現代日本におけるモンスターの出現と、勇者学校設立までの経緯
20XX年、「時空大爆発」と呼ばれる現象により、世界には二つの存在が生まれた。
一つは「モンスター」。
時空ゲートを通ってどこからともなく現れるそれらは、人々を蹂躙し、殺戮の限りを尽くした。
「ゴブリン」や「オーク」など幻想物語上の存在と酷似したモンスターたちは、日常の道端に突如として表れる神出鬼没の殺戮者として、人々から恐れられた。
そしてもう一つが「勇者」。
「モンスター」が現れたとほぼ同時に能力を発現した、モンスターを打ち倒す能力を持った者たちだ。
数千人に一人程度の割合で顕現した彼らは、「魔力」と呼称された力を操り、その超人的な力をもって、モンスターに対抗した。
一方、突如現れた「モンスター」に対し、人類政府は即座には対抗の方法を持たなかった。
モンスターたちは通常の物理攻撃や銃弾をはじき返す特殊な障壁を持つ。
強力な威力を持つ火器であれば、その障壁を凌駕しダメージを与えることもあったが、ゴブリンと呼ばれる最弱の部類のモンスター一体を倒すのに対戦車砲が必要となる程度の有効度であり、とても有力な対抗手段とは言えなかった。
そして、その障壁を無効化してダメージを与えられるのが、「魔力」を持った勇者たちだった。
人類の首脳はただちにモンスターへの対策を考慮したが、多大な予算をかけた計画を練っても、勇者たちによる防衛のパフォーマンスを越えることができないと試算される。
モンスターに対する防衛の方法に関する議論は賛否両論で停滞し、そのままなあなあで現状維持という状況が続いた。
一方勇者たちは、最初は善意で、自らが住む地域に現れるモンスターたちと戦った。
だが勇者となった者たちは、命懸けで戦っても、得るものが少ない。
それどころか、仕事中に緊急でモンスターと戦っても、それによって生じた業務放棄による評価下落を免れないなど、勇者として戦い続けることは、彼ら自身の不利益となっていった。
また人々はやがて、勇者に守られることを当たり前と考え、多くの者たちは感謝すらしなくなった。
そんな中で、命を落とす勇者が次々と現れ、勇者たちはひとり、またひとりとモンスターと戦うのをやめていった。
それでも強い善意と正義感を持った一部の勇者たちが戦い続けたが、彼らもやがて疲弊し、それによって命を落としていった。
そうしてモンスターによる被害者が増え始めた頃、同時に事件が起こる。
若い勇者のうちの一人が暴走し、国会議事堂を襲ったのだ。
暴走した勇者を止める力を持つ者はその場にはなく、彼はときの首相を脅迫して、勇者の待遇改善を要求した。
脅された首相は最終的には首を縦に振り、事件は収まった。
その勇者は捕らえられ、収容所送りとなったが、彼は獄中で自殺することとなる。
これにより、勇者の待遇改善を要求する世論が高まってゆく。
しかし一方で、国会を襲った勇者の行動はテロによって要求を呑ませる行為に等しく、その要求を呑むことはテロに屈するのと同じで望ましくないという意見も出る。
状況は膠着。だがこの中で、当の勇者たちが団結して「ストライキ」を起こした。
この勇者たちは元よりモンスターと戦うのをやめていた者たちだったが、同時に今の状況に多くの不満を抱えている者たちでもあった。
一部の正義感の強い勇者たちは、なおも戦い続けた。
しかし彼らの戦意と命は、徐々に削られてゆく。
また団結した勇者たちの中には、今なお戦っている勇者たちを批難するものも現れた。
「お前らが無償で戦ってしまうから、勇者の待遇が改善されないのだ」と。
団結した勇者たちは、報酬によってモンスターと戦うことを始めた。
一部の富裕層は、自分の金で勇者を雇い始めた。
こうなってくると、人々は政府に、インフラとしての勇者を求め始める。
救える人命を見捨てて金で動く勇者たちを批難しつつも、政府には勇者を公務員として雇い、モンスターと戦わせることを要求し始める。
この世論に動かされ、政府と国会もようやく重い腰を動かし、勇者を公務員として雇用するための立法・行政措置を講じることとなり、多くの勇者が公務員として雇われることとなる。
だがそれによって、住民が負担する税は重くなり、「勇者税」を取られる住民たちの間には、依然として勇者への根強い批難が残った。
一方で、フリーや傭兵としての勇者も残り、腕の良い勇者は高額報酬で動くようになり、莫大な富を得るビジネス勇者も現れる。
そうしてようやくモンスター迎撃の体勢が整ったが、モンスターたちは依然として神出鬼没で、人々の生命への被害は少なくなりこそすれ、絶えることはなかった。
だがある日、モンスターの出現に関しての観測と分析、研究を行っていた一人の学者が、モンスターの出現にはある程度の法則性があることを突き止める。
これにより、天気予報程度の精度ではあるが、モンスターの出現時間と出現場所が予測できるようになり、モンスターによる人的被害は大きく減少することとなる。
だがそんなとき、一つの強大なモンスターの出現が観測される。
その強大なモンスター「ドラゴン」は、退治しようと終結した勇者たちを、まるで羽虫を潰すかのように薙ぎ払った。
結局ドラゴンは、数十人という多大な勇者とそれを超える多くの一般人が犠牲になった後、日本全国から終結した勇者たちの総攻撃によってどうにか倒された。
しかしその時に役に立ったのは、剣道や弓術などの武道を学んでいた一部の「特別な」勇者たちばかりであった。
この事件によって、世界は勇者の「数」だけではなく、その「質」にも着目するようになる。
そしてやがて、勇者を養成する勇者学校が設立されることとなったのである。




