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異世界迷宮に転移したら、僕はみんなの食糧でした。  作者: 捨一留勉
第三章 お別れ
26/114

第二十五話 お話し合いが始まりました。

三話連続投稿の二話目です。

 

「あああああっ!!」


 僕の絶叫が暗闇に木霊する。


「「きゃあああああっ!!」」

「わぁあああああっ!!」

「ひぃいいいっ!!」


 遅れてクラスの連中の悲鳴が聞こえてきた。


 ばりばりっ、ぐしゃっ、ぐしゃっ。


 暗闇の中でそいつが僕の腕を咀嚼している音が聞こえてくる。

 さらに、


「ウマいっ! アンタの腕、マジウマいよっ、永倉ぁぁぁ」


 くそっ、僕の腕だとわかって喰ってやがる。

 殺す、殺してやる、殺してやるぞっ! イカれた女めっ。


「殺すっ!」


 僕は痛みをこらえてエカレスを女に向ける。

 だが、僕が引き金を引くより早く、委員長の声が聞こえてきた。


「貴女が誰であろうと、許さないっ! はぁっ!!」


 委員長の気合いと共に、何かが女に向かって飛んでいく。

 女はそれが命中したようで、「キャアっ!」という悲鳴と、転がって行く音が聞こえてきた。

 同時に、委員長が僕の方に向かって駆けてきた。


「大丈夫っ!? 永倉君っ」

「離れろっ!」


 しかし、委員長は僕の言葉を無視して、僕の右腕に下に肩を入れ、僕の体を支えるようにする。


「大丈夫、私は永倉君の味方だから。私だけは味方でいるから。もっと早く、初めから……こうしていれば良かったね」


 委員長は何を言っているんだ?

 僕の味方は委員長じゃない。

 僕の味方は……。


「ああああああああああああああっ」


 暗闇の向こうからうめき声が聞こえてくる。

 あの女のもののようだ。

 どうやら委員長に何かされたが、命までは奪われなかったらしい。

 委員長の攻撃で苦しんでいるのだろうか。


 ビキビキ、ボコッボコッ。


 さらに何やら異音が聞こえてきた。


 ボコッボコッ。


 異音が聞こえてくるのはその女の方からだけじゃない。

 僕の左腕からも、同じように音が聞こえてくるのだ。

 尤も、今は肩までしかなく、二の腕から先は失われている。


 だが、肩口の辺りがおかしい。

 血が止まっている。

 さらに、切断面が盛り上がってきていた。

 変化は止まることなく、ボコボコという音を立てて、ピンク色の肉が切断面から生えてくる。

 痛みはない。なんだかムズムズするという程度だ。


「な、永倉君、腕が……」


 委員長が呆気に取られた様子で僕の左腕を指差す。

 僕の腕はもうほとんど元に戻りそうであった。

 そうか、あの女の寿命を奪って、僕は回復しているのか。


 しかし、さて、この状況、これからどうすればいい?

 誰が敵で誰を殺すかなんて、考えるのが馬鹿馬鹿しくなってきた。

 こいつらは全員敵で、一人残らず殺すべきなんだ。

 “平等”に。


「永倉っ! 委員長を放せ!」


 急に糸目が僕に怒鳴りつけてきた。

 手には『ファイアボール』を持っている。

 いや、どう見ても僕が捕まえようとしているようには見えないだろうし、今『ファイアボール』を投げたら委員長も巻き込むと思うんだけど。


 だけど、糸目が『ファイアボール』を作ってくれたおかげで、その後ろの様子が見えた。

 島村が糸目の陰に隠れて指をピストルの形にして、僕に向けている。

 何かする気か、『液体人間』?

 こいつ、てっきり自分の能力を知らないと思っていたけど、どうやらちょっとは理解していたらしい。


 次か次へと状況が変わる。

 まったくうっとしい奴らだ。

 さっきまで最優先の標的はあのバカ女であったが、今はあの二人だ。

 あの二人が攻撃してきても、委員長を盾にすれば何とかなる。

 委員長を盾にしつつ、残りの五人をまとめて焼き尽くし、きっとその間に委員長は死んでいるだろうから、最後にあの女を撃ち殺そう。

 いや、待て、あの女はもう殺さなくていいんじゃないか?

