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異世界迷宮に転移したら、僕はみんなの食糧でした。  作者: 捨一留勉
第三章 お別れ
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第二十六話 アナはやっぱり悪魔のような天使でした。

三話連続投稿のラストです。

ストックが死にました。

 

 僕は中学時代、告白してもいない、別に好きでもない女に「私はアンタみたいな男お断り、二度とこっち見んな」と振られたことがある。

 僕はその時、酷い屈辱を味わったものだが、別に向こうは苛めのつもりはなかったのかもしれない。いや、でも、半分ぐらいは僕を陥れたいという気持ちもあったのだろう。


 シチュはその時と似ている。真逆ではあるが。

 そして今感じるのは焦りと恐怖であった。


「委員長! 永倉なんかと付き合うなんて、何考えてんだよ!」


 何で真っ先に糸目が反応する……?

 ただ、見下されるのは腹立たしいけど、否定的な意見には僕も同意だ。

 さっさと色んな誤解を解かないと、アナが……ほぅらね、ゴゴゴゴゴってなってるよ。


「アナ、ちょっと待って、落ち着いて。そんなの僕が認めるわけないでしょ」

「ええ、そうでしょうとも。それに、アナはユーヤが過去に違う女と恋愛していても、許容するのですよ。それぐらいの度量はあるつもりなのです。ですが、ユーヤ、言いましたよね。『僕が初めて好きになったのはアナだよ』って。言いましたよね!?」

「だから誤解だって」


 言ったし、事実だよ。

 もうやだ。

 何で僕が涙目で、こんな浮気の言い訳みたいなこと言っているんだろう。

 やっぱりこいつら問答無用でぶっ殺しておけばよかった。


「委員長も変なこと言わないでください」

「永倉君、私は本気だよ。だから、その、委員長っていうのはやめて。千佳って呼んでくれないかな? 私も勇也君って呼ぶから。あと敬語もなしで、ね?」


 そのやり取りならすでにアナとやったよ!

 委員長が頬を染めて僕を見ている。

 だいたい何でアナと付き合ってるって言ってるのに、そんなこと言ってくるんだ?

 僕がアナを捨てるとでも思ってるのだろうか。

 こんなに愛しいアナを僕が捨てたりするはずないのに。


「委員長、正気になれって。永倉はきっと委員長の体が目当てなんだよ。こいつ、いっつも委員長の胸ばっか見てんだ」


 糸目め。

 しかし、うん、それは否定できない。


「そんなの気付いてたよ」


 そして気付かれていたのか。

 どうしよう、いい加減こいつら本当に黙らせるか?

 でも、今そんなことしたら、アナに浮気を認めるようなもんだし。


「でも、だいたいそんなの男の人なら同じだよ。見てるのを隠すのが上手いか下手かの違いでしょ。大石君だって私の胸見てるじゃない」

「そんなことは……」


 大石の顔が赤く染まって行く。

 うん、見てたんだな。


「それに、別にそれでもいいの。勇也君を正気に戻せるなら」


 ああ、そういうことか。

 委員長はアナを未だに悪魔だと思っているのか。

 それで、僕がみんなを殺そうとするのは、アナに操られているからだ、と。

 それこそ酷い誤解だ。

 むしろ、アナがいなければとっくに全員殺している。


「委員長、僕は本当に貴女に告白なんかしていません。あの時恋人が欲しいって言ったのは、言葉通りの意味で、別に委員長に求めていたんじゃないんですよ。むしろ貴女のことなんか好きじゃありません。貴女の言っていた言葉ですが、クラス全員が友達? 正直反吐が出ますね。僕にとってあのクラスは地獄です。この世界よりよっぽど地獄だった。僕はただその地獄の中を、必死に生きていただけなんですよ」

「永倉、お前っ!」

「勇也君……」


 委員長が泣きそうな顔をして俯いた。

 しかし、それは一瞬のことで、すぐに顔を上げて微笑んできた。


「それでも、私は勇也君のこと好きだよ。だって勇也君はすごく努力家で、こんな世界でもたった一人で生きてきたじゃない。すごく大変だったでしょ。そんないつでも必死で生きられる勇也君のそばにいたいって、私は思うの」

「別に大変なんかじゃなかったです。僕にはいつもアナがいてくれましたから」

「だから、あの悪魔のせいなんだね」


 そう言って委員長はアナを睨んだ。

 ああ、もう駄目だ。

 この感情を我慢できそうにはない。


 気が付けば僕の左手が委員長の首を絞めていた。

 さらに右手のエカレスの銃身を、委員長の口の中に突っ込んでいる。

 でも、良かったね、委員長。

 拳銃が好きなんでしょ?

 そんな大好きな拳銃を咥えて逝けるんだから。


 委員長は目を大きく見開いて僕を見ていた。


「地上の命は川を流れ、主の下へ。主よ、聖なる焔よ、憐れみ給え。父と子と聖霊の御名において」

「ユーヤ! アナは大丈夫です。だからやめてください!」

「永倉、やめろっ!!」


 全員が口々に、僕にやめるよう懇願してくる。

 だけどもういい、もう我慢できない。


 正に引き金を今引こうとした時、アナが委員長に飛びついてきた。


「その弾丸は何ですか? 『ファイアボール』ですか? それとも『フレイムトルネード』ですか? どっちにしたって今引き金を引けば、アナも巻き込まれて死んでしまうかもしれませんよ」

「っ!!」


 アナはそこまでしてこの女の命を救いたいのか?

