確か英雄の魂という意味ではなかったでござるか?」


 違うよ?

 違うけど、ナイスだ。ピザ。

 だけど、凜華が英雄の魂になったってどういうこと?


「もう、違うわよ。皆、ちゃんと勉強しているの? 『召使い』っていう意味よ」


 先生が呆れた表情でそう言ってしまった。

 こいつふざけんなよ。

 このままうやむやにしてしまうつもりだったのに。


「ああっ!? じゃあ、凜華がこうなっちまったのは、お前のせいじゃねぇのか、永倉!? よく見たら、胸とか背もデカくなってるしよ」

「なにっ!? 沖田は永倉が支配しているってことなのか? でも、それだと沖田は永倉を食べたことになるんだが……」


 辺りがざわめき始める。

 憎悪の視線と、侮蔑の視線が僕に集中した。

 気持ちはわからないでもない。

 誰かに洗脳されるなんて、気味の良いものじゃないから。


「うっわ、やっぱり永倉って最悪じゃねぇか」

「アイツ人を洗脳できんのかよ」

「え、じゃあやたら女に囲まれてたのって……」

「そうよ、あいつが沖田さんを自分のものにしちゃったのよ」

「委員長も永倉に何かされたんだよ」

「性犯罪者かよ」

「サイッテー」


 こいつら好き放題言いやがって。

 僕はエカレスに手を伸ばした。

 だけど、こいつら全員を相手にするのは危険かもしれない。

 アナの言う通り、強力なスキルの持ち主が多数いるのだ。


「ま、待って欲しいのです。ユーヤはそんな風に人を操ったりしないのです。悪いのはユーヤを襲って食べたリンカなのですよ」

「そうよ、悪いのは全部沖田さんよ」

「う、ウチも悪いけど、クロだって同罪だかんね」

「くぅん」


 多分他人から見たら、僕のハーレム勢にしか見えないアナたちが、一斉に抗議する。

 だけど、これって逆効果じゃないか?

 うん、クラスの連中が「あー、やっぱりか」っていう表情でこっちを見てきている。


「なぁ、皆。永倉みたいな危ない奴と一緒になんていられないだろ?」


 ちっ、糸目め。


「ちょっと待って」


 しかし、扇動しようとする糸目を、水女が止めた。

 何でこいつ?

 なんか嫌な予感しかしない。


「確か、永倉、アンタ『食用人間』以外にもスキルがあるんじゃなかったっけ? 例えば、目を抉り出しても、すぐ回復するとか」

「そういえば、そんなこと言ってたな」


 ぐっ、確かにそんなこと言った気がする。失言だったか。


「アンタが役に立つ方法もあるよね。例えば私たちのスキルの実験台になるとか」

「何馬鹿なことを言ってるんだ? そんなこと出来るわけないだろ」


 イケメンが水女に非難の声を上げた。


「でもさ、永倉はもう沖田さんに自分のスキル使ってるじゃない」

「それは……」


 イケメンが言葉に詰まる。

 だから、さっきからそれは、凜華が勝手に人の体を食べたりするからだと言っているのに、全く人の話を聞いていない。

 だけどこいつらの侮蔑と嗜虐心の表れた目を見ればわかる。僕たちの言うことなんて聞くつもりが無いんだ。

 どうする? やるか?


 クロと凜華が僕の隣立った。

 クロはともかく、凜華も戦ってくれるつもりらしい。相手は人間、しかも同級生だというのに。

 ありがとう。

 心の中でだけ礼を言って、敵を確認する。

 強敵なのは、水女と『フロッガースプラッシュ』だとかいうスキルを持つ、カエル男だろうか。

 あとの連中は大したことなさそうである。

 他の強力なスキルを持つ連中は、敵対するつもりもないようだし、心配そうな目で窺ってきているだけだ。


 僕たちと水女たちが睨み合っている中、先生が間に割って入ってきた。


「あなたたち、いい加減にしなさい。これは子供の喧嘩じゃないのよ。スキルなんて使って戦ったりしたら、死人が出るかもしれないわ。永倉君も、もしかしたらアナベルちゃんが巻き込まれて命を落とすかもしれないのよ」


 そうか?