 僕の肉を食ったんだ。

 僕の腕はもう完全に元通りになっている。

 なら、あの女もそろそろ使えるかもしれない。


「おい、お前! 僕を守れ!」


 僕が暗闇に向かって声を掛けると、果たして、そこに動く気配があった。


「はぁい、勇也きゅん。ウチがぁ、守ったげるねぇ」


 甘ったるい声を出しながら、僕の左腕を食った女が、僕の方に向かって跳躍してきた。


「え? なに? どういうこと?」


 委員長が狼狽える。


 さっき僕を襲い掛かってきた女を僕が頼り、その女も当然のようにそれに応えたのだから、確かに混乱するのも無理が無いだろう。


 女は僕のそばまで来ると、委員長がいるのとは反対側から、つまり僕の左腕に抱きついてきた。

 えっ? 守れってそういうことじゃないんだけど。


「くそっ、どうなってる!? 永倉、お前何した!?」


 糸目が『ファイアボール』を持ったまま、歯噛みして僕を睨みつけてきた。

 いいぞ、そのまま悩んでろ。

『ファイアボール』が消えた瞬間、まずはしまむ、水女を焼き殺そう。

 さすがに燃やせば蒸発するんじゃないか。

 あとは『プラネットフレア』でまとめて焼き尽くしてやる。


 僕は『ファイアボール』が消える瞬間を見計らっていたのだが、それは僕が思っていたよりも早くやってきた。


「あぉおおおおおおんっ!」


 辺りに犬の遠吠えが木霊する。

 そして、それが聞こえてきた瞬間、


「「「ひっ」」」

「なに? みんなどうしたの?」


 僕と先生以外のメンツがガタガタと震え始めた。

 さらに、のっしのっしと音を立てて、巨大な何かが近付いて来る。


「っ!! みんなしっかりして、何か大きいのが来るわよ!」


 あれ? 普段は足音なんか立てないよな?

 何だろう? おかしいな。僕はみんなが震えている理由も、何が近付いて来るかもわかっているのに、足が震えてきた。


「ほほう、わずか四日で浮気とは、良い度胸なのですよ。ユーヤ?」


 体が心から底冷えするような冷たい声が聞こえてくる。

 なに、この冷たさ?!

 アナは赤熱の魔女の申し子だったよね? アナは雪の女王じゃなかったよね?!


 その場にいる全員が呆気に取られている中、巨大なヘルハウンドに乗った、文字通り悪魔のような美少女、つまりクロに乗ったアナが現れたのだった。




 それから十分後、僕の前でアナが仁王立ちでふんぞり返り、その後ろでクロが控えている。

 そして、僕たちは全員アナの前で正座させられていた。

 まだクロが『威圧』を解いていないため、僕と先生以外はがくがくと震えている。

 いや、先生も巨大なクロと悪魔にしか見えないアナを前にして、怯えているようだった。

 そして、僕も震えていた。

 まさかこんなグダグダな展開になるとは思わなかったよ、ほんと。


「まず、この方たちは誰なのですか?」

「わ、私たちは「ユーヤに訊いているのです!」……」


 アナに怒鳴られた先生が黙った。


「敵です」


 一斉に視線が僕に集中する。

 この状況でそんなことを言われたら、あのヘルハウンドに食い殺されると思っているのだろう。

 まぁ、事実その通りだ。

 誤解が解けたら、クロに襲わせてしまえばいい。


「ふーん、アナにはそうは見えないのですが。特にその両隣の方とは随分親密なご様子でしたが? そうだ、先にお二人に聞いてみましょうか。クロ、『威圧』を解いてください」


