Open-ended(州と一夜の短篇16回)
記憶は記録とは違う。
記憶は魂に刻まれ、時に美化され、時に誇張されて、抱いた感情と傍らに寄り添う。
郷愁、寂寥、感嘆、驚愕、歓喜なんかと一緒に。
機械として作業として、記録されただけの物では違うのだ。
だから、記録じゃなくて記憶として君が覚えていてくれたら。
私を。君の片隅に。
もう永く私は生きられない。
蒸し蒸ししたこの気温で己が溶ければ、閉じた世界から抜け出して、昇華したまま空に紛れて君の元へたどり着けるだろうか。
代わりに灯すから。
最期に届きますように。
ちか。ちか。ちか。ちか。ちか。
「じっと見ちゃって、何。その個体、どうかした?」
「んー、なんか5回点滅した気がしてさ」
「あらあら、はいはい。歌詞みたい。ロマンチックでちゅねー」