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異世界迷宮に転移したら、僕はみんなの食糧でした。  作者: 捨一留勉
第三章 お別れ
31/114

第三十話 委員長がほんの少しだけ可哀想になってきました。

ブクマ、ツイッターフォロー有難うございます。

ツイッターはまだ慣れていないので、宣伝以外してませんが、よろしければ是非。

http://twitter.com/6dRfaW5LrlBQGuh

活動報告にも載せましたが、今日から31日まで連続投稿します。

 

「よし、そろそろ行きましょうか」


 僕はその場にいる者たち全員に言って立ち上がった。

 さあ、まだ見ぬ世界へと冒険の旅の始まりだ。


「ちょっと待って、永倉君。つい五分くらい前に同じ台詞を言って、あと一時間待つって話になったじゃない。もう忘れちゃったの?」

「ちっ」

「永倉ぁ! 先生に舌打ちしてんじゃねぇよ!」


 水女がドスの利いた声で凄んできた。

 別に怖くはない。


「島村さんも勇也君にそんな態度取るのはどうかと思うけど」


 委員長が険のある声と表情で水女を威圧している。

 そういえば、何で委員長はこんなに僕を好きなんだろう?

 首を絞めたり、撃ち殺そうとしたりしたのに。

 ……Mなのかな?


「委員長、貴女も変わったね。ちょっと前まで『みんなで仲良くしよう』とか、『私たちは同じクラスの仲間だよ』とか、言ってたのに。最近じゃ、勇也君、勇也君って」

「おい、委員長を馬鹿にすんじゃねぇよ」


 さらに水女と糸目が喧嘩を始めた。

 もう一生やってればいいのにな。

 殺し合いに発展しても、糸目が瞬殺されそうな気がするし。


「もう二人とも、喧嘩しないの。先生禿げちゃうわよ」

「えっ? それは嫌です。すいませんでした」

「まぁ、確かに島村の言うことも一理あるな。なぁ、委員長、本当にどうしちまったんだよ? 永倉、永倉って。本当は永倉に何かされたんじゃないか?」


 またここで僕のせいになるのか。

 僕が委員長に何かするわけないって言っているのに。

 委員長は、今度はその厳しい表情を糸目に向けた。


「あなたたちのせいじゃない。みんなで寄って集って永倉君を苛めて。私が止めてって言っても、誰も聞き入れてなんかくれなかったし。それで挙句には命の危険だってあるのに、追い出したのよ。そんな人たちと永倉君が、ううん、私も仲良くなんかできるわけないじゃない。その上、私が守ろうと思っていたのに、再会してみたら、もうすでにアナベルさんに奪われていたのよ。本当だったら、そこに、私がいるはずだったのに」


 委員長はそう言って僕の隣にいるアナを見た。

 前よりは憎しみの籠っていない目でアナを見ている。

 どちらかというと、悲しい表情である。


 どうやら僕とアナがぎくしゃくしている間に、アナと委員長はデザートイーグル.50AEを通じて関係が改善されたようだ。

 それに、委員長にアナが傷つけられると、その分僕が委員長を嫌いになるから、気を付けているみたいである。

 なんかそう思うと委員長が哀れに見えてきた。


「委員長も、いい加減諦めて、別の恋を探せばいいじゃないですか? 選択肢が糸目君とピザ君しかないですけど」

「ふふ、私のこと心配してくれてるの? 切ないけど、ちょっと嬉しいな。あとこの二人は無理だから」

「えっ?!」

「ピザ君って……。告白したわけでもないのに、振られたでござる……」


 糸目がこの世の終わりみたいな顔をして固まった。

 ピザはちょっと遠い目をしている。

 しまった。僕のせいで僕の二の舞になっている。

 ごめんね、ピザ。悪気はなかったんだ。


「だいたい俺は、もうすでに理想の女性を見つけたのでござる」

「アナとか言ったら、撃ちますよ」

「り、理想なのだから別にいいではござらんか!

 そうではなくて、アナベルたんのような女性を理想とし、このダンジョンを脱出して可愛いケモ耳美少女かエルフ美女を探すことに決めたのでござるよ」

「獣人族と人族は戦争中なのです。それとエルフは伝説上の存在で、実在が確認されていないのです。アナの持っている本に、エルフが書いたと思われるものがあったので、実在する可能性は高いのですが」

「くっ、道のりは険しいですぞ」


 アナの言っているその本っていうのは、まさかと思うけど、あのSAN値が削られそうなやつのことかな。

 アナに聞くと、アナは頷き、「ミドルネームのラムウは、エルフが持つ名であるという伝承があるのです」と教えてくれた。

 は、まさか雷の使い手の……。


「エルフは雷の使い手でござったか」

「あ、私もそれ思った」


 ピザに眼鏡ツインテが同調した。

 この二人と考えが一緒だったとは……。

 アナは、何言ってんだこいつら、という表情で二人を見ている。

 言わなくて良かった。


「アナじゃないんなら、誰と誰とが恋愛しようが興味ありません。どうぞご自由に」

「永倉殿、いや、師匠!」


 え、何だこいつ。

 ピザが僕に真剣な眼差しを向けてきた。

 何でこいつに師匠なんて呼ばれなきゃいけないんだろう。

 僕は弟子なんか取るつもりはない。

 そもそも何の師匠?