 クロが言われたとおり、二人だけの『威圧』を解いたらしく、二人は金縛りから解けたみたいに荒く息をして呼吸を整えていた。


「わ、私は永倉君のクラスメイトよ。彼がそっちの彼女に襲われたから介抱していただけなの。だから、私は少なくとも永倉君の敵じゃないわ。そ、そういう貴女は何なの? とても人間には見えないけど」

「ぐっ、痛い所を突いて来るのです。アナはアナベルです。何かと聞かれるとメイジホブゴブリーナだとお答えします。メイジホブゴブリーナは魔法を使えるホブゴブリーナで、ホブゴブリーナはホブゴブリンの雌です。ホブゴブリンはゴブリンの上位種なのです。これでアナについてはお解りいただけましたか?」

「え? ゴブリンって、一階層にいっぱいいた緑色の奴よね。あれって、成長するとこうなるの?」

「ならないのです。アナは変異種といって、普通のゴブリンとは違うのです。この姿になったのは、何と言うか、不幸な事故なのです」


 先生と金髪の女はなんとなく理解したようであるが、委員長はいまいちわかっていないらしい。

 他の奴はまだ『威圧』されているので、それどころではなさそうだ。

 いや、ピザだけ『威圧』されながらも、好奇の目をアナに向けていた。

 イラッとするな。エカレスをぶっ放してやりたい。


「えっと、そうじゃなかった。私が聞きたいのはそういうことじゃなくて、ア、アナベルさんと永倉君はどういう関係なの?」

「アナはユーヤの恋人なのです」

「っ!!」


 何だ? 委員長が驚愕している。

 僕にこんな可愛い彼女がいるのが、そんなに驚きなのだろうか。

 うん、まぁ、そりゃ驚くか。

 まさか、閉じ込められた異世界迷宮の中にこんな美少女がいて、それを恋人にしてしまうとか、普通に考えたら有り得ないね。

 それに、それが日本では苛めに遭っていた僕みたいな底辺の人間なわけだから。


「永倉君、本当なの?」

「はい、アナは僕の恋人で、僕はアナの恋人ですよ」


 視線が僕に滅茶苦茶集まっている。

 お、ピザが僕を、血涙が出る勢いで睨んでいるぞ。

 ちょっと優越感が出てきた。

 こんなに可愛い彼女がいたら、そりゃ羨ましいよな。

 だけど、なぜか委員長がアナを、キっと睨んでいる。

 一体何なんだ? アナに何かするって言うんなら容赦しないぞ。


「で、そっちの女性は何なのですか?」


 アナが委員長をさくっと無視して、というか、睨まれているのに気付かずに、金髪の女に聞いた。

 うん、本当に何なんだ。

 いや、今は僕の従魔? みたいなものになっていると思うけど。

 すっかり『鑑定』するタイミングを逸してしまっていた。


「ウチはぁ、勇也きゅんの愛人?」


 おぉう!? 

 ふざけんなよ、こいつ!

 そんなこと言って、アナが僕のこと嫌いになったらどうしてくれるんだ。

 新手の苛めか?