 いや、そうかもしれない。

 アナを失うのだけは耐えられない。


 ならもう選択肢は一つしかない。

 初めに選んだ道を、また選び直すだけだ。

 それにもう僕は一人じゃない。


「もういいです。僕はここを出ていきます。さぁ、アナ行こう」


 僕はそう言いつつ、宝箱部屋の出口に向かって歩き始めた。


 アナは振り返ってクラスの連中を見ている。

 もしかしてアナは、人間に囲まれて幸せだったのかもしれない。自分も人間と同じように扱ってもらえて。

 だけど、ごめん。僕はそこにはいられないんだ。


 クロと凜華は当然のようについて来ようとしていた。

 僕にも否は無い。


「待って勇也君、私も行くから」

「待ちなさい今野さん、貴女はこのクラスの委員長でしょ?」

「そうよ、委員長。委員長が行くことないでしょ?」

「委員長、待てよ! 皆を見捨てて永倉なんかと一緒に行くつもりかよ!?」

「見捨てて……?」


 クラスの連中数人が委員長を説得する中、委員長が糸目の言葉に反応した。

 委員長が冷たい視線で糸目を睨む。

 なんだろう? 恐ろしく冷たい目と雰囲気だ。

 僕まで怖いんだけど。


「勇也君に酷い事言ったり、しようとしたり、信じようとも、受け入れようともしなかったあなたたちが何言ってるの? 委員長なんかやめてやるわよ。あなたたちなんか死んじゃえばいいんだわ!」


 全員が石像のように固まった。

 僕も呆気に取られて動きがフリーズしている。


「さ、行きましょ。勇也君」

「え、あ、はい」


 委員長に声を掛けられて、ようやく僕は意識を取り戻した。


「待って下され! 俺もついて行きますぞ」


 え? なぜにピザ?


「そんな門田氏、折角生き残りこうして再び相まみえたというのに、行ってしまわれるというのか!?」

「うむ、伊藤殿。俺は永倉殿の中に漢を見たのでござるよ」


 ピザとケツアゴががっしりと抱擁し、別れを惜しんでいる。

 え? これ見てなきゃダメ?


「わ、私たちも連れて行って」


 えーっと、誰だっけ、この二人?

 あ、思い出した。確か、糸目たちに責められていたオタク女子二人だ。

 まぁ、この中じゃあ、生き辛いんだろうけどさ。

 僕が出ていくというのは、渡りに船だったのかもしれない。


「ついて来るのは構いませんけど、別に守ったりしませんからね」

「うん、大丈夫。自分の身はちゃんと自分で守れるから」


 しまった。

 つい、良いって言っちゃった。僕の目的は、アナと二人きりなることだというのに。

 でも、この二人がアイツらに囲まれて虐げられるかもしれないと思うと、どうしても放っておけなくなってしまったんだ。なんか自分を見ているような気がして。


 あとは眼鏡ツインテが行くか行くまいか悩んでいるようだった。

 まぁ、多分こっちに来るんだろうなぁ、と思っていた時である。


「アナベルちゃん、待って」


 そう言って先生がアナの肩を掴んだのだ。


「先生、僕のアナに何してるんですか? 頭から上を消し飛ばされたくなかったら、放して頂けませんかね?」

「永倉君、少し落ち着いて。あなたは本当にアナベルちゃんのことを想っているの? アナベルちゃんはあなたと一緒にいたいでしょうけど、私たちとも一緒にもいたいのよ。アナベルちゃんのことを本当に思うなら、私たちと一緒にいて」

「先生、わからないんですか? 勇也君はあの中じゃ生きていけないんですよ。アナベルさんが人間の中で生きたいという思いを持っているのは知ってますけど、それでも勇也君と一緒に生きるのが彼女の一番の幸せなんです」


 僕の代わりに委員長が先生に反論した。


「それはあなたの決めることじゃないでしょう? 

 ね、アナベルちゃん、私たちにはあなたが必要なの。わかるでしょ? あなただって私たちを見捨てたくはないでしょ?」


 そう言って先生がアナから手を放した。

 そんな風にアナを説得しようとしたって無駄だ。

 アナは僕のモノ、僕はアナのモノなんだから。


「もう行こう、アナ。これ以上話すことなんてないよ」


 僕はアナへと手を伸ばした。


「アナは、アナは……ユーヤ、お願いです。一緒に残りましょう?」


 え? 何を言っているのアナ?