「俺も師匠のように、亜人(デミ)ちゃんとイチャラブしつつ、ハーレムを築きたいですぞ! どうすれば師匠のようになれるのですか? 教えて下され!」


 師匠って、そういう師匠なの?

 最悪だわ、こいつ。

 ほら見ろ、全員ドン引きしてるよ。

 あのアナまでピザを冷たい目で見ているし。

 え? アナの視線がそのまま僕に向けられた、だと……。

 とんだとばっちりだよ!

 さっさと言い訳しないと、大変なことになりそうだ。


「いいですか、僕がアナとイチャラブしているのは認めますし、なんならもっとしたいぐらいですけど、ハーレムなんて築いた覚えはありません。この二人が勝手に引っ付いて来るだけじゃないですか」

「ほほう、つまり、師匠の溢れんばかりの魅力が女を引き寄せる、と」

「そんなこと言ってないですよ! いいですか、次僕のことを師匠って言ったら……」


 ズガァァァンっ!


「こうしますからね!」

「永倉ぁ! なんでお前いちいち私を撃つんだ! いい加減にしろよ!」

「島村さん、落ち着いて。でも、確かに今のは門田君が悪いわね」

「え、俺ですか!?」


 全員深く頷いた。

 僕もそう思う。

 満場一致でピザの有罪が決まり、水女がピザをボコボコにし始めた。

反射(リフレクター)』と『液体人間』では、『液体人間』が強いらしく、水女がピザをいくら踏みつけても、ダメージは反射されていないようである。

 先生の「もうやめて島村さん、門田君効いてないみたいだから。むしろ喜んじゃってるから」という言葉を聞き流しつつ、僕は一旦外の様子を見に行くことにした。


「アナ、ちょっと様子を見に行くからついて来て」

「はい、クロも行くのですよ」

「くぅん」


 クロはしかし、首を振ってそれを拒絶した。

 なぜなら僕がついて来るなと目で合図を送ったからだ。

 さすがクロは賢い。


「じゃあ、ウチが行くぅ」


 くそ、一匹馬鹿犬がいたか。


「あ、じゃあ、私も」

「お、俺も行くかな」

「えっ? みんな、気を使ってあげなよ。永倉君がハイライトのない笑顔で見て来てるよ。しょうがない、私も行こうっと」


 こいつら、鬼か? いや、悪魔だ……。

 僕が右手のエカレスをぷるぷるさせていると、アナがエカレスを取り上げ、腕に絡みついてきた。


「もう、そんな顔しちゃダメですよ」


 アナは頬を膨らませて怒る姿も可愛かった。

 天使だ。

 アナはやっぱり僕にとって天使だよ。


「えいっ」


 委員長が左腕に絡みついてきた。

 え、何してんの?

 振り払おうとして少し腕を動かすと「あっ」という甘い声と、凄まじい弾力が腕に伝わってくる。

 僕は動きを封じられた。

 さらに、


「あー、委員長ずるくね? じゃあ、ウチはぁ……よっと」


 凜華が背中から飛びついてくる。

 重っ!

 だけど何より重いのは、後頭部に乗っかる二つ物体だ。

 しかし、これはまずい。

 何がまずいって、


「ユーヤ、楽しそうですね?」


 ほらね!

 アナがハイライトのない笑顔で僕を見つめてくる。

 その表情は誰に似たんだろう?


「いいじゃん、アナベルちゃん。ウチなんて勇也きゅんのペットみたいなもんだよ」

「お願い、アナベルさん。もしも立場が逆だったら、私だって怒ると思うよ。でも、アナベルさんが私の立場だったら、どう? これ以上のことはしないから、ね?」


 凜華はともかく、委員長がしおらしくなってる。

 非常に怒り辛いぞ。

 ま、怒らないとは言ってないけどね!


「はぁ、わかったのです。ユーヤもそこまで嫌がっていないようですし」

「そ、そんなことは……」

「目が泳いでいますよ」

「……」


 くっ、正直な僕の体め!

 だけど、本当に僕が愛しているのはアナだけだ。

 アナがこの二人を殺せと言うなら、僕は躊躇うことなく殺すことができる。

 アナはそんなこと絶対に言わないと思うけど。

 だから、もし、必要だと判断したら、僕が自分の意思でやろう。

 それまではこうしていてもいいだろう。僕が巨乳に弱いのもまた事実だし……。


 僕は団子状態のまま宝箱部屋を出て行った。

 にやけて僕らを見ている眼鏡ツインテと、人殺しのような表情で僕を睨んでいる糸目が僕たちに続く。

 そしてこのタイミングで出てきてしまったことを、僕は激しく後悔した。


 出てしばらく歩いていると、寒かった洞窟内がひどく蒸し暑くなってくる。

 さらに洞窟の先から、光が漏れてきた。

 これが四階層『釜茹で地獄』への入り口である。

 まだこの先には行ったことが無い。


 アナは四階層に行ったことは無いが、赤熱の魔女から詳しく話を聞いていたらしく、なんでも、四階層では木々が生い茂り、光と熱が溢れているのだという。

 一体どういう場所なんだ?