 クラスにこんな奴いた記憶が無いけど。


 そう、僕は確かにクラス全員の顔も名前も覚えていないけど、こいつの顔ならちゃんと覚えていると思うのだ。

 なぜなら、彼女の顔は委員長よりも可愛かったからである。

 多分五年ぐらい成長してしまっているだろうから、元の顔はわからないけど、それでも、こんな顔の人間がクラスにいなかったことは明白だ。

 だけど、やっぱり声とかしゃべり方はギャル子に似ている気がする。


 いや、今はそんなことどうでも良かった。

 こいつのせいでアナが……。

 あれ? 微笑んでいるぞ。

 微笑んで僕を見ているぞ。

 そして、ゆっくり瞼を開いたアナの瞳からは、ハイライトが消えていた。


「アナ……? アナさん? アナベル様?」

「そうですか、そうですか。ユーヤはやっぱりこんな見た目は悪魔族、中身は魔物のアナよりも、金髪でお胸の大きい普通の人族の女性の方が良いですか」

「そ、そんなわけ……」


「ない」と言おうと思ったところで、アナの後ろに燃え盛る黒い炎を幻視した。

 やっぱりアナは雪の女王ではなかった。赤熱の魔女の申し子だったのだ。


「ですが、アナはユーヤを手放したりするつもりはありません! 盗られるぐらいなら、アナが焼き尽くしてでも取り戻して見せます!」

「落ち着いてぇ! 全力で落ち着いてぇ!!」


 アナが紅蓮の杖を抜き放って僕に突き付けてきた。

 うん、もう完全に『落炎』を落としちゃうつもりでいらっしゃる。


「ほ、本当に待ってよ、アナ。僕はこの人が誰かすらも知らないんだ。なんかおかしなこと言っているのは、僕の腕を食べたからだよ。ほら、見て、左手。肩から先が破れているでしょ? この人は僕の『従魔(サーヴァント)』なんだ」

「えー、誰かわかんないって、ひどくね?」


 アナを睨んでいた委員長も、金髪の女を不思議そうな目で見つめた。


「も、もしかして、沖田さん?」


 いや、僕もそれは考えたけど、違うと思うよ。


「もしかしてって何? もしかしなくてもそうっしょ。え? 誰もわかってなかったの? ちょ、マジひでぇ。すっぴんだからって、普通わからなくなる?」


 ああ、なるほど、これが化粧をするとギャル子になるのか。

 って、えぇ!?

 変わりすぎだよ! 

 それに化粧して可愛くなくなるってどういうこと?!

 何のための化粧?!


 委員長も驚愕の眼差しを元ギャル子に向けて送っていた。

 他の者たちも威圧されながら驚愕している。


「わかったのです。いいでしょう。今回はそういうことにしておくのです。で、他の方たちは敵なのですか?」


 全員一斉に首をぶんぶんと横に振る。


「でも、アナにはユーヤが襲われているように見えたのですが?」

「あ、あの、アナベルさん?」


 おずおずとアナに声を掛けたのは先生だった。

 アナは首を傾げてそれに応える。


「私たちの事情は聞いているかしら?」

「はい、聞いているのです。無理矢理連れて来られた日本人なのです。それでユーヤだけ追い出されたと聞いています」


 何人かがびくっとなって怯えるように俯き、委員長と先生は悲しそうに俯いた。

 元ギャル子だけはニコニコと微笑んでいる。

 何なんだこいつ。


「ええ、その通りよ。実際にここにいる人間も、永倉君を追い出すのに加担しているわ」


 糸目が震えながら先生を見た。

 見捨てられるとでも思っているのだろうか。

 それにしても、嗜虐心をくすぐられる表情だ。

 出来ることなら、苦しませながら殺してやりたい。


「でも、その責任は私にあるの。私はこの子たちの責任者で、守らなくちゃいけない立場だったのに、永倉君を守ってあげることができなかったわ。それだけじゃない。もうすでに何人も犠牲者を出してしまっている。でも、これ以上誰も死なせたくないの。私たちは永倉君も当然含めて、みんなで元の世界に帰りたいのよ。だから、アナベルさん、私たちに協力してくれないかしら?」