 だけど、引き金を引かなくたって、殺すことは出来る。

 このまま手に力を掛け続ければいい。

 でも……。

 僕は委員長の口から銃を抜いた。


「委員長、アナに謝ってください。そして、お礼を言ってください」


 委員長が横目で自分に抱きついているアナを見る。


「さぁ、早く」


 さらに腕に力を込めた。


「っ!! ご、ごべん゛な゛、ざい゛。あ゛ぎがとう、ござい゛ばず」


 僕は手を放し、にっこりと微笑む。

 委員長はそのまま地面に膝をつき、四つん這いの姿勢になった。


「わかっていただければ、それでいいんですよ」

「ごほっ、ごほっ」

「水よ、癒しをもたらせ【アクアヒール】」


 アナがそのまま委員長を介抱し、回復魔法まで掛けてあげている。

 本当に優しいな。

 アナは僕の天使だ。見た目は悪魔だけど。

 と思っていたら、立ち上がって何やら僕を睨んできた。


「ユーヤ、いい加減にするのです! 何ですぐに殺そうとするのですか!? ちょっと悪しざまに言われるぐらい、アナは気にしないのです。事実アナは悪魔族に見えるのですから」

「そうは言うけどね、アナ「十三回です」え?」

「ユーヤがコンノチカ様のお胸をチラ見した回数なのです」


 か、数えていた、だと?


「他にもオキタリンカ様のお胸を二十回チラ見していましたし、ヤマザキエミ様のお胸も六回、シマムラカホ様のお胸を四回チラ見していたのです」

「あれ? 私は?」


 先生が何やら言っているが、それは、今はどうでも良かった。

 僕は無言でゆっくりと正座した。

 うん、だって制服がボロボロでなんかちらちら見えているんだもの。


「はっ、やっぱり永倉はキモい性犯罪者なんだよ。な、委員長わかっただろ?」

「ううん、私はいくらでも見られていいよ。勇也君なら」


 委員長は未だに四つん這いだが、微笑んで僕を見ている。

 僕に殺されかけたのに、よく笑っていられるな。


「ていうか、私たちのことも見てたの。永倉、キッモ」

「うーん、私は別にいいかなぁ。私のことそういう目で見てくれんのって永倉君だけだしね」

「で、私は?」

「ウチはぁ、もちろんオッケーだよぉ」


 そう言って元ギャル子が僕に抱きついてきた。

 しかも、胸を側頭部に押し付けてくる。

 こ、こいつ、僕が奪った寿命分、胸も成長してるっぽい。

 しかし、次に言った元ギャル子との言葉のせいで、胸の感触なんてどうでもよくなってしまった。


「ああ、勇也きゅん、ホント美味しそう」


 背中に怖気が走った。


「ちょっと沖田さん、勇也君から離れて」


 委員長が元ギャル子を引き離す。

 僕は離された元ギャル子のステータスを確認した。


≪名前≫沖田凜華

≪種族≫人族

≪年齢≫18

≪身長≫165cm

≪体重≫56kg

≪体力≫7

≪攻撃力≫8

≪耐久力≫6

≪敏捷≫9

≪知力≫12

≪魔力≫10

≪精神力≫12

≪愛≫80

≪忠誠≫0

≪精霊魔法≫火:41 水:59 風:87 土:13

≪スキル≫獣化(ビースト):羆の力を得られる。筋肉が膨張し、爪が伸び、牙が生える。燃費が悪いので注意。

 鑑定:あらゆるものの情報を読み取る。


 クロとは違う。

 クロは五年ぐらい年を取っていたのに、こいつは三年しか年を取っていない。

 しかも、確か百以上あったとは思う『愛』が著しく減っていて、『忠誠』は無くなっているのだ。

 愛を詳しく見ると、


≪愛≫80(永倉勇也:40、沖田洋子:20、沖田宗一:10、原田陸:10)


 となっている。

 あれ? ヤンキー茶は?

 まぁ、それは、今は置いておこう。

 なんだ? 何で『忠誠』じゃなくて『愛』なんだ?


「元ギャル子は僕に忠誠を誓ったんじゃないの?」


 うん、随分ストレートに聞いてしまったけど、他に聞きようもないし。

 確認しておかないと不安でしょうがない。

 また喰われるんじゃないかと。


 だけど、僕は元ギャル子の答えで、この能力の意外な事実を知ることとなった。

 そして、アナがお怒りなことを、すっかり忘れていたのであった。



次回投稿は、通常通りに戻し、水曜日8/16に投稿しようと思います。

時間だけちょっと変えてみて、20時に投稿いたします。

後書きを書いている現時点で書き上がっていないのですが。

ストック? 何それ、美味しいの?

感想、質問、ダメ出し、何でもいいので、何かございましたら、宜しくお願い致します。

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