 委員長も言ってたじゃないか。僕はこいつらと一緒に生きられない。

 アナだってわかってるはずだ。


「アナ、それはできない。アナだってわかっているでしょう? こいつらが僕をどんな風に思っているか、見たじゃないか?」

「確かにその通りです。ですが、先生たちを見捨てるのも正しいとは思えないのです。アナの知識があれば、四階層を進むことに役立ちます」

「そのために、こいつらに僕が酷い目に遭わせられても?」

「お願いします、ユーヤ」

「できないよ」


 僕の手は伸ばされたまま、掴まれていない。

 ねぇ、アナ。早くこの手を取って。この手はアナのために伸ばしたんだ。

 しかし、アナはいつまで経っても僕の手を掴もうとはしなかった。


「ね、永倉君、わかったでしょ? アナベルちゃんはあなた一人だけでは生きていけないの。アナベルちゃんだけじゃない。人間って弱い生き物なのよ? こうして群れなきゃ生きていけないんだから。わかったら、あなたも戻りなさい」


 違う、そんなこと有り得ない。 

 僕がアナを愛しているように、アナだって僕を愛してくれている。

 アナが僕を裏切ったりするわけないんだ。

 でも、アナは僕のことを申し訳なさそうに上目づかいで見るばかりだった。


 くそっ、くそ、くそ、くそ!

 僕一人じゃ不満だっていうのか? 僕はアナさえいればそれでいいっていうのに。

 アナの愛ってその程度のものなのか?

 僕はついに我慢できなくなって、アナに背を向けた。


「そう、永倉君はどうしても行ってしまうのね」

「アナ、どうしても来てくれないの?」

「永倉君、未練がましいのね。お互い一度離れて、自分たちの気持ちをよく整理した方が良いんじゃないかしら。

 それと、一つお願いがあるの。どうしても行ってしまうというなら、クロちゃんをアナベルちゃんの護衛に置いて行ってくれないかしら? その方があなたも安心するでしょ」


 僕はすぐ隣にいたクロの頭に手を置いた。


「クロ、アナを頼む」


 クロがそっぽを向く。

 僕の言う事を聞かないなんて、今までになかったことだ。


「クロ、頼むよ」


 僕は語気を強くして言った。


「……くぅん」


 クロが項垂れてアナの傍へと行った。


「ちょっと待って。アナベルさん、貴女、本当に勇也君を見捨てる気?」

「アナ、アナは、待って、行かないで、ユーヤ」

「貴女が来なさい」

「アナは、アナは先生たちを見捨てられません」

「そう、もういいわ。貴女の想いがその程度だったなんてね。何で私、貴女になんか負けちゃったんだろ? ねぇ、もう勇也君は私がもらっちゃってもいいでしょ?」

「そ、そんなの駄目に決まってます。ユーヤ、お願いです、行かないでください。アナを捨てないで……」


 僕はもう一度最後に振り返ってアナを見た。

 そして、精一杯微笑んだ。


「大丈夫、僕はアナを捨てたりなんてしない。ちょっと露払いをしてくるだけだよ」


 その程度の強がりを言うぐらいが、今の僕にとって精一杯なんだ。

 その言葉を最後に、僕たちは青白く幻想的な光が照らす広間を抜けて、闇へと踏み出した。


「ユーヤ、行かないで……。いやぁ、ユーヤ、ユーヤ、ユーヤ、ユーヤぁ……ユーヤぁ! ユーヤぁ! ユーヤぁ!」


 アナの叫び声が闇に木霊する中、僕たちは新たな地獄へと進んだのだった。


「あぁ、もったいないなぁ。永倉君も欲しかったんだけどなぁ」


 僕の耳に、いや、誰にもその呟きが聞き取られることも無く。



































































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 ユーヤユーヤユーヤユーヤユーヤユーヤユーヤユーヤ、ああ、愛しい、ユーヤ

 ユーヤ……ユーヤ……ユーヤ……ユーヤ……ユーヤ……ユーヤ……ユーヤ……

 ザー……ヤ………ザー……ユ……ザー……ユーヤ……ザー………………ユーヤ……

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次回8/30(水)20:00に第三十四話「赤熱の魔女にも知り合いはいる」を投稿します。タイトルは後々変更するかもしれません。

感想、質問、ダメだし、何でもいいのであれば、お願いいたします。

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