 釜茹でっていうぐらいだから、熱いんだろうけど。

 まだ三階層であるここまで熱気が伝わってくるぐらいだし。


「誰もいないねー。ま、田中とかがいてもウザいんだけどさ」


 凜華の言う通り、異常は無しだ。

 というより、多分このまま合流することは無いんじゃないかと思う。

 二階層ならともかく、三階層は結構厳しいし、全滅しているのではないだろうか。してたらいいなぁ。


 とりあえず、一度戻り、今度こそ出発しよう。

 そう思って、僕たちは再びUターンして宝箱部屋を目指した。

 しかし、その道中、「吸血蝙蝠がたくさんこっちに向かってくるのです」というアナの注意が飛んでくる。


「前衛は私に任せて」


 眼鏡ツインテが飛び出して、盾と剣を構えた。


「後衛は私がやるわ」

「お、俺も委員長と後ろから魔法で攻撃するぞ」


 いや、委員長はともかく、糸目はそれしかできないじゃないか。あとは速い敏捷を生かして逃げまくるか。

 委員長は体にあの白い靄というか、オーラみたいなものを纏わせると、攻撃力も耐久力も上がるらしく、相手がヘルハウンドとかなら戦えるみたいだった。

 吸血蝙蝠の耐久力も大したことないから、何とかなるかもしれないけど、相手は飛んでいるわけだし、届かないだろう。

 そうなると、一番の戦力はアナだ。

 吸血蝙蝠と似たような羽がついているしね。いや、アナの羽の方が全然可愛いけど。


「ウチも後衛かな。さすがに天井近くまでは飛べないわ。勇也きゅんも?」

「いや、至近距離で撃ち殺してくる」

「永倉君って、脳筋だよね」

「そんなことは……ないと思えたらいいなと思います」


 そんなグダグダなことを言っていると、


「来ました。数は六なのです」


 アナが斜め上を指差す。

 凜華が即座にその方向に向かって魔法を放った。


「火よ、我が敵を焼け『ファイアボール』」


 命中はしなかったが、明るく照らし出されたおかげで、敵の位置を掴める。

 多分それも計算の内なんだろう。


≪名前≫なし

≪種族≫吸血蝙蝠

≪年齢≫15

≪体長≫152cm

≪体重≫13kg

≪体力≫12

≪攻撃力≫11

≪耐久力≫10

≪敏捷≫13

≪知力≫8

≪魔力≫3

≪精神力≫5

≪愛≫0

≪忠誠≫30

≪スキル≫超音波:相手の平衡感覚、距離感覚を奪うことができる。


 ステータスは大したことない。と言っても成人男性より強いみたいだけど。

 あとはスキルが厄介だけど、当たらなければどうということは無い。

 というよりも、撃たせない。


「主のために守らん。主の御力を得て、主の命を実行せん。川は主の下へ流れ、魂は一つにならん。父と子と聖霊の御名において」


 ズガァァァンっ! ズガァァァンっ!


 二連射して、見えていた二匹を即座に撃ち落した。

 発動した『ファイアボール』がさらに辺りを明るく照らす。


「ん? ちょっと待ってください。誰かいるのです! 多分人族です!」

「分かった、私が助けに行く」


 一番先頭にいた眼鏡ツインテがアナの指差した方向に走って行く。


「アナが援護します」


 アナがポーチからヴェリタスを取り出した。

 そして、文字通り飛んで眼鏡ツインテの後を追う。


「地上の命は川を流れ、主の下へ。主よ、聖なる焔よ、憐れみ給え。父と子と聖霊の御名において」


 パァッン、パァッン、パァッン。


 アナが一発一匹を、二発でもう一匹を撃ち落とした。


「ちょっと待って。刺客とかだったらどうするんだ!」


 僕はそう叫びつつ二人の後を追う。

 しかし、それは杞憂で終わったらしい。


「心結! 琴音!」

「「笑美!」」


 暗闇の中から再会を喜び合う声が聞こえてきた。

 ちっ、また増えるのか。

 それよりも今は吸血蝙蝠どもを仕留めるのが先決だ。

 だけど、魔物すらどうでもよくなる事態が起きてしまった。


「さらに向こうから人族が来るのです。いっぱいなのです。えっと、十人います。でも、後ろに魔物をたくさん連れているのです」


 同級生と魔物、果たして僕にとって厄介なのはどっちなのだろうか?




次回は明日8/27(日)20:00に第三十一話「全員集合してしまいました。」を投稿します。タイトルは後々変更するかもしれません。

感想、質問、ダメだし、何でもいいのであれば、お願いいたします。

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