 アナが不安そうな顔で僕を見つめてきた。

 大丈夫だ、アナの言いたいことはわかっている。

 僕はアナに微笑み、立ち上がった。


「大丈夫だよ、アナ。僕は帰ったりしないから。そんなに不安なら、ここにいる連中を皆殺しにして、また二人きりになろう。クロ」

「うぅぅぅぅぅぅぅ」


 クロが牙を剥き出しにして、威嚇する。

 僕がもう一度合図すれば、きっと全員噛み殺してくれるだろう。

 僕もエカレスを抜き放ち、構える。

 同時に委員長と元ギャル子が立ち上がって、僕に詰め寄ってきた。


「永倉君!」

「ゆ、勇也きゅん、それってウチもぉ?」

「お願い、永倉君、正気に戻って」


 僕は正気だ。

 日本で復讐という選択肢を選ばなかったのは、それが犯罪だからである。

 だけど、僕が殺されるくらいなら、自殺するぐらいなら、僕は躊躇うことなく僕をそこまで追い込んだ奴らを殺していただろう。

 人を殺しちゃいけない理由なんて、自分が殺されたくないからだ。

 僕はその優先順位を間違えたりはしない。


 今はこいつらを殺したからといって、僕が殺されるわけではない。

 捕まって裁かれるわけでもない。

 だったら、僕とアナの障害になりそうなこいつらを生かしておく理由なんて、僕は持っていないんだ。


「アナベルさん、貴女が永倉君をこんな風にしちゃったのね。永倉君を元に戻してよ、悪魔!」


 委員長がアナを睨みつける。

 アナはその言葉に怯え、震えていた。

 そのアナの姿を見た瞬間、今まで感じたことのない黒い感情が心を満たしていった。

 僕が苛められるよりも、よほど憎悪を感じる。

 この女は生かしては置けない。


「委員長、アナを傷つけましたね。よくも僕の大切なアナを。よくも、よくも、よくも。貴女を殺す理由なんてないと思っていたけど、事情が変わりました。僕の手で撃ち殺します」

「な、永倉君……」


 委員長が僕を見つめ、涙を零した。

 泣いて許しを乞うなら僕にじゃない、アナにすべきだ。

 しかし、そのアナが僕に許しを求めてきた。


「ユーヤ、お願いします。やめてください。クロも銃も、どうか収めてください。ユーヤがこの人たちを憎むのはもっともなのです。ですが、アナに免じて許してあげてはいただけないでしょうか?」


 僕は驚いてアナを見た。

 いや、でも、考えてみれば驚くことではないのかもしれない。

 人間になりたいアナ、人間好きのアナ。

 もしかしたらアナは、僕が人を殺すのを、見たくないのかもしれなかった。

 人間が人間を殺すのを。


「よく考えてアナ。この女は君を傷つけたし、こいつら全員とてもじゃないけど信用なんてできないよ」

「ユーヤ、お願いします」


 僕は今言った通り、こいつらを信用するなんてことは出来ない。

 ただでさえ危険なダンジョンを、背後にも気を付けて進まなくてはいけないなんて、冗談じゃない。

 だけどそんな風に見つめられては、僕にそれ以上のことは言えなかった。

 僕がアナを悲しませるなんて、できわけないじゃないか。


「はぁ、わかったよ。アナに免じて我慢する。クロ、もしこいつらが何かおかしなことをしたら噛み殺して」

「わんっ」

「ありがとう、アナベルさん、永倉君」


 先生がみんなを代表してお礼を言った。

 クロも『威圧』を解いたため、全員胸を撫で下ろし、そのまま寝っ転がってしまいそうになっている。

 委員長だけはまだアナを睨んでいた。

 これ以上何かアナに言うつもりなら、僕は改めて引き金を引くことも視野に入れる。

 このまま生かしておくのと、殺してしまうの、どっちがアナが悲しむかを考えて。

 しかし、委員長はアナから視線を外し、その視線を僕に向けてきた。


「ねぇ、永倉君、覚えてる?」


 委員長にそう尋ねられ、僕は首を捻った。

 アナを悲しませるつもりが無いなら、僕も何もしないけれど、一体何の話だろう?


「私、その、あの、オッケー出そうと思っているの」

「はい?」


 うん? 何の話だ?


「ううん、むしろ、私の方からお願いします」

「いや、だから何の話ですか?」

「あの日、教室で、その、私に恋人になってくれって言ったじゃない」

「はぁあああ?!」


 どうやら委員長はアナを傷つけるのではなく、僕を殺すつもりらしい。


 委員長はお話合いの最後に、とんでもない爆弾を落としたのだった。



次回は21時に投稿します。

感想、質問、ダメ出し、何かございましたら、宜しくお願い致します。

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