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第十九話 告白に失敗しました。

感想いただきました。

有難うございます。近日中にお返事書きます。

水曜日に一度、今日五話連続で投稿すると載せてしまったのですが、昨日五話連続で投稿しています。

変更があり、申し訳ありません。

今日も五話連続で投稿します。

という事で、本日の一話目です。

 

 僕たちは今、岩の陰に隠れて獲物が通りかかるのを待っていた。

 薄ぼんやりと青白い光で照らされた場所が、十メートルほど先にあり、そこを獲物が通りかかるのを待っているのである。


 来た。

 現れたのはヘルハウンドだった。

 クロに比べたら体長もずっと低いし、ステータスもずっと低い。

 一匹だけでなく全部で四匹いるが、まぁ、クロもアナもいるし、なんとかなるだろう。


 僕は新しく手に入れた武器、S&WM500、エカレスを両手で腰だめに構えている。

 そして一匹に狙いをつけると、引き金を引いた。


 ズガァァァンっ!


 爆発が起きた。

 それも一か所ではなく、二か所。


 一つはヘルハウンドの頭だ。

 偶然ヘッドショットとなったのだが、ヘルハウンドの頭が吹き飛んでいる。

 さらに『ファイアボール』が発動したらしく、全身が燃え上がっていた。


 もう一つの爆発は僕の手元だ。

 こっちは比喩で、本当に爆発が起きたわけじゃ……ない、のか?

 この銃、撃った時の反動が半端じゃないのだ。

 爆発したみたいな衝撃が起き、僕の手はまるでハンマーで殴られたみたいに痛い。しかも『鑑定』すると、体力が1減っていた。


 尤も、一緒にもらった『衝撃吸収』の皮手袋を装着しないで、素手で撃ってみた結果がこれだ。

 ちゃんと装備していたら、もっと反動は少なくて済むだろう。

 そうなればあの威力だ。大いに戦力として期待できる。


 だけど、問題がいくつかある。

 まず威力が強すぎる。

 撃った相手を吹き飛ばしてしまっては、食料の調達ができない。一緒にいた三匹も、驚いて逃げてしまったし。

 だが何よりも、こっちの方が問題だ。

 ……耳が痛い。

 アナとクロも耳を抑えている。

 とりあえず、『アクアヒール』を掛けたが、これでは戦闘の度に回復しなければいけない。


「轟音の問題はアナに任せて欲しいのです。ラビコーンの毛皮があるので、それを耳栓にするのです」


 アナはそう言って、ラビコーンの毛皮で耳栓を作り始めた。

 ナイフで毛皮を切り、道すがら倒したグランチュラの糸で器用にまとめていく。


 はぁ、アナは女子力高いなぁ。

 きっと理想のお嫁さんになれるだろう。

 誰の? や、やっぱり僕のだよね。

 だけど、その前に確認しておかなくてはいけないことがある。


「ねぇ、アナ」


 クロ用のデカい耳栓を作り始めたアナに話し掛ける。彼女は手を休めて、僕を見上げた。


「そういえばちゃんと言ってなかったけどさ、僕たちって恋人同士だよね」


 途端に、暗がりの中でもわかるほどにみるみるとアナの顔が赤くなっていく。

 クロがやおら立ち上がってそのまま散歩に行ってしまった。

 元からクロの存在は気にしていなかったんだけど、気を効かせてくれたらしい。


「そ、そうなのですか? アナが人族になるまでは違うと思っていたのです。で、できればそれまでは待っていてください」


 なるほど、人と魔物が恋人同士になるなんておかしいとアナは思っているんだろう。

 きっと僕のことを想って、そう言ってくれているんだ。

 だが、断る。

 するしないは別として、そこはちゃんとけじめをつけておきたいんだ。


「駄目だよ、アナ。だって、進化したら、その、するって約束したでしょ。恋人でもない相手とするなんてこと、僕には出来ない。それに、恋人でもない相手とするって約束するのだっておかしいじゃないか」

「うぐっ、確かにそうですが。わかりました。アナも自分の気持ちに嘘は吐けません。ユーヤ、その、あ、アナをユーヤの彼女にしてください」

「うん、アナ。僕はアナの彼氏だよ」


 あれ? おかしいな。僕の方から「付き合って」って言うはずだったのに、どうしてこうなった?

 ま、まぁ、仕方ない。プロポーズするときは僕の方からしよう。


 それにしてもアナは可愛いな。

 顔を赤くして目を潤ませて僕を見つめている。

 こ、これはアレだな。

 キスしていいってことだよな。

 古来より「据え膳喰わぬは武士の恥」って言うし。


 僕がゆっくりと顔を近づけていくと、アナが目を閉じた。

 か、可愛い……。

 僕も目を閉じ、唇を近づける。

 もう少しで唇が重なろうとしたところで、


「わんっ!」


 二人してびくんとなり、固まった。


 あれ? 気を効かせてくれていたんじゃないの?

 だが、どうやらクロにものっぴきならない理由があったらしい。


「あ、ヘルハウンドに囲まれているのです」


 さっき逃げて行ったヘルハウンドが仲間でも連れてきたのだろうか。

 風魔法で気配を探ると、全部で七匹のヘルハウンドがいる。


 くそ、こいつら何の恨みがあって今現れるのか。

 僕は予め作っておいた弾丸の残り四発をエカレスに込めた。

 さらに皮手袋と、今アナが作ってくれたばかりの耳栓を耳に詰めようとしたところで、アナに声を掛けられた。


「アナに左手の皮手袋を貸してほしいのです。にっくきお邪魔虫たちをこの手で撃退してやりたいのです」


 どうやらアナはデザートイーグル.50AE、ヴェリタスを使うつもりらしい。

 アナは左利きみたいだから、左手の皮手袋があれば問題ない。

 一応弾も七発中三発までは作っている。

 だけど、まだヴェリタスは試射していないんだが、大丈夫だろうか。

 邪神(?)の話によれば、エカレスよりはマシみたいだったけど。


「わかった。でも、無理しちゃダメだよ。紅蓮の杖もあるんだし」

「わかっているのです。アナも銃が撃ってみたいのです」


 まぁ、そこまで無茶なことをしないなら良いか。

 それに、もうヘルハウンドどもの包囲網が出来ていて、徐々に狭めてきている。

 こっちもすぐに迎え撃つ準備をしなくてはいけない。

 僕とアナは準備を済ませ、クロの耳にも耳栓を詰めてやった。

 そして僕、アナ、クロは背中合わせで三角形を作り、ヘルハウンドたちと対峙した。

 アナと目を合わせ、口を開く。


「「地上の命は川を流れ、主の下へ。主よ、聖なる焔よ、憐れみ給え。父と子と聖霊の御名において」」


 ――GUUURURURUUUUU。


「うぅぅぅぅ、わんっ!」


 クロが飛び出していったのを合図に、ヘルハウンドどもも飛び掛かってきた。


 パァンっ。


 耳栓越しにアナの撃った破裂音が聞こえてくる。

 僕も飛び掛かってきた一匹に対して、エカレスの引き金を引いた。


 ズガァァァンっ!


 相変わらず破裂音と言うよりは爆発音といった感じであるが、アナの作ってくれた耳栓のおかげで耳に痛みはなかった。


 僕の放った弾丸はヘルハウンドの頭に命中し、爆発し肉片を飛び散らせるとともに全身を炎で包んだ。


 パァンっ、パァンっ。


 アナが立て続けに銃を発砲している。

 僕も一匹倒したのを確認しつつ、次の一匹に向けて銃を放っていた。


 ズガァァァンっ!


 結果は同じだ。

 僕に飛びつく前にヘルハウンドは頭を失い、炎に包まれて地面に墜落した。


 標的を探すが、もう飛び掛かって来れそうなものはいない。

 アナの方を確認すると、アナは三匹のヘルハウンドの腹に風穴を開けて倒したらしい。

 今は炎上していて、多分そうかな、と思える程度にしか跡を残していないのだが。

 クロも一匹を、喉笛を噛み切ってすでに倒していて、もう一匹を現在進行形で噛み殺しているところだった。

 あっという間に戦闘終了だ。


「アーメン」


 僕は胸の前で十字を切った。

 この格好でこれをやると、何だか本当に神父にでもなったようであるが。


 それにしてもアナは大丈夫だろうか。


「アハハハ、これは素晴らしいのです。呪文を唱えることなく戦えて、魔力も温存できるのです。『落炎』を連発することも夢ではないのです」


 と、恐ろしいことを言いつつ高笑いしている。

 新しくおもちゃを手に入れた、というやつだ。

 とりあえずあの大技の連発はやめて欲しい。


「アナ、なんか僕みたいになってるけど、大丈夫?」

「はっ! それはまずいのです。変なスキルに目覚めたら大変なのです」


 自分で言ってても悲しくなったけど、アナに言われると余計悲しい。

 でも、僕は変なスキルに目覚めてなんかいない。むしろ、それはアナの方なんじゃ……。

 まぁ、言わないけど。喧嘩したくないし。


 あ、そうだ。

 良いことを思い付いたぞ。

 そんなに銃を気に入ってくれたなら、プレゼントしてみてはどうだろう。

 僕が二丁拳銃で戦うというのも悪くないけど、暴れ馬のエカレスだけでいっぱいいっぱいだ。

 ヴェリタスであれば、紅蓮の杖と比べても遜色ない。

 恋人に送る初めてのプレゼントが銃っていうのもどうかとは思うけど……。まぁ、そこは目を瞑ってもらおう。


「アナ、その銃が気に入ったなら、君にプレゼントするよ」

「い、いいのですか!?」

「うん、どうせ二丁も扱えないしね。彼女への初プレゼントが銃っていうのは、その、申し訳ないんだけど」

「か、彼女……。そ、そんなことはないのです。アナはとても嬉しいのです」


 アナはにへらっと笑い、ヴェリタスを大事そうにポーチにしまった。


 喜んでくれたなら何よりだ。

 しかし、人にプレゼントして喜ばれると、僕まで温かい気持ちになれるのか。

 誰かに何かプレゼントしたことなんてないから、そんなこと生まれて初めて知った。

 ああ、アナと一緒にいると、初めて経験することがたくさんある。

 心が温かい。僕は幸せなんだ。


「さ、今日はもう休む準備をしましょう。アナが絶好の場所に案内するのです」

「うん」


 僕は温かい気持ちのまま頷き、アナと一緒にクロの背に跨った。

 何か忘れている気がする。

 そうだ、ヘルハウンドに襲われる前までキスしようとしていたんだ。

 まぁいいか。

 アナの言う絶好の場所に着いてからでも。


 そういえば気になることがあった。

 僕がその疑問を口にしようとしたところ、先にアナが口を開いた。


「そういえば、『ザ・プレイヤー』様の言っていたクルヴァラス教と黒薔薇騎士団とエービーシーディーマートは日本のものなのですか?」

「え? こっちの世界の宗教じゃないの? いや、ABCDマートはそうだけど」


 そう、ちょうど僕がアナに聞こうとしていたのもそのことだった。

 しかし、クルヴァラス教というのは自分を祭っている宗教ではないのだろうか?


「その邪し……神様を祭っている宗教がクルヴァラス教じゃないの?」

「違うのです。それは人族だと流星教会なのです。他の種族も『ザ・プレイヤー』様を祭っているのですが、その名前までは知らないのです。もしかしたら、他種族の宗教がそういう名前なのかもしれませんが」


 凄い神様なんだな、あの邪神。

 なんとなくあの頭蓋骨がケタケタと笑っている姿が、脳裏に蘇った。

 それにしても、じゃあクルヴァラス教とは何を祭っているんだろう。

 アナの言う通り、人族以外の種族の教団名なのかもしれない。

 ただ、神父服を『鑑定』してみた結果、もしかしたら僕が知らなかっただけで、日本のどこかにそんな宗教があったのかもしれないと思えてきた。


≪製作者≫アイリ・マユミ


 日本人の名前、だよね?

 真弓愛梨さんだろうか。

 しかし、そんな宗教団体聞いたことが無い。あったとしてもドマイナーだったんだろうけど。

 それにしても、なぜ自分を祭る宗教団体ではなく、別の宗教団体を選んだのかは謎だった。


「着いたのです」


 僕が考えている内に、アナがそう言い、クロの動きが止まった。

 僕もその場所を見てみるが、どう見ても見覚えのある場所だ。


「これ、宝箱部屋じゃない?」


 そうなのだ。間違いなくこの神父服を手に入れたのと同じ場所なのである。

 鉄製の扉も、僕たちが開けた時のままであった。


「宝箱部屋は一日経たないと復活しないのです。つまり、それまでここは安全なのです」


 アナがドヤ顔で言うので、今日はそこで眠りにつくことになった。

 正直、何だかあの邪神(?)に見られている気がして嫌なのだが。


 結局僕たちはキスの続きをすることなく、眠りについたのだった。



二時間後、19時に投稿いたします